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とこしえの2人  作者: 雪月
第二章
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第二十九夜:ずーっと、傍にいるからね

作中ではまだ6日しか経ってないの何のバグですか?



 リオに抱きついてかわいそうなくらい頬を染めたシンシアと、そんな彼女をぎゅっと抱きしめるリオ。



 2人は何も言わず、数分の間抱きしめ合った。



 お互いの存在を確認するように、今ある時間を大切に噛み締めるように。



 重なる鼓動と心地よい体温、そして聞こえる吐息。



 離れていた数十分を掻き消すかの如く、深く抱きしめる。



 「……苦しくはない?」



 もう何分も抱き合っていたと言うのに、今になってそんなことを心配そうに訊ねるリオに、笑いを隠せない。



 「ふふっ、今更そんなことを聞くの。」



 「あははっ、確かに。……こうしてぎゅっとくっつくと、心地良くて眠たくなってしまうね。ふふふっ」



 首筋に顔を埋めて、小さな子供のように笑みを溢すリオ。



 「……そうね、お昼寝でもしましょうか。」



 この温もりを手放すにはまだ惜しく感じて、お昼寝を提案する。



 「……うん」



 リオが頷いた途端に、シンシアはベッドに横たわり、リオに抱きすくめられていた。



 馴染みのある爽やかな香りが、より一層強くなる。



 リオに包まれているみたい、実際に抱きしめられているのにこんなことを思うなんて。



 シンシアはくすりと笑みをこぼした。



 「シア、どうしたの。」



 目の前に寝転がり、シンシアの腰に腕を回したリオが、頬にそっと手を添えてうっとりとした瞳で聞いてくる。



 「リオの香りがすると思っただけよ。」



 「わたしの部屋だからだと思うよ。ふふふっ」



 リオは当たり前のように言い切り、これまた幸せそうに笑う。



 なんだかいつもより幼く感じ、シンシアもまた、リオの腰に手を添える。



 「シア」



 「なあに?」



 「ずーっと、シアの傍にいるからね。」



 リオは、シンシアの頬に手を添え、撫でながらまどろみ、いつもより気の抜けた声で優しく言い募る。



 「……ずーっと?」



 ずーっとなんて言ったって、リオもオリアナとレイリアのように私を置いていってしまうのだろう。



 それでも、聞き返さずにはいられなかった。



 リオはどのくらい傍にいてくれる気なのかしら。



 「ふふっ、うん。ずーっと。……シアがわたしを置いていなくなってしまうまで。シアの手に皺が増えて、歩くことができなくなってしまっても。……最期まで、ずーっと。」



 未来に想いを馳せてにこにこと笑みを浮かべ、すっと顔を近づけてくる。



 「……私、しわしわになるかしら。それに、置いていくのは貴方じゃなくて?」



 2人がいなくなってから、随分と時が経ったように感じるけれど、私の身体は一向に成長しているようには思えないわ。



 どれほど時が経ったのか分からないけれど、飽きるほど春を経験しているのだもの。



 それなのに全く成長しないのだから、私がしわしわになるところなんて想像できないわね。



 それに、見たところリオは私より年上そうだし、置いていくのは貴方の方でしょうに。



 シンシアは不満そうに呆れた瞳で訴える。


 

 「ふふっ、シアはまだ若いから想像もつかないかもしれないね。……でも、それはないよ。これまでだって、皆を送ってきたのだから。」



 ……送ってきたって、どう言うこと?


 

 真意の分からない言葉に、疑問を抱く。



 「ねぇ、送るってどう言うことなの。」



 「……内緒。」



 シンシアの瞳を見つめ、リオは魅惑的に微笑んだ。



 もしも私が蝶々だったなら、きっと寄って行ってしまうわ。



 そう思ってしまうくらい、美しい笑みだった。



 「ふふっ……おやすみ、かわいいシア。良い夢を。」



 リオはシンシアの額へキスを落とし、ぎゅっと抱きしめると、眠ることにしたらしい。



 「はぁ、おやすみなさい。」



 数分ほどすると、すぅすぅと呼吸音が聞こえてくる。



 本当に眠ってしまったようね。



 それにしても、今日は騒がしい1日だったわね。



 手を繋いで一緒に初めての街を歩き、日当たりの良い広場でリオのおすすめの編み込みパンを食べた。



 パンの形がリオの髪と似ていたから好きって言ったわけではないのに、もう。


 

 広場でハグをしたのが恥ずかしくなって、その後街を歩く時は手をつなげなくて。



 そうしたら離れ離れになってしまって、リオと合流しようとしたら屈強な男たちに連れていかれそうになってしまった。



 初めて会ったあの日ように、リオは泣いている私に手を差し伸べてくれた。


 

 街も編み込みパンも、人混みも、それから抱きしめられるのも、全部初めてだった。



 悪い意味でも初めての事もあったけれど、それでも良い思い出になった事に違いはない。



 リオといるのは、心地良くて楽しい。



 こんな時間が、ずっと続けば良いのに——。



 リオの体温と呼吸を感じながら、1日のことを振り返っていると、段々と意識がふわふわとしてきて、眠たくなってきた。



 眠るには少し肌寒く感じて、リオの胸に身体を寄せて暖をとる。



 そして、リオがしてくれたように額にキスを落とした。



 「リオ、ずーっと、傍にいて。……おやすみなさい。」



 2人はお互いを深く抱きしめて、夢など見ないほど深く眠り、目が覚めたのは翌朝だった。



 

 



最後まで読んでくれてありがとうございます。

誤字脱字、表現の間違いなどありましたらそっと教えてもらえると嬉しいです。

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