第三十二夜:女神のような美と伝承
シンシアちゃんがとーっても美しくなります^_^
ライについてリオの屋敷を歩く。
廊下にずらりと並んでいる大きなアーチ窓からは、太陽光が通らない森にあるシンシアの屋敷とは違い、街で見たような輝かしい太陽光が差し込み、窓の付近を優しく照らしている。
綺麗に磨かれた塵一つない木の廊下や、天井に設置されたクリスタルのシャンデリアが、窓から差し込む光を屈折し、蕩けるような琥珀色や、宝石のような輝きを放ち、屋敷をいっそう明るくさせていた。
屋敷の中を失礼にならない程度に堪能しながらライについて歩くこと数分。
「シンシア様、こちらのメイド達に朝の身支度、採寸などの諸々の世話をさせて頂きます。身支度がお済みになられましたら、サンルームの方へご案内致しますので、それまでこちらでお過ごしください。……失礼致します」
ライはメイド達に引き継ぎをすると、その場を去っていった。
部屋は、豪華なシャンデリアに美麗な彫刻、質の良い絨毯などがあり、こちらも光がよく差し込み、趣がある。
黒を基調とした丈夫そうな生地のワンピースに、白く薄いレースのエプロン。そして、エプロンと同じように薄いレースのひらひらとした髪飾りをつけたメイドたちが5名ほどシンシアの前に並んでいた。
「シンシア様、お初にお目に掛かります。本日は、シンシア様の身支度や採寸を担当させて頂きます。よろしくお願いいたします」
代表の先頭がそう言うと、5人揃って背筋を伸ばし腰を浅く曲げ、お辞儀をした。
「ご挨拶をありがとう、シンシア・アルテミネよ。よろしく頼むわね」
シンシアは背筋を伸ばし、彼女らの挨拶を受け入れて、威厳ある態度で答えた。
「まずは私がシンシア様に身支度の魔法を掛けますね。……失礼致します」
先ほど挨拶をしてきたメイドが指を一振りする。
シンシアの少し乱れた銀髪は、一瞬でさらさらと艶のある髪に変わり、ウェーブがかった穏やかな巻き髪になった。
「洗浄と保湿の魔法もかけておりますのでご安心くださいませ。……次は採寸に移ります。しばらくの間、お付き合いくださいませ」
彼女がそう言い終わるや否や、2、3人のメイド達に囲まれ、腕や腰など様々な場所にメジャーを当てられ、採寸される。
採寸が済んだら、他のメイド達が何着も衣装を運んできて、シンシアに着付けて行く。
深みのある赤や濃い青など、様々な色のドレスを試着して行く。
そうして何着も試した後、淡い水色、ベビーブルーのマーメイドドレスに決まった。
「シンシア様の銀髪と美しい容姿ならば、下手にドレスを盛らずにシンプルな装いの方がより美しさを引き立てます。……よくお似合いです」
髪はドレスと同じ色のリボンをハーフアップでつけられ、いつもと同じ髪型なのに彼女の美しさを増長させる。
「……やはり美しいお方にはシンプルな装いが映えますね。まるで女神のようにお綺麗です」
自分たちが着飾った美の結晶に、うっとりとした瞳をしながらも、言葉や表情は崩さずに褒め称えてくれる。
「ありがとう、貴方達のおかげね。」
ちょうど支度を済ませて談笑していたところ、扉からノック音が聞こえてくる。
「シンシア様、お迎えにあがりました。……これはまた、随分と素晴らしい。リオ様の反応が楽しみですね。……さぁ、サンルームへ向かいましょう。」
扉を開けて、シンシアの姿を目に入れたかと思うと、ため息をつくかのように感嘆してサンルームへの案内を申し出た。
「ええ、メイド達の働きは素晴らしいわ。そうね、行きましょう。」
シンシアを女神のように美しく着飾ったのはメイド達なので、彼女達の働きを労ってみせる。
シンシアはサンルームへと向かうため、ヒールの音をコツコツと鳴らしてライに続き廊下を進んで行く。
マーメイドドレスで歩いていても、背筋を伸ばし凛と歩く様は、とても美しく気品にあふれている。
屋敷に入り込む光がシンシアのドレスやヒールを照らし、彼女を歩く宝石のように見せる。
「シンシア様のお姿を見られたら、リオ様はきっと惚れてしまうでしょうね。……実に楽しみです」
シンシアの数歩前を歩き先導しているライがにやにやと楽しそう話しかけてくる。
「ふふっ、そうかしら。彼女、とても美しいでしょう。自身の顔に見慣れているでしょうから、その可能性は低そうだけれど。」
美しく着飾られた自覚はあるけれど、あのリオが恋に落ちるほどかしら。
それに彼女……女性もそういう対象なの?
「……なるほど、気づいていらっしゃらないのですね。これはこれは、良いですねぇ。」
何かに気づいたらしいライは、面白いことを見つけたと言うような顔をして、にやにやとしている。
「どうかしたの?」
「いえいえ、何でも御座いませんよ。……時にシンシア様、太陽の眷属の末裔の伝承を聞いたことがあるでしょうか」
世間話でもするようにライはそう切り出した。
「太陽の眷属の末裔……?いいえ、聞いたことがないわ」
「この世界には、私共人間より遥かに長い時を生きる者たちが居るのです。それが太陽の眷属の末裔、そして彼らは世界の始まりから終わりまでを見届け、世界を照らす使命があるのだとか。」
「初めて聞く伝承だわ。本当に実在しているのかしら。」
突然伝承の話を持ち出したライを不思議に思いつつ、伝承の内容が本当なのか尋ねる。
「ええ、太陽の眷属の末裔は確かに存在していますよ。この辺りでは有名な話です。……それに、この伝承には続きがあるのですよ。月の眷属の末裔もいるんだとか。……月の眷属の末裔に関しては、定かではありませんけどね」
まるでその存在を知っているかのようにはっきりと言い募るライ。
なぜ伝承なんて聞かせたのか訝しみながらも耳を傾ける。
太陽の眷属の末裔、ね。
彼らも私のように大切な人を見送ってきたのかしら。
長い時を生きる……どれほど長い時間を過ごすというの。
でも、どうして私にそんな話を?
「どうして私にそんな話をしたのかしら。」
「ふふっ、お耳に挟んでおいた方がよろしいかと思いまして。場を繋ぐ話にはなったようですし、良かったです。……さぁ、サンルームに着きましたよ」
最後まで読んでくれてありがとうございます。
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