第十三夜:シアのことは、わたしがにこにこにするから
今回はいつもより少し長めです。
前半はシア、後半がリオ視点です。
「……よかった。シアに拒まれてしまったらどうしようと思っていたんだ、あははっ」
「……変なリオ」
「ふふっ、そうかも」
「……断ったらどうしてたの?」
「そんなのもちろん、シアが受け入れるまで説得するつもりだったよ。ふふっ」
知り合って3日経つが、彼女の考えは本当に理解できない。彼女の言動は全て初めて考えることばっかりだ。
「……私が泣き止ませるため?」
初めて会ったとき、「君が泣いているのが心配」と言っていたことを思い出して聞いてみる。
「もちろんだよ、だってもしかしたらまたあの笑顔が見られるかもしれないじゃないか。あははっ」
「……笑顔が嬉しいの?」
「ふふっ、そうだね。シアに笑顔を見ると嬉しくなるよ。すっごく可愛いから!」
もう一度笑って見せて!とでも言うようにシンシアの手を両手で握り込み、キラキラとした瞳で見つめてくる。
……やはり犬という生き物と似ている気がする。
「……ありがとうよりも?」
「うーん、どちらもすごく嬉しくなる……かな。でも、わたしはシアがにこにこ笑ってくれた方が嬉しい。」
……人によって嬉しくなる方法が違うのかもしれない。オリアナはありがとうが好きで、リオはにこにこが好きらしい。
「シアの笑顔が1番好きだけど、ありがとうも好きだよ。……!、にこにこ笑顔でありがとうだったらパーフェクトって感じかも……?」
「……分かった。……にこにこ、頑張るわ。」
「あっはははっ、かわいい。……がんばってくれるのは嬉しいな。けど、大丈夫だよ。シアのことは、わたしがにこにこにするから。」
なんだか心がそわそわする。こんな感覚、2人がいた頃にしか経験がない。
くすぐったいような、ぽわぽわするような感覚。
「……ふふ」
不思議だけれどどこか心地良いそれに、少しだけ口角が上がっていく。
もしかして、この気持ちがうれしい、なのかも知れない。
「……!シア……?!いま、にこにこしたよね……!……わぁ!かわいい……!」
リオはにこにこが好きだと言っていたから、溢れ出る気持ちをそのまま表情にだしてみる。
この気持ちが合ってるかは分からないけれど、自分で考えた答えを言う。
「……ふふ、多分いま、うれしい……と思う。」
シンシアはいつかのリオのように、楽しくてたまらないという気持ちをシンシアなりに全面に表現してみせた。
「……うん、うんうん。……嬉しい、だね。……ふふっ、……シア、かわいい。」
「……ふふ、ありがとう!」
シンシアはリオのように、キラキラとした瞳で誰が見ても破顔しているとわかるくらいににこにこ出来ていると思っている。
……実際はいつもの無表情な瞳に、リオが近くで見つめてやっと分かる程度の光がともり、これまた普段の彼女をじっと見つめていないと分からないほど少しだけ、口角が上がっている。
「……わぁ……!君って本当に、ふふっ……あははっ!……ぜーんぶ初めてなんだね……!」
初めて出会った時からシンシアをじっと目に焼き付けているリオだから分かるくらいの違いだ。
それでも、リオは嬉しくて、おかしくて、可愛くてたまらなかった。
だって、彼女が自分なりに気持ちを伝えようとしていることが分かっていたから。
リオが言った「にこにこ笑顔でありがとう」をしようとしてくれたのだろう。いつかの2人にしていたように。
やけに世間を知らない少女だと思っていたが、ここまでとは。
シンシアほど何も知らない子供は初めて見た。
でも大丈夫、これからわたしが教えれば良い。
「2人がいなくなってから、同じ毎日を繰り返すだけだったから、そう、かも。」
「あははっ……じゃあこれからは、わたしと沢山初めてをしよう。楽しみだね……!何からしよう、ふふふっ。」
いままでに無いくらいワクワクしている。何もかもが初めての少女なんて、長い時を生きているリオにだって初めてだ。
わたしと共に体験してほしい「初めて」がたくさん頭の中に浮かんでくる。突然吹き出し始めた噴水のように、止まることなく溢れ続けている。
「これから楽しみだね!シア。ふふふっ」
「それじゃあ、もう夜も遅いから帰るよ。おやすみ、シア。また明日」
まずはこの溢れ出ているアイデアをリスト化して、全部を実行するにはどうしたらいいかを考えないと。
2人で色々なことをしている姿を想像して、笑ってしまう。
きっと、彼女と過ごす日々はとても楽しいに違いない。
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