318話 EPO配信!_罠術マスター
「出ましたわ、バッファローです」
「はいはい、そう威嚇しなくても見えてるよ」
:入り口が全部城壁で繋がれてるのに見えてるは草
:その左右から水路が伸びてます
:これは完全な嫌がらせ
:状態異常起こさない系のトラップは無効化できないんだっけ?
:そこに見えてるトラバサミですよ
:無効化を慢心してバッファローが飛び込む!
:かかった
:それがただのトラバサミだと思うなよ?
ズドォン!
コンビニに暴走自動車が突っ込んだ時の衝撃がトラバサミの中心から巻き起こる。
「剣豪の味はいかが?」
「おかわりもあるよ!」
「拒否ってもお届けするけどね!」
リノちゃん、お姉ちゃん、ミルちゃんが立て続けにアクションを起こす。
リノちゃんが剣豪で威力を高めたトラバサミに。
お姉ちゃんがボウガンに剣聖で範囲を拡大し。
さらにはミルちゃんがそれらを移動床で搬送するという荒技である。
城壁は私と葉ちゃんで即時に立てながら、水路も引いて視界と移動先を塞ぐ作戦だ。
「しーちゃんのおかげで私たちがヘイトを買うことはないみたい」
「収穫物の気配まで消え失せたのはラッキーでしたわ」
「後でいっぱいご馳走してあげないとね」
しーちゃんには【透明化】を使用してもらった。
満腹度が50%で送還したのできっとお腹が空いていることだろう。
お姉ちゃん達ももう一度ご馳走してやるつもりで、バッファローに仕掛ける。
水牛だから牛肉が取れるって頭から信じて疑ってないみたいだ。この装甲だし、きっと筋張ってて美味しくないと思うけどね。
:ダメージ入ったか?
:わからんけど、全く答えてなさそう
:耐久は減ってるか?
「耐久は10減っておりますわ。全てを無効化するわけではないように思います」
:朗報
:罠術が当たるって一体どれだけ威力積み込んだんだ?
「200入れたかな?」
「あたしは30を3ヒットだぞ」
「あたしは落とし穴と痺れ床を運んだだけだしね」
:攻撃不発と回避ダウンを混ぜ込んで無理に当てたか
:罠術って100%当たったよな?
:でも罠そのものは無効化されてるパターンだろ?
:威力200って命中幾つよ?
:70は引いてるだろうから、30%?
:30を当てられるほど痺れ床を多段ヒットさせた?
:なるほど、状態異常は多段ヒットさせられる?
:これはトキちゃん活躍の時
:バッファローは状態異常無効だけどな
:じゃあダメージ反射を多段ヒットで
:そういえばトキちゃんどっちの城壁取ったの?
:流石にG城壁でしょ
:散々世話になっておいてPは取ってないでしょ
:流石にな
「心配しなくったってG城壁だよ。そこは外せないよね」
「あたしは逆張りだからPにした」
「なんか知ってるミルちゃんの気がしてきた。この先見性の無さ、私の知ってるミルちゃんだ」
「ちょっとリノっち。それはとても失礼な発言だと思う。撤回して!」
「えー、やだー」
:ミルちゃん……
:邪悪さが抜けてポンコツになった感じだな
:邪悪さっていうほど邪悪だったか?
:推定中身ナイアルラトテップだったから
:そんな邪悪な存在に見えてたのかよ
:今のミルちゃんは差し詰めアホの子って感じか
:今まで取ってたトラップの傾向にもよるだろ
:そこは人によるからな
:それに称号ジョブも一回負けたから狙う意味無くなったし
:あれはあれで程よい緊張感があっていいよな
:一回も負けないでって後出しジャンケンされた人の気持ち考えて?
:そのためのやり直しチケット
:称号ジョブ欲しかったら全てのデータを消して一からやり直すか
:課金でステージの記憶消すかなんだよ
:新キャラ作れよ運営ー
:なんでそんな金にならないことをすると思うんだか
:WBOに染まってきた開発だぞ、ここから先はまず最初に軍資金だろ
:やっぱあの人が運営にいる限りそうなるか
:痒い所に手が届く、ヲ心情にしてるからだな
「お父さんにやりすぎないように言っておくね」
「うちのお父様が大変なご迷惑をおかけしていますわ」
娘さんからのダイレクトな謝罪。
軽口を叩いてたリスナーさんは急に静かになった。
:まぁ、嫌ならゲームをやめればいいんだけどさ
:でも実際、言いたい気持ちもわかってよ
「それでも楽しさを限りなく努力して見つけていくのがこのチャンネルの趣旨ですけどね。例えどんなクソゲーでも!」
「お待ちなさい、ハヤテさん。それは少し悪意がありましてよ? 少し告知におぼつかないところがあったEPOですが、ちゃんと面白さは確保しておりましたの」
物は言いようだよね。
EPOはサ終間際のクソゲーだったじゃん。
過去を改竄して少しマシになったけど、それでもところどころクソゲー要素を垣間見せる手のつけられなさが随所に見られるけど?
中でも取得したアイテムがステージごとに管理されてるとか、一体なんの嫌がらせかって思う。
創意工夫しろって押し付けるくせに、サブクエとか秘匿してたし。お金を配る前に、そういう努力をしなさいよって思うのは私だけじゃないと思うんだけど?
それはさておき、このタワーディフェンス型のステージもいよいよ終わりを見せる。
私たちは城壁を張って移動範囲を減らすだけの簡単サポート。
ちなみにもう収穫は終わっていた。
終わった上で、こうやって高みの見物をしているのだ。
最後の収穫もタイミングを見て取り掛かるつもりだけど、お姉ちゃんがハンターを取得していたいというのを知っているから待っているのだ。
解体は多段ヒット系より、一撃必殺系の方が成功率が高い。
お姉ちゃんよりリノちゃんの方が解体回数が多いのが理由だ。
それでもお姉ちゃんだって解体は成功していた。
だから、確率は低いなりに成功するのだと踏んでいた。
問題は威力が低いから、ダメージに判定されないということ。
それでも耐久を半分削ったところでお姉ちゃんがレベルアップ。水路を確保した。
「毒はダメだよ」
「わかってるよ、調理師が毒なんてとるわけないでしょ。ハヤテはあたしをなんだと思ってるのかな?」
この場面で唯一ダメージを与えられる手段だから、即座に食いつくと思ってたよ。ごめんて、そんな睨まないでよ。
「それに、ダメージを与えられなくったっていいもんね。あたしにはこれぞという発想があるんだよね。まぁそこで見ててよ」
お姉ちゃんの勝ち誇った顔。
しーちゃんからの【透明化】は相手見えなくなるけど、同じパーティの全員からは表情までくっきり見える使用だった。
じゃないと味方同士でフレンドリーファイアしちゃうし。
そういう意味では使い勝手最高だった。
:トキちゃん、何か仕掛ける気だ
:俺らにも見えないの配信者としてどうなの?
:立ち並ぶ壁
:じわじわと耐久を削られるバッファロー
:時折爆発するのは多分剣豪
:トラップが自爆特攻するのはミルちゃんの仕事だってわかるだろ
:今まで見てきた場面を想像すれば癖はでてる
:お前らそれでもこのチャンネルのリスナーかよ
:ログだけが残ってるからそれで想像すんだよ
:あくしろよ
:役目でしょ
ノリのいいリスナーで助かる。
「ハヤテさん、余っている収穫物を量産しても構いませんか?」
「何をするつもり? 即時収穫分以外はいいけど」
「無論、切り札の生産を」
:葉ちゃん、まさか
:爆弾を作るんだよ、悪いか?
:だよねー
:そういえばC栄養剤の担い手だった
:それでとどめを指すつもりか?
:でも食べてもらわなきゃいけないんだったよね?
「そこは移動床がありましてよ」
「そっか、あとは相手にぶつけるだけでいいんだ」
「向こうはそれを口に運ぶのがお役目です」
:あくどいやっちゃな
:ミルちゃんから抜けたあくどさが葉ちゃんに移った?
「あら、失礼してしまいますわ。これは戦略です。使わなければ使わないに越したことはありません。最終的に使用するかは皆さんにお任せしますわ」
「なら、ヨシ。お姉ちゃんはハンターの取得を目論んでるから、それの邪魔をしないならいいよ」
「あら、二人目のハンターですか?」
:同じパーティでハンターを取る意味
:しかも魔導書にも記録されてるんでしょ?
:俺なら無理して取得はしないかな
:俺も
「|◉〻◉)実は登録者本人がその場にログインしていないと効果が発揮しないので、僕の権能はそこまで万能でもないですよ」
:まさかの後出しジャンケン
:ログイン状況で変わるのか
:魔導書にたくさん登録させる理由って、そういう?
:魔導書の所持者複数ってなんだよって思ってたけど
:全員いないと使えないのか
:意味ねー
:え、じゃあリノちゃんがログアウトしてたら?
「|⌒〻⌒)使えませんね」
「そういうことですか。では私の幻惑も?」
「|◎〻◎)今消化中です」
「その消化中というのをやめてくださいまし。受け取るのを躊躇してしまいますわ」
わかる。
私も『豪弓』貸し出そうと思ったけど、踏みとどまったもんね。
よく噛んで消化するってイメージ最悪だもん。
そんなわけでC栄養剤で収穫物に爆発効果が乗り移った。
なんとこれ、一回の爆発で耐久の10%を持っていく劇物らしい。
見た目はどこからどう見てもキャベツなのに。
恐ろしいことである。
「これでお料理したら爆発するのかな?」
「わかりませんわ。爆発するほど美味しいのではなくて?」
「もし無事にお料理できたら食べさせてあげるね」
「その時は即座に逃げ出しますわ」
誰も自分を犠牲にしたくないもんね。
「振る舞う相手はもちろん害獣だから心配しなくていいよ」
「あなたの振る舞いのどこからどこまで本気なのかわかりませんわよ」
この呆れ顔である。
まぁね、自分で言っててよくわからないところあるし。
「お姉ちゃん、爆発する収穫物できたから送るねー」
「その収穫物もらっていい?」
お姉ちゃんに向けて発言したのに、横から掻っ攫おうとするミルちゃん。
こういう所は元からなのか。
泥棒根性は最初から持っていたらしい。
「取扱注意だからお姉ちゃん向け。多分衝撃与えたら爆発する」
「こわっ」
ミルちゃんは即座に撤退した。
私たちプレイヤーはダメージを受けても即死はしない。
けれど、一定時間攻撃できなくなるというデメリットを受け持つ。今は【透明化】でヘイトを霧散させてるけど、そういえば効果時間がいつまでとか聞いていない。
行動不能中に状態が切れたら最悪だ。
バッファローの残りの耐久は25%。
ここからは暴走モードになる。
スーパーアーマーによるのけぞり効果がなくなり、それこそ猪突猛進をしてくる暴れ牛となる。
「これ、ちぎっても爆発する?」
「調理師セットしてるなら平気。それ以外は知らない」
私はそれで一旦試した。
お姉ちゃん向けというのはそれが理由だ。
解体師とかではわからない、野菜の構造体。
それを看破できるのは農家だけではないのだ。
食材というジャンルにおいて調理師以上に食材を理解しているジョブはない。
「城壁、3個破壊! 生産が追いつきませんわ!」
「耐久25%から全く削れなくなった!」
「これ回復されてる?」
「耐久30%!」
「回復効果なんてあったっけ?」
「トキっち、急いで」
「トキちゃん、バッファローが最後の城壁壊したよ」
「ダメ、破壊速度が生成速度を上回って!」
一転攻勢。
窮地に追い込まれたバッファローはダメージを回復する術を私たちに見せつける。
そのタイミングで、私たちの【透明化】に綻びが出てきた。
全ての状況がお姉ちゃんに負荷をかける。
「おっし完成! ここから打って出るよ」
けどお姉ちゃんは間に合った。
:ああ!【透明化】が解けた
:全員にヘイトが分散!
:バッファローくんが興奮状態!
:水路を物ともせず突進を仕掛けてきたぞ!
「お腹が空いてるよね。ずっと痛い思いをしてきたんだもん。当然の権利だよね。だからこそ、君はそれを拒めない」
お姉ちゃんは目の前にクラッカー処理を施した収穫物を調理したものを取り出す。
しかしそれは2段の木箱によって上空へ。
お姉ちゃんはすぐさま後方にジャンプ。
G城壁を木箱のすぐ真後ろに設置した。
まるで突進を誘発するような動きである。
:バッファローくん、罠破壊を使って木箱を撃破!
:待って、様子がおかしくない?
:バッファローくん弱ってる
「あたしとリノっちの共同作業!」
「木箱の下に痺れ床!」
「トラバサミもあるよ!」
「落とし穴も持ってけ!」
:トラバサミは効かないんだよな
:あ、これ突進させるためにさらに二本の水路で覆ってる
「それは私の仕事だね」
「反対側から同じように囲っておりますわ」
:バッファローくん収穫物までまっしぐら
:その度に反射ダメージ
:そういえばトキちゃんは?
:木箱積んで高台で弓を構えてるよ
:弓、なんで?
:解体する気でしょ
:まさか耐久調整をさっきのトラップでしたの?
:だったら熱い
:解体チャンスを逃す気はないってか
耐久は20%、10%、最後に食いしばりで1%まで減って。
「ごめんね、君のお肉は美味しくいただくから。Wクラッシュホーミング」
G城壁をスラッシュで砕いてから『剣聖』で範囲とヒット効果を付与。それにWクラッシュ効果を載せて、ホーミングを放った。
一撃一撃は大した効果はない。
普通であれば致命打になり得ない一撃だ。
だがお姉ちゃんはこれにPシャドウでバフを重複させていた。
P精神統一とWフラッシュ。
トータルで威力を20加算。
Wクラッシュの初期威力が30の3ヒット。
バフを加算して威力50。
剣聖で威力を落として40だが、範囲が前方横4列、縦6列で6ヒットする出鱈目なダメージ計算。
その攻撃範囲は、バッファローの移動力を余すことなくカバーしきり、最後の一撃を見事に決めた。
だが問題は討伐ではなく、解体にある。
:なんかバッファロー最後の最後で消えなかった?
:討伐したのはわかるけど
:判定が怪しいな
「解体、成功!」
「おめでとう、お姉ちゃん」
「ついでにレベルアップ」
「私もしたよ」
「罠術はコンビネーションが命ってことだね。あたしも無事レベルマックス」
全員が無事レベルマックスに到達したようだ。




