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とこしえの2人  作者: 雪月影
第二章:ひとりぼっちが一歩踏み出すまで

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第三十五夜:押しに弱い女神様

自分の苦しみが簡単に無くせる事が分かった時って、意外とこんなに簡単に泣かせてしまうなら私の苦しみは何だったの!ってなりませんか?笑笑



 日差しが差し込むソレイユ邸に、コツコツとヒールの音が足早に響いている。



 音はまるで、今すぐにでもその場から消えてしまいたいとでも言うように切なそうだ。



 私は助けてくれなんて一言も言ってない。



 私が貴方と一緒にいたのは、2人のいない日々の苦しさから逃げるためよ。



 私にとってあの2人は、かけがえの無い存在なのに。



 たとえ2人にもう会えないとしても、私はずっと2人のことを覚えているし、2人のことを忘れたくない。



 あの2人を思い出して泣いたあの日々だって、苦しかったし、もう2人に会えないことを実感して辛かったけれど、忘れたくない。



 無かったことにしたくない。



 人が多くてリオのいるソレイユ邸の方が良いなんて、そんなに簡単に言わないで。



 私のあの日々を簡単に消そうとしないで!



 2人がいなくなって毎日辛くて苦しくて、何も楽しくなくて、でも誰も話す相手もいなくて、どれだけ時間が経ったかわからないあの日々を無かったものにしようとしないで。



 そんなに簡単に消せてしまうのなら、私のあの日々は何だったのよ!!!



 あの苦しみが無かったことになるのなら、あの日々が足りないものなんて言われたら、私は一体どうしたらいいの。



 頭の中に色々な言葉が浮かんで、不安がシンシアを支配する。



 考えがまとまらなくて、でも次々と言葉は浮かんできて、自分でも自分の考えてることが分からない。



 ずっと、焦燥感に襲われて胸がジンジンと痛くて、苦しい。



 早く、この気持ちを何とかしたい。



 冷静になりたい。



 とにかくソレイユ邸から、リオから遠ざかりたくて、足早に進んでいる。



 道ゆく途中でメイド達が驚いた様子でシンシアを見つめ、お辞儀をしている姿なんて構っていられない。



 道がわからないまま歩いて行くと、重厚で大きな扉が見えた。



 シンシアは迷わずその扉に足を運び、目一杯力を振り絞って扉を開く。



 1人では数十センチ開けるだけでも一苦労だったが、なんとかシンシアは扉を通り抜けることができた。



 扉の向こうは、端正に切り揃えられた緑と彫刻の噴水、それから門へと続く道が広がっていた。



 シンシアは迷わず道を進み、逃げるようにソレイユ邸から離れる。



 道を進むたび、ソレイユ邸の正門が大きくなってくる。



 「失礼ですがお嬢様、如何なさいましたか」



 正門の前で警備していた衛兵が、彼女に問いかける。



 「いいえ、何もしないわ。門を出たいのだけれど、通してくださらないかしら」



 衛兵達は、一瞬固まって目配せをした。



 見たこともないほど美しい少女が、瞳を潤わせて、ソレイユ邸を離れようとしているのだ。



 この女神のような美しい少女は?



 というより出して良いのだろうか。



 屋敷のものに何かされたのだったら保護すべきでは?



 衛兵達の脳内にそんな考えが浮かぶ。


 

 「ご確認しますので少々お待ちください」


 

 と言いかけた矢先。



 「お願い!通して、今すぐに!」



 連れ戻されるのでは、と考えたシンシアが矢継ぎ早に言葉を紡ぐ。



 彼女は、呼吸をあげ今にも瞳から雫をこぼしそうにしていた。


 

 あまりの様子に、衛兵達はシンシアを通すことにした。



 「ありがとう」



 シンシアはそれだけ言うと、何かに追われているかのように足早にその場を去る。



 頭の中はゴールのない迷路のように、ずっと言葉がループして思考がまとまらない。




 身体の中のモヤモヤとした気持ちはおさまる事を知らず、沸騰したお湯のようにぐつぐつと溢れだしてしまいそうだ。



 どれほど歩いたか分からなくなった頃、さっきまで誰もいない気がしていたのに、辺りを見渡すとちらほら人が見えた。



 屋敷から街までどれほどか分からないけれど、シンシアは街に来てしまったようだ。



 「お姉さん、女神様みたい!どこから来たの?お姉さんお名前は?あ、でもお姫様にも見える?じゃあ王子様はどこ?まーまにも見せてあげたい!ね、ね、お姉さん!」



 街を見渡していると、いつの間に近くに来ていた5、6歳の女の子が大きな瞳をさらに見開いて、飴玉のような瞳をキラキラと輝かせ、立て続けに話しかけてくる。



 大好きな飼い主に遊びを強請っている犬のように、瞳を輝かせている。



 「……もう少しゆっくりお話ししてくれないかしら。質問には答えるわ……ってちょっと、引っ張らないで、どこに行くの?」



 シンシアが女の子の勢いに困惑しているうちに、女の子はシンシアの手を掴み、せっせとどこかへ連れて行こうとする。



 思ったよりも力が強くて振り解くことができない。



 それに、まだ5、6歳の女の子が瞳をキラキラとさせているのに手を振り解くのは胸が痛む。



 困惑しつつもシンシアは女の子について行くことにした。



 元々何か予定があったわけでもない、気持ちを整理させるためにも何かをしてみるべきだと思ったのだ。


 


最後まで読んでくれてありがとうございます。

誤字脱字、表現の間違いなどがあったらそっと教えてくれると嬉しいです。

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