第十四夜:よく分からないけど……分かった、気がする
書きたい事は沢山あるけれど、そこに繋がるまでの過程を書くのが難しいですね。
何十話も話をかける人はすごいと思います。
「それじゃあ、今日はもう遅いから帰るよ。おやすみ、シア。また明日」
そう言って彼女は、今日も魔法で姿を消した。
「あははっ……じゃあこれからは、わたしと沢山初めてをしよう。楽しみだね……!何からしよう、ふふふっ。」
これからは沢山初めてをしよう、と言う言葉はとても魅力的に感じる。
いつか彼女は私を置いていってしまうのに、そんな終わりが無いように思わせるような言葉だ。
「……ふふっ」
彼女はこれからも一緒に居てくれるらしい。意識しなくとも笑みが漏れる。
しばらくの間は穏やかな日々が続きそうだ。
彼女は私の「出会い」だから、きっと「別れ」もそう遠くないうちに訪れるけれど。
今だけは「別れ」のことは考えたくない。
彼女と過ごすことで、何かが変わるような予感がするから。
ずっと物足りなかった何かを見つけたようで、きっとこの瞬間を逃したらもう見つけることは困難になると思わせる何かがある。
たとえ「別れ」がきても、彼女との「出会い」を無駄なものだったとは思わない。
あの日流していた私の涙を、止めてくれたから。
「ねえレイリア、どうして2人で食べると美味しいになるの?」
夢の中のシンシアは書斎のソファに絵本を広げて座り込み、傍に立つレイリアに問いかけている。
「少し難しい質問ですね……。相手のことが好きだからではないでしょうか……。」
「……好き?……どうして美味しいの……?」
幼いシンシアには、好きな人と一緒に食べるとなぜ美味しく感じるのか結び付かなかった。
「……好きな人と一緒にいるのは楽しくて、嬉しくなるでしょう?楽しい、嬉しいって気持ちは食事をさらに美味しくさせるんです。」
「よく分からないけど……分かった、気がする。」
シンシアにはまだ、楽しいや嬉しいという気持ちが分からないけれど、レイリアが言うならばきっとそうなのだろう。
「ふふっ、お嬢様にはまだ早かったですね。……でも、いつかきっと分かる時が来ますよ。」
「……そっかぁー。大きくなったら、レイリアとオリアナと一緒に食べたい……そうしたら、もっと美味しい……かも。」
今はまだ分からない気持ちも、大きくなったらきっと分かるはず。……きっとその時はレイリアやオリアナと共に食べているのだろう。
「お嬢様……!ええ、きっと。食べましょうね。ふふっ、嬉しいです。」
「うん!」
段々と目の前のレイリアの紫の瞳を細めて優しく微笑んだ顔が遠のいていく。
何かに引っ張られているような感じがして、目の前が真っ白になる。
「夢……?」
見慣れた寝室の天井が目に入る。
夢を見ていた。……2人がいた頃の。
2人の夢を見るのは良くあるが、いつも冷たく暗い屋敷で2人を探し続ける夢だった。
バクバクと高鳴る鼓動に、頬をつたって枕を濡らす大粒の涙。
そして、1番に目に入るのはいつも、自分の伸ばした手の平だ。
2人がいた頃の夢を見るのは随分と久しぶりだ。
それにしても、懐かしい夢を見た。
夢の中のレイリアの姿は、まだ随分と若かった。
最期の彼女は、少し低くか細い声をしていたのに、夢の彼女は背筋がスッと伸び、落ち着いた優しい声で、しかしハキハキと答えていた。
またあの頃のレイリアを見ることができるなんて。……もう見ることはできないと諦めていたのに。
心臓のあたりがぽわぽわして、どこか落ち着かない。
なんだか今日は良い事が起こりそうな予感がする。
その証拠に、シンシアは朝から晴れやかな気持ちで身支度を始めるためにベッドから腰を浮かせた。
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