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とこしえの2人  作者: 雪月
第二章
25/33

第二十五夜:春風のいたずら

もっと早くに上げたかったんですが、なかなか話がスムーズに進まなくて結局この時間になりました笑




 風が吹いてリオの香りが強くなったと思ったら、彼女に強く抱きしめられていた。



 リオは身を屈めて、長い腕をシンシアの背中に回し、彼女の肩口に顔を埋めてぎゅっと抱きしめている。



 予想もしていなかった出来事に、一瞬理解が追いつかなくて、瞳をぱちくりとさせてしまう。



 馴染みのある体温と、嗅ぎ慣れた彼女の香り。


 

 私の香りとリオの香りが混ざって、ひとつになったみたい。



 何も理解できない頭でそのような事を考える。



 「ふふふっ、ありがとう。……もう少しだけ、こうさせて。」



 突如、耳元からリオの声が聞こえて距離の近さに気づく。



 優しく囁くように懇願する声に、彼女の吐息を感じて落ち着かない。



 抱きしめられているせいで、呼吸音ですら伝わってくる。



 ……リオ?どうしたのかしら。



 「もう少しだけこうさせてほしい」と言う声が、切なそうに感じて、声をかけることができなかった。



 声をかけることが出来ず、手持ち無沙汰になったシンシア。



 こんな時、どうしたら良いのかしら。



 確か、小説ではこんな時、抱きしめ返していたけれど……。


 

 彼女の気持ちを分かりたくて、背中に腕を回して、抱きしめ返す。



 リオの鼓動と私の鼓動が重なったことと、耳元で聞こえる呼吸音が穏やかな気持ちにさせる。



 なんだか、暖かくて落ち着くわね。小説の登場人物たちも、こんな気持ちだったのかしら。



 段々と心地良く感じてきて、彼女の肩に顔を寄せる。



 2人はそうしてしばらくの間、春の風がさざめく街の広場で、抱き合っていた。



 



 どれくらいの時間が経っただろうか、5分程度かもしれないし、もっと長い時間かもしれない。



 「……ありがとう、シア。……恥ずかしい姿を見せてしまったね、もう大丈夫。」



 肩から顔をあげたリオが、居心地悪そうに微笑みながら話す。



 「……何のことかしら。抱きしめられたのは初めてよ、ふふふっ」



 リオの切なそうな声に気づかないふりをして、もう一度肩に顔を埋める。



 彼女にとって何か辛い出来事を思い出させてしまったのかと考えて、聞くことはしなかった。



 「……うん。……ふふふっ、初めてのハグはどうだった?」



 「そうね、悪くないかしら。……それよりも、パンが冷めてしまうわよ。……ほら、食べましょう?」



 シンシアは顔をあげずに答えた。



 照れくさくて、分かりやすく話題を変えた。



 「それもそうだね。」



 彼女はくすっと笑って頷いてくれた。



 ……本当は分かってるんでしょうけれど。



パンを食べ終わるまで、2人は一言も喋らなかった。



 なんだか気恥ずかしくて、何を話そうにもお互いの顔を見ることが出来そうに無かったからだ。




 




 「それじゃあ、そろそろ行こうか。」



 先に食べ終わっていたリオが、シンシアが完食したのをみて声をかける。



 「……そうね。」



 2人はぎこちない会話で、街を練り歩く。



 「……屋敷に戻るのではないの?」



 「シアは街に来るのが初めてだろう?だから、もう少し見せてあげたくて。」



 目と目が合ったと思ったら、さっと逸らして。



 一定の距離を開けながら、街の様子を見て回る。



 お昼時ほど混んでいないとはいえ、この街はいつきても賑わっている。



 下ばかり見て歩いていては、前から来た人や横を通り過ぎる人にぶつかるし、きちんと隣の人の居場所を確認しないとすぐに逸れてしまう。



 「シア、絶対にわたしから離れないで……シアっ?」



 はぐれないようにと声をかけようとシアの方を見て息を呑む。



 ——いない。



 見間違いかと思って、もう少し後ろや左右を確認しても、見つからない。



 先ほどまで、傍にいたはずなのに。



 確認していたはずだったのに。



 ——まさか、本当にはぐれた?



 一気に冷や汗が出てきて、思考が止まる。



 わたしが、きちんと手を繋いでいなかったせいだ。



 街に来るのは初めてで、彼女が人混みの多い場所に慣れていないのは分かっていたのに……!



 いや、反省は後だ。



 まずはシアを見つけ出さないと。……怪我や危険なことに巻き込まれていませんように。



 心臓が嫌に高鳴るなか、リオは街を駆け出した。



 


最後まで読んでくれてありがとうございます。

誤字脱字、表現の間違いがありましたらそっと教えてもらえると嬉しいです。

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