第二十七夜:美しき絶望
ファンタジーって感じです。笑笑
それは、突然現れた。
街の人々が、見て見ぬふりをしつつも心配しながら見つめていた視線の先。
圧倒的な美しさを放つ感情の読めない少女を、凶悪な顔をした屈強な男と線の細い気味の悪い男が連れ歩いていた。
誰もがみんな、あまりの美しさに目を奪われるも、自分の身を心配して助けようとはしない。
そんななか、少女が一粒の涙を零す。
冷淡な美しさを持つ少女が涙を流す様は、まるで神話の一節を彩る絵画のようであった。
——ぽつり。
石畳に涙が落ちた時、それは現れた。
太陽の光を反射して眩しいほどに輝く金髪に、生命の色を感じさせるツァボライトのように洗練された瞳。
爽やかな香りを纏い、悠然と姿を現した息を呑むような美貌。
「迎えにきたよ。——シア」
涙を流した銀髪の少女の前に、ふわりと現れた金髪の女性。
例えるならば、月と太陽のようだ。
金髪の女性は優美に微笑みながら、銀髪の少女の方へと手を差し出している。
その姿は、2人の仙姿玉質と相まって御伽話を見ているようだ。
時間が止まる。
観客も、悪役も、一瞬何が起こったのか理解できなかった。
唯一同じ時を刻んでいたのは、月と太陽の2人だけ。
月のような少女は、想像もできないほど美しく微笑んで言葉を放った。
「っリオ……ありがとう!」
人々は固まり、静寂が場を支配するなか、2人は言葉を交わす。
いつもと何も変わらないはずの日のことだった。
「シア……わたしがいけなかったんだ。もう一度、その手を繋がせて欲しい。」
リオが後悔を滲ませた表情をして、左手をとってくる。
「見つけてくれたでしょう?……リオは何も悪くないわ。」
リオがそっと触れた手を、シンシアがぎゅっと握る。
「……今度こそ、この手を離さないと誓うよ。」
迷いのない瞳で、リオは繋いだ手に優しく力を込めた。
「おいおい、なにしてやがる。それは俺の獲物だ、邪魔すんじゃねぇよ。……お前も良い顔してんじゃねぇか、はははははっ!一緒に売っぱらってやるよ。」
我に帰った屈強な男が、恐ろしい剣幕で言い募る。
「……随分と好き勝手言ってくれたようだけど、君たちのように下賎な者が触れることは看過できないよ。……獲物?笑わせるのも大概にした方がいい。」
リオは、今までに見たことがないほど冷たい瞳で微笑み、男たちを見つめた。
「シアには、わたしが永劫傍にいるのだから。……お前たちの出る隙はないよ。」
「ってめぇ、顔が良いからって何を言っても良いわけじゃねぇぞ。……その御自慢の顔をぐちゃぐちゃにされたく無かったらなァ。」
ついに男は我慢の限界がきたようで、首をポキポキと鳴らし、一歩踏み出そうとする。
だが、それは出来なかった。
快晴だったはずの空が切り裂かれ、雷霆が男のそばに落ちたからである。
雷が落ちる直前、リオはシンシアの顔を引き、胸に埋めさせた。
まるで、雷霆の訪れを知っていたかのように。
暖かな色合いとは裏腹に、酷く冷めた瞳で男達を見やるリオに、男は畏怖の念を抱く。
——何かが違ぇ。今ここで動けば、確実にやられる。
こいつは、やばい。何者だ。いや、そんなことはどうでも良い。
心の底から恐怖を感じ、汗も、涙も、何もかもが止まらない。
男は一瞬で動きを止め、絶望に満ちた顔でリオを見つめる。
自身が失禁したことにすら気づかずに。
すでに線の細い男は身体中の穴という穴から汁を流し気絶している。
この日、2人は本当の絶望を知る。
「いつの世も、大それた人間はいるものだね。……だからこそ、わたしたちが居るのだろうけれど。」
そんな2人の様子を微笑みながら見つめ、静かに独りごつリオ。
この恐ろしく美しい者は、私たちとは何もかもが違う。
生きている次元が、世界が違うのだ。
人々は本能で悟る。
「……怖かっただろう、シア。帰ろう、もう何も心配いらないよ。」
リオは何事もなかったかのように、柔らかく微笑み、胸の中の少女の頬に手を添えた。
「……リオ……うん。」
胸の中の少女はリオをじっと見つめたのち、鈴のように可憐な声で頷いた。
そうして2人は瞬時にその場から姿を消した。
最後まで読んでくれてありがとうございます。
誤字脱字、表現の間違いがあったらそっと教えてくれると嬉しいです。




