第三十七夜:会いたいって顔してる
なかなか進みませんでした(>_<)
時間があったら2話投稿します。
クロエとその母に歓迎され、2人の住む家に足を踏み入れる。
2人の家は、ソレイユ邸とは違って大きな窓などはなく、日差しは差し込まない。
どちらかと言うと森にあるシンシアの屋敷のような明るさに近い。
太陽の光の温かい香りや、爽やかな日差しがあるわけでもないのに、2人の住まいは明るい。
2人の明るい性格によく似合う織物や、家族写真のようなものが飾られて、日差しが差し込んでいなくとも明るい雰囲気に仕上がっている。
「いらっしゃいシンディちゃん、何もないけれどゆっくりして行って」
「シンディ!ココのお家へようこそ!ココ、シンディともっともーっと仲良くなりたい!」
2人は屋内に足を踏み入れたシンシアに対して、にこっと笑いかけ明朗と出迎えた。
「……お邪魔するわ」
キラキラと輝く瞳が四つ、シンシアの一挙一動をじーっと見つめている。
絶対に逃さないぞ、という強い意志を感じ取ったシンシアは、未だ緊張の解けない硬い声で答える。
「もう、そんなに緊張しなくて良いのよシンディちゃん。……あ、自己紹介がまだだったわよね!私はレイア。レイお姉ちゃんと呼んでもいいのよ、うふふ!」
出会ったばかりの猫のように遠慮ガチなシンシアに対して、ココの母であるレイアはにこにこと微笑んでくれた。
だからと言って愛称やくだけた名前で呼べるわけでもないのだけれど。
レイアは頬に手をあてて、おっとりと微笑んでいる。
「シンシアよ、レイア……さん。少しの間お邪魔するわ」
にこにこと見つめるココとレイアに、目を合わせることができない。
身長や容姿からみてもシンシアより大人らしいレイアに対して呼び捨てするのに躊躇したシンシアは、さん付けで呼ぶことにした。
「シンディ!ココとレイだよう!」
「まぁまぁ、仲良くなってからでもいいんだからそんなに慌てないで」
ぷんぷんと頬を膨らませて抗議するココとそれを宥めるレイア。
普段からこの調子で仲の良い親子なことが分かる。
「ふーん、そっか!ココとシンディがもっともーっと仲良くなったらね!約束!」
「初対面で愛称を呼ぶのはハードルが高いと思っていたの、仲良くなったら呼ぶわね」
レイアがココをなんとか説得してくれたおかげで愛称呼びは免れそうだ。
シンシアは2人に気づかれぬように胸を撫で下ろす。
長年1人だったシンシアには、いきなり呼び捨てを通り越して仲良い人同士のニックネーム呼びは難しいものなのだ。
3人は居間に移動し、それぞれ椅子に腰掛ける。
シンシアは1人がけのクッションつきの椅子に、ココとレイアはふかふかのソファに。
「まーまきいて!シンディの王子様、とーっても綺麗なんだって!すごいねぇ」
レイアと手を繋いだココがにこにこと微笑みながら幸せそうに笑う。
「王子様じゃなくてリオよ」
彼女は私の王子様では無いし、彼女には彼女の王子様が現れるのでしょうね。
クロエに言葉を返しつつも、今は忘れたいと思っていた彼女のことを考えてしまう。
「シンディ、リオのこと好き?」
こてんと首をかしげ、クロエは不思議そうに尋ねる。
「……嫌いではないわ」
好きかどうかを聞かれると難しい。
彼女は1人で泣いていた私を慰めてくれたし、"出会いになる"と言ってくれた。
一度も屋敷の外に出たことがない私を街に連れ出して、食事を共にして、はぐれて知らない男に捕まっていたところを助け出してくれた。
彼女とお話しするのは胸がぽかぽかして、いままでの退屈で長い日々に差し込む光のようで心地良い。
だから、彼女が私を見つけてくれた時も、一緒にスコーンを食べた時も楽しかった。
それでも、森にある屋敷についてあんな風に言った事がずしりとのしかかる。
彼女にとって、あの屋敷は足りないものが多くても私には全てだった。
だから、彼女のことを好きだと答えられない。
「ふーん。ココ、よく分かんないけどシンディは多分、リオのことだーいすきだと思う!……だってシンディ、リオに会いたいって顔してるもん!」
クロエはよくわからないというくせに、やけに確信を持ってそう言い放った。
……会いたいって顔。
そんな顔をしていただろうか。
頬に両手を当ててむにむにと揉んでみるが、何も普段と変わらないはずだ。
「ふふ、そうね。会いたいって顔してるわ、まーまもそう思う!……それで、シンディはどうしてお城を抜け出してきたのかしら?」
ココに対する微笑みなのか、むにむにと頬を確認するシンシアに対する微笑みなのか、どちらかわからない笑みを浮かべたレイアは、おっとりとしつつ心配そうに尋ねる。
「……嫌だったの、大切なものを否定された気がして。」
最後まで読んでくれてありがとうございます。
誤字脱字、表現の間違いなどあったらそっと教えてもらえると嬉しいです。




