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Atlantis World Re:Diverーバグから始めるVRMMOー  作者: 双葉鳴
【ミルモの章】8/4【火】WBO、EPO_配信5日目

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304/321

304話 EPO配信!_酒場クエスト⑤

「さて、本題の前に口直し。皆様には今からこのドリンクを飲んでいただきます」

「次から次へと尽きないな。これも売り込み商品か?」

「大した商品ではありませんので、売り込む必要もないでしょう。気に入ってくれたらラッキーくらいの代物です」

「ではいただこう。うむ、これはバナナか? ずいぶんと飲みやすい。口の中の脂分がだいぶすっきりしたな」

「それはよかった。これからたくさん食べてもらうので、口直しは必要かと思いまして。まずはうさぎからいきましょうか」

「あっさりした味わいで女子供が好きな肉だな。男はやっぱりガツンとしたイノシシを好むな」

「その固定観念を覆してあげますよ」


 まずはそのまま火入れをする。

 ジュワジュワと油が弾けるタイミングで焼肉のタレに浸した。

 浸すこと10秒ほど。

 油が出た肉に冷えたタレがよく染み込んだ。


 またも焼き台に戻し、火入れ。

 

「先ほどの味噌とかいう腐った豆よりは薄い色味だな」

「流石、気付きますか。これは醤油と言って味噌の上澄味の汁を使用しております。発酵食品独特の臭みは伴いますが、香ばしさも付与して夜深い味わいが楽しめます。そろそろいいでしょう。では代表してバイエルさん、試食お願いします」

「まぁ、味見するとは言ったからな」


 クマと味噌の相性を超えるのかね?

 バイエルさんの表情はうさぎ肉なんて何をどうしようとも薄い味にしかならないだろうという諦めの感情があった。

 しかしタレに浸して香ばしく焼き上がった串からはなんとも言えない香ばしさがたちのぼり、咀嚼すればまた違う反応が出た。


「おいおい、嘘だろ。これがウサギだってのか。シカどころじゃない、臭みを消したイノシシに勝るぞ」

「ウサギがイノシシに化けるだって? ちょっと食べさせてくれ」

「はいはい、押さないでくださいね。バナナスムージーもよければどうぞ」

「そっちも気になるな一杯くれ」

「こっちもだ」

「お姉ちゃん、スムージー追加」

「はーい!」


 私の出したブレンダーは現れてお姉ちゃんがバナナスムージを追加で生産してくれる。

 葉ちゃんのお手製のコップに注いでからリノちゃんがウェイトレスよろしくて私で渡していた。


「これもうまいな」

「ああ、口の中のすっきり感がやばい。正直満腹だと思っていたが、これはまだまだ入りそうだ」

「ウサギ串一丁」

「お、キタキタ」

「さて、どう化けるか」


 討伐隊のメンバーが順に串を食べる。

 最初は目を瞑って味を確かめるように。

 しかし咀嚼した後は串の肉が消えるのは一瞬だった。


「あはは、そんなに急いで食べなくたっておかわりはありますから」

「なんだこれ、ウサギ肉ってこんな美味かったっけか?」

「もっと淡白な味わいだと思ってたが、これは驚きの変化だな」

「オードブルどころかメインに行けるぞ」

「いやはや、大した変貌ぶりだ」

「これはヘブもどう化けるか見ものだな」

「さっきまでお腹いっぱいだった人の発言とは思えませんね」

「全くだ」

「こんなに腹一杯になるまで飯を食うことなんてなかったからな」

「今日、自分の限界を越えられる気がするぜ」


 そのあとはリスナーさん向けに『フリマ』で販売を始める。

 基本物々交換のフリマでは、爆速で消化される解体済みのお肉の半分を焼いて返す商売を始めたら飛ぶように売れた。

 意外と『解体師』撮ってる人が多くてびっくりした。


「みんなハンター狙いかな?」

「多分」

「もうフリマで全制覇できるんじゃない?」

「全部のお肉を美味しく食べられるタレができたらいうことないけどね」

「ネズミもキツネもオオカミも食べるの?」

「食べる人は食べるんじゃない?」


 解体師というジョブが確立されて日は短い。

 けれど皆がこぞって入手したおかげで、酒場クエストに参加するプレイヤーは多いように思う。

 私たちの配信に集まってくれたプレイヤーも含めて、可能性の輪を広げられたのなら本望だ。


「嬢ちゃん、このタレは定期的に卸してくれるのか?」


 そうだよね。最終的にはそこに行き着くのだ。

 今回私が『調理師』ではなく『商人』として立ち回ったのも、結局ここに行き着く。


 もしこれが私の発案したものなら、定期的に作ってくれとそれこそ毎日頼み込みにくる。

 けど商品ならば、話が変わってくる。


 独自ルートを独占する商人。

 それが希少な素材を投げ打ってたどり着いた商品だ。

 入手困難と言われて仕舞えば元も子もない。


「そのことですが。実は結構貴重な素材を投入しているのと、発酵食品は結構時間をかけますので」

「そこまで定期的には難しいと?」

「はい。そのものをもう一度取り寄せるとなると、数年はかかります。今回の食いつきを見るに『商品』としては大成功と受け取ってよろしいですか?」

「ああ、問題ない。それにいろんな肉を食べ比べてみたくなる味わいだった。だからこそ定期的に欲しくなる。これの入手が難しいというのはこちらも失念していた」

「ですが、これを模倣することはできます。確かに‘味噌や醤油などは今すぐには手に入りませんが、肉を柔らかくする分解酵素はこの近辺でも取れる食材を使っておりました」

「ほうほう。内訳を俺たちに話してしまってもいいのか?」

「提供しておしまい、じゃ儲けになりませんから。もしかしたらここが第二のミソの発祥地になるかもしれませんしね。私としても入手ルートは多いに越したことはないですし」

「嬢ちゃんもしっかり商人だな」

「はい。ですが独占してばかりじゃ信用を失います。ですので判明している情報の開示もやむなしです」


 私はミソ、醤油、生姜、ニンニク以外のレシピを書き記した。


「あの酸味は木苺か。それにバナナも入っていただって?」

「シナモンというのはなんだ?」

「独特の香りを持つ木の皮です。それを粉にしたものですね。この開拓村ではあまり見かけませんがクマの生息地に生えていますよ」

「それこそハンターの仕事ってわけか」

「あのほんのりとした甘味は蜂蜜ってやつなのか」

「クマの好物なので、持っていると狙われるかもですね」

「おいおい、おっかないこと言うなよ」


 素材のエピソードで盛り上がり。

 シカ肉の臭み消しもネタバレする。


「すっかり味噌や醤油の味に慣れちまった後に鹿の臭み消しを教えられてもな」

「でもなくなったらまたその味に逆戻りですからね」

「違いない」

「またあんたの持ってくる商品が来るまでの繋ぎだ」

「そう言ってくれたら嬉しいですね。私もミソの素材となる材料を探して歩いてみます。この辺はまだバッファローの生息地しか歩いてませんが、もしかしたら他の上位が移住の生息地にひっそり生えてるかもしれませんし」

「何から何まですまんなぁ」

「いえいえ。私は好きでやってることなので。この独特で臭みの強いミソ。みなさんに気に入られて私も本望です。正直、匂いで引かれると思ってましたから」

「ははは」

 

 バイエルさんとしては猪の肉を焼いてそのまま食うよりはマシと言うお墨付きをいただいた。

 そして、残りのタレをバイエルさんに託す。


「いいのかい、残りをこんなにもらっちまって。貴重品じゃなかったのか?」

「ここで新たな酒場を作ると聞きました。なのでこれはこの酒場のメインになる商品として献上します。今度顔を見せに来たときにでも串肉を振る舞ってくださいよ」

「その前に全部食っちまうかもだぞ?」

「だったらその時はこの酒場で新たに模倣したタレを味合わせてくださいよ。それが売れそうなら買い取りますし」

「商売上手め」

「商人ですから」


:うまいな

:本当にハヤテちゃん中学生なの?

:これは人生二周目ですわ

:これで寝たきりは無理があるだろ

:これ調理師だったら引き止められてタレ製造マシーンにされてたな


「そうですねー、私としてはそんな暇はないので今回は『商人』としてロールしました。それなら『マッチ』とかそう言う商品に対しても『商品』で説明つきますし」


:ブレンダーは難しいな

:当たり前のようにハンドブレンダー使ってたもんな

:あれは再現難しすぎ

:俺も幻想装備欲しいわ

:AWOで魔導書持ってどうぞ

:AWO初めてみるかな


「でもこれって『たれ』と言う商品を下地に『料理』そのものの発展を手助けしてるよね」


:どう言うことや?

:時ちゃんが急に真面目に話し出した


「何それー? あたしだって真面目になる時あるもんね」

「お姉ちゃん、正解。この世界の調理そのものに、下味という概念を持たせることが今回の本質だよ。肉って切って串に刺してそのまま焼くのがこの時代の料理なところあるじゃん? けどそれだけじゃないですよー、調理はもっと奥深いですよーってそこはかとなく教えてあげたんだ」


:あ、そういうことか

:どういうことだ?

:まず俺たちが提示したレシピって下ごしらえをする前提のものが多い

:まぁな

:塩胡椒振って揉み込んだりか

:下茹でして余計な油分を落としたり?

:それが前提なところあるな

:でもこのステージの飯って下味だけで完成してるんだ

:は?

:それは暴論だろ

:下味だけで完成ってなんやねん

:いや、文明的には仕方ないかもだけど


「いい線ついてますね。例えばこの時代、卵は茹でたら一品。そこに塩を振るとか、マヨネーズをかけるとかそういう発想がない。調味料そのものがないとは言わないけど、乏しいからこそ無駄遣いしない概念がある。でも、今回タレという調理として完成しているものに新たに漬け込むことで臭みを消して旨みをたす存在を投入した。これらを知った人はこれから今までの料理の画年に疑問を持つようになる。茹でたじゃがいもに、バターをかけたらうまい、とか。そこに醤油を垂らしたらご飯が進むとか。そういう発想を持ってもらうための下地としてタレだけを実装してみたんだよね」


:そんな壮大な計画だったのか?

:いや、でも今後レシピ納品する調理師の後追いになるな

:商人は今すぐに酒、ニンニク、生姜のルートを抑えろ

:これは早い者勝ちですわ

:焼肉のたれなら素材集めりゃ簡単だから調理は任せて

:その前に解体師募集! タレがあるうちに納品しまくろうぜ

:だな、完全に目の色変えてるし、小物でも引き受けてくれそうだ

:ハヤテちゃん、たった一手で完全にこのクエスト乗り気じゃないプレイヤーまで焚き付けたぞ

:完全に商人なんよ

:流行を生み出すってこういうことか

:相当無茶したけどな

:幻想装備とかいうズルを使ってのチート

:でもこれを呼び水にして他のジョブにまで旨みを提供してたな

:さすが私の信徒です

:お、イグニス様や!

:お久しぶり!

:イグニス様のみる目がここで発揮されましたね

:ええ、おかげで鼻が高いですよ


「さて、お祝いムードもここらでおしまいですね。配信活動終了のお時間です」

「え、もう?」

「むしろ結構もった方ですわね。剣術と弓術をマックスにした上で、さらに酒場クエストの商品提供まで完遂。明日もEPOで遊ぶとはいえ、流石に大判振るいすぎませんこと?」

『今回は葉さんが素直になる過程も見れましたし、私は満足です』

「もう、姉様まで」

「あははは」

「葉ちゃん、すっかりハヤテにお熱だね」

「頭が痛いという意味では間違っておりませんわ」


 それは否定の意味でだよね?

 結局素直になっても根っこの部分は変わらないか。

 まぁわかってたけど。


「そんなわけで、今日の配信はここまで!」

『本日は配信にお越しいただきありがとうございました。ナレーションの紅と』

「ハヤテと」

「トキとー?」

「リノ」

「葉の提供でお送りしましたわ」

「またねー」


:おつ!

:乙乙

:|◉〻◉)ノまたねー

:次の配信も楽しみですね

:そういえばイグニス様ずっとこっちだけど大丈夫なの?

:本体はWBOに存在しているので何も問題ありませんわ

:そういえばレイちゃんハンターのジョブ返した?

:|⌒〻⌒)……|◎〻◎)!

:あ、これは返してないな

:頼む、レイちゃん、このまま夜もログインしててくれー

:|◉〻◉)ノバイバーイ

:あ、逃げたぞ!

:追え!

:囲んで逃げ道を塞ぐんだ!

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