第二十四夜:…………こんなつもりじゃ無かったのに
前半リオ視点、後半売り子のおじさん視点です。
おじさん視点はサラサラかけました笑
まさかそんな事を言うなんて思わなかった。
きっと、恥ずかしがって可愛い反応をすると思っていたから。
「でも、わたしは貴方の方が好きよ……リオ。」
頬を林檎のように赤く染めて、うるうると潤した瞳を逸らして、いじらしく言ってくるものだから、心臓が高鳴ってしまった。
「……っ」
顔が熱い、彼女の熱が移ったみたいだ。
彼女よりも長く生きてきたと言うのに、こうもしてやられてしまうなんて。
風が吹いてくれて良かった。
靡く髪がわたしの赤らんだ顔を隠してくれるから。
本当に面白い少女だ。
全く、いじらしい。
「…………こんなつもりじゃ無かったのに。」
ぽつりと小さな声で呟いてしまう。
シアとこうして時間を過ごすたびに、彼女のことがますます可愛くて仕方なくなる。
愛おしさが胸に込み上げてきて、微笑まずにはいられない。
本当に困る、いつか居なくなってしまうのに。
堪らなくなって、彼女の手を取り抱きしめる。
「ふふふっ、ありがとう。……もう少しだけ、こうさせて。」
いつものわたしらしく声を出す。
彼女にこんな顔を見られたくない、もう少しだけ彼女の存在を感じていたい。
いつか彼女がわたしを置いてしまっても、あの言葉とこの体温を忘れない。
大丈夫、最期まで傍にいるから。
何があっても、傍に——。
彼女と出会ってから、わたしはおかしくなってしまったみたいだ。
「!リオ、沢山種類があるわ。それに、美味しそうな香りがする……!」
いつもこの店の商品を買ってく奴は大体顔見知りだ。
そんな中で聞き慣れない声が聞こえて、声のした方へ顔を向ける。
そこには、神の最高傑作と見紛うような美しい2人組が居た。
1人は、俺の娘より少し小さいくらいだろう。
艶のある銀髪に蜂蜜色のリボンを付けているが、決して幼くは見えない。
それどころか、酷く大人びていて氷のような冷たい印象を与える。
彼女は言葉遣いも何処か大人びていて、育ちの良さを感じさせる所も、その印象を助長させているだろう。
ありゃぁ、もっと大人びたそれらしい服を着せれば何処かの女神だと言われても違和感ねぇな。
控えめに微笑むさまは、彼女の冷たい美しさと相まって彫刻品のようだ。
そしてもう1人もこれまた酷く美しい。
さっきの少女が月だとしたら、この少女は太陽だろう。
金髪を胸の下あたりまで緩く編み込んだ少女は、銀髪の少女と並ぶと頭一個分は大きい。
銀髪の少女の手を深く繋ぎ、身体を寄せていて随分と過保護なようだ。
銀髪の少女がショーウィンドウの商品を眺めている間、恐ろしいほど美しい顔で彼女を見つめている。
……女だと思っていたが、ないな。あれは男だ。
もう1人を見つめる瞳が、愛する女を見つめる男の瞳をしている。
あんなに熱を帯びた瞳で女を見つめるなんて、男しかしねぇ。
はーん、可愛くて仕方ない、みてぇな顔しやがって。テメェの顔を鏡で確認した方がいいぞ小僧。
見る奴にはわかっちまうだろうさ。
それにしても、あのお嬢ちゃんが気付いてねえからって、恋人繋ぎとはやるじゃねぇか。
そうこう考えている間に2人は何を頼むか決まったらしい。
「ハムとチーズの三つ編みパンを2つお願いするよ。」
銀髪のお嬢ちゃんを見ていない時は、美しい女にしか見えねぇのになぁ。
一度女を愛したことがある奴ならわかる瞳をしているんだからなぁ、えらいこった。
「はいよ!焼きたてだから気をつけてお食べ!デート楽しみな、あっはっは!」
良いもんを見た礼に、銀髪のお嬢ちゃんに意識させてやるか。
ま、きっと気が付かねぇだろうがな。
「あははっ、ありがとう!また来るよ。」
おうおう、次来る時はもっとお嬢ちゃんを意識させて来るんだな。
ありゃあ手強いだろうなぁ、完全に同性だと思ってら。
人間離れした美形だったが、好きな女の前じゃただの男だな。
男は2人が去った店内で、愉快そうに笑い声を上げた。
それから数十分後、広場で「神の如く美人たちが抱き合っていた」という騒ぎを聞いた男は、今度こそ豪快に笑い転げた。
最後まで読んでくれてありがとうございます。
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