第二十六夜:迎えにきたよ。シア——
進展ありです。
ドッキドキで目が離せないですねー笑笑
昼食を食べ終わって、なんとなく手を繋がずに少し間を開けて歩いていたら、人の波に流されてリオとはぐれてしまった。
リオがどこにいるか、きちんとちらちらと確認していたはずなのに、急に姿が見えなくなってあれよあれよと見失ってしまったのだ。
そうして今は、人の流れが激しくない裏路地にいる。
リオの姿が見えなくなって動けずにいたら、通行人の邪魔になってしまうし、もっと流されて見つけられなくなってしまうと思った。
「……ふぅ、なんとか人の多いところを出られたわね……。」
よろよろと壁に手をつき、いつになく無表情で疲労困憊な様子のシンシア。
動こうとしても人に押されてしまって自由に身動きができなかったし、自分がどこに向かっているのかすらわからなくて、何もかもが大変だったわ……。
人に流され右往左往としていた時を思い出して、思わず眉を寄せる。
まぁ、こうして抜け出すことが出来たのだから良かったわ。
それにしても困ったわね、リオと離れ離れになってしまったわ。
にこにことはにかみ、こちらに手を差し伸べてくれる彼女が思い浮かぶ。
「…….リオ、どこにいるのかしら。」
はぁ、とため息をついて考える。
そもそも彼女は、私とはぐれたことに気がついているのかしら。
さっきまで、ぎこちなくではあるけれど、間を置きつつも会話をしていた。
彼女は会話をするときに瞳を見てくれるし、気まずい時でもチラッと目線をこちらに向けてくれていたから、もうそろそろ気づいているわよね。
「……どうしたらいいかしら。」
無意識にもう一度ため息がもれた。
彼女が私がいないことに気づいているとして、どうやって再会するのかが問題よね。
このままここで待っているわけにはいかない。
リオと合流するために何かしなくちゃ。
「……あ、」
街にきたときにいた広場か、昼食を食べた広場、どちらかに行くことが出来たら、リオと合流できるかもしれない。
すぐに閃いた——彼女と私が知っていて人が多すぎない場所。
そうと決めたら移動しないと。
くるりと向きを変えて、広場を目指して歩き出そうと一歩踏み出そうとしたとき——。
「おい、こんなところにとんでもねぇ綺麗なガキがいんじゃねぇか。……高く売れそうだなァ、」
口角を片方だけ上げて笑い、笑っているはずなのに瞳だけは真っ直ぐとこちらを射抜き、冷酷な色をしている。
見たところリオよりも随分と身長が高くて、ぼこぼこと盛り上がった筋肉、そして首や顔のところどころに見られる刃物で切りつけた後のような少し盛り上がった白い跡。
どう考えても関わらない方が良いに決まっている。
シンシアに話しかけた男は、屈強な体を持ちながらも姿勢が悪く背中が丸まり、顔が前に出ているため、だらしがない。
凶悪な顔つきをした、屈強な男。
「……っ、今は急いでるの。貴方みたいな人に構っている時間はないわ、どきなさい。」
拳をぎゅっと握り、普段から無表情なことが多いシンシアは、それよりさらに温度を感じさせないガラスの瞳と恐ろしいほどに美しい顔でそう言い放つ。
シンシアに話しかけてきた屈強な男と、何を考えているかわからない線の細い男の間を通り抜けようとする。
「おいおい、何を勘違いしてやがる。……くっははははっ!誰に売っぱらっても躾がいがあって気に入られそうじゃねぇか、良い女だ。……おい、連れてくぞ。」
男はニタニタと下卑た笑いをしながら、線の細い男にシンシアを連れて歩くように命令した。
「っ私に触らないで。貴方のような人間が触って良いと思っているの、あり得ない……!」
底知れぬおぞましさを感じて、眉を寄せて拒絶する。
彼女のようにすぐに移動できる魔法でも習得しておくべきだったわね、こんなことになるなんて。
何か魔法を使おうと考えたけれど、誰かを傷つけるような魔法も、彼女のような移動魔法も知らない。
今のシンシアには、何もすることが出来なかった。
そうこう考えているうちに、線の細い男にパシッと腕を掴まれてしまう。
「…っやめて放して!放しなさい……!」
腕を引っ張ったり、身体の向きを変えて抵抗するも、少女の見た目をしたシンシアは細くとも男の力には敵わない。
ずるずると腕を引かれ、先ほどまでいた人通りのある大通りに連れて行かれる。
「その手を放して……!」
シンシアは必死に抵抗を続けるも、周りは人だかりで、彼女のような小さな者の抵抗は意味を成さずに、周りの人は彼女の様子に気づかずに素通りして行く。
こんなに人がいるのに、どうして誰もおかしいと気が付かないの……!
街を歩く人々は、彼女が連れ去られていると気が付いていても、屈強な男が共にいては助ける気も起きない。
それに、助けようとして金銭をせびられては困るし、明日の自分の身を考えて、気が付かないふりをしている。
ずるずると引きずられながら、大通りを進んで行く。
「っやだ、やめて……!っリオ……!」
男に腕を引かれながら、リオのことを思い浮かべる。
にこにこと新緑のように鮮やかな瞳を柔らかく細めて、優しく微笑んで手を繋いで、頭を撫でてくれる彼女。
会うたびに、「会いたかったよ」と殊更甘く囁いてくる彼女。
こんなつもりじゃ無かったのに……!彼女と合流して、また手を繋いで街を見て回りたかっただけなのに……!
もうリオの笑顔を見ることが出来なくなってしまったら——
私、これからどうなるの。
どうしよう、リオ……!
たくさんの不安がシンシアを襲う。
リオと会うことが出来なくなってしまったら、と思うと心臓が冷えて、涙が溢れ落ちそうになる。
胸が苦しい。
はく、と呼吸が止まりそうになる。
——ぽたり。
頬を伝う涙が、石畳に雫を落とす。
「やっと見つけた。迎えにきたよ、シア——。」
最後まで読んでくれてありがとうございます。
誤字脱字、表現の間違いがあったらそっと教えてくれると嬉しいです。




