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とこしえの2人  作者: 雪月
第二章
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第三十一夜:それは決して、恋ではないのだ

リオとライが話してます。



 「はぁ……」



 ライがシンシアを連れて部屋を出たところを見届けてから、深いため息をついてベッドに沈む。



 昨日は眠たくなって彼女をソレイユ邸に飛ばしてしまったが、いつかは連れてこようと考えていた。



 ベッドに運ぶためにではなく、彼女と過ごす時間を多くするために。



 流石に選択を間違えた自覚はある。



 だからと言って、ライの言うようにお楽しみ(・・・・)があったわけでもない。



 そもそも、恋情など抱いたことがないし。



 太陽の眷属の末裔で、悠久の時を生きる者。



 何千年と長い時を過ごす長命種と、人間では恋情など抱けるはずもない。



 よくある恋愛小説なんかとは違って、吹けば飛んでしまうような寿命の人間に恋などできるはずがない。



 何十年と時を過ごしたとして、彼らは自分をおいて旅立っていってしまうことがわかっているし、たった何十年しか生きていない者を恋愛対象として見ることができない。



 皆等しく庇護対象なのだ。



 そんなこんなだから、リオはこれまでの生で一度もお楽しみ(・・・・)を経験したことがない。



 「全く、何を言うかと思えば……。はぁ」



 確かに彼女は今までの人生の中で群を抜いて美しく、これからも人生でも見ることはないだろう美貌をしている。



 それこそ呼吸を忘れてしまうほどに美しく、長い時を生きてきたわたしでさえ、あの美しさを言葉に収める事自体が烏滸がましいとさえ思うのだから。



 こんなに心を乱す存在は彼女が初めてではあるけれど、恋ではない。



 きっと、彼女のあまりの美しさと無知故の言動のせいだ。



 もしもこれが恋だとして、蝋燭の燈のようにすぐいなくなってしまうのだから、苦い思い出になることに違いはない。



 ならば恋なんてしない方がいいに決まってる。



 だから絶対に、恋ではないのだ。



 「おや、如何なされたのですか。芋虫のようにうずくまって。はははっ!」



 「!無言で側に立たないでくれるかい?」



 シンシアをメイドたちに引き継いだのであろうライが、意地の悪い笑みを浮かべて寝台のすぐ側に立っていた。



 「一言お声はかけたのですが。……気づかないほどに(シンシア様)のことを考えていたのでしょうねぇ。どうでしたか、初めてのキスは。」



 によによと悪巧みをしているのが丸わかりの声でリオを見下ろしている。



 ライの声に気づかないほど集中していたことに驚いてしまう。



 「君の考えているようなことは何もしていないからね。それから、彼女のことはそう言うのではないと言っただろう。」



 「おやおや、私は額へのキスのことしか言っておりませんが。まさか、唇へのキスを思い浮かべたので?困った主人ですねぇ。……どうでしょうか、自身のベッドに連れ込むだけでは飽き足らず、抱きしめて額にキスをするなんて。それ以外に何があるとおっしゃるのでしょうか」



 本当に意地の悪い侍従だ。



 人間にしては年を重ねているにしても、随分と想像力豊かだ。



 「!ライが最初に言ったからそう返しただけだよ。……彼女があまりに無垢で可愛らしいから、そうしているだけ。」



 苦し紛れに話す。



 「そうでしょうか、私にはどう見ても恋にしか見えませんが。……そういうことにしてあげましょう。」



 「全く……シアに変なことを吹き込んでいないだろうね?」



 「何もしていませんよ。……それにしても、美しい方でしたね。」



 「ふふふっ、だろう?あんなに美しい人は生まれて初めてだよ。」



 2人の話題はシンシアへと移る。



 「ええ、容姿だけでなく立ち居振る舞いもお美しい。凛としたお言葉、あれには恐れいりますよ」



 シンシアは容貌も美しいが、彼女の言葉の節々からは気品が感じられる。



 きっと、オリアナとレイリアの2人から淑女としての教育も受けていたのだろう。



 謙って名前を聞いたライに対して、リオと対等な関係であると挨拶だけで示した。



 これだけで立派なレディであることが分かる。



 「あれにはわたしも驚いたよ。元々彼女は気高いと思っていたけれど、ライに対してあの返しができるとはね。ふふふっ、彼女のメイドたちは随分とシアを大切に育てていたようだね」



 「シンシア様は、どちらのお嬢様なのでしょうか。あれほどの教育を受けているとなると、名の知れた名家のように考えられますが」



 「さぁね、わたしにも分からないんだ。彼女の屋敷は森の奥にあって、人との交流は滅多になさそうだったし、周りの街にもシアを知ってそうな人はいないと思うよ」



 シンシアの出自は何百年と生きているリオにも分かっていない。



 あの屋敷を見つけたのさえ、つい数日前のことなのだ。



 「なるほど、身分不詳の美しい少女ですか。夢がありますね、はははっ!」



 「はぁ、本当に君は……」



 ライは存外夢見がちな男なのだ、シンシアの正体に対して何か期待しているらしい。



 「お嬢様の身支度がまもなくお済みになられます。」



 そうこう話しているうちに、メイドがシンシアの支度がもう終わると教えてくれた。



 「ありがとう、わたしもそろそろ行くよ。」



 魔法でさっと身支度を整えて、彼女の待つサンルームに向かうことにした。


 

最後まで読んでくれてありがとうございます。

誤字脱字、表現の間違いなどがあったらそっと教えてもらえると嬉しいです。

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