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ヨット部員の日々  作者: 原西夏生


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4/8

第3話 合宿生活

練習>

入部後、しばらくすると早朝練習が始まる。

2・3年生のスキッパー候補と新入生クルーの操艇練習である。

♪朝も眠いのに起こされて~

朝食後、普段の練習となる。

昼食を挟んで午前、午後それぞれ3時間ほど。


練習海面までマークボートを引いていき、乗艇する上級生のホイッスルの合図で基本練習を行う。

ピッピッピッピッー:練習開始。

ピッピッー:クローズホールドで風上へ。

ピッ:タック(何度も繰り返す)

ピッピッピッー:ランニングで風下に。

ピッピッピッピッ:ジャイビング(何度も繰り返す)

ピッピッー:クローズホールドで風上へ。

ひたすら繰り返す。

この間、風と波を相手にしているので油断できない。

強風時のジャイブでは、沈(ちん)の危険もある。

大会の前には、スタート練習も行う。


練習終了後、浜に帰って艇の整備を行った後、夕食。

その後、やっと自由時間となる。

合宿中は、およそこのような日課だった。


4年生の気が向いた天気の良い日、ピクニック気分で西に向かったり、東にある川上りをしたこともあった。

その2回だけだったけれど。。。

楽しかった。


整備休憩>

練習中、艇整備のための休憩がある。

A級ディンギーでは、艇の底に溜まったアカクミが主になる。

このとき、底に揺れるアカを見ながら作業すると、即! 船酔いする。

遠くの陸地を見ながら、小さなバケツで手早く、ガバガバとアカをかき出す。

その後、セルフベラが取り付けられてからは、この作業もなくなった。

帆走すれば、アカは自動的に排水される。


立ちション>

休憩中、艇尾(スターン)から立ちションする。

波に大きく揺られるので、最初の頃は緊張するあまり、出ない!(これマジ本当)

スナイプに乗ったときは、スターンが平らなデッキなので、落ちないようにバランスをとるだけでも緊張する。

ますます出ない。

中には、うっかり海に落っこちた者もいた。

立ちションできるようになったら、フレッシュマン卒業といえる。

数年後、他校の女子部員を見かけるようになったが、どうしていたのだろう。。。

ガマンしすぎると体によくないと、どこかでで聞いた。


ウンコ>

したことない。

聞いたこともない。


タバコ>

水濡れから守るため、昭和レトロなプラケースに入れていた。

大波ザブザブのときは、全滅のこともあった。

かんべんしてくれろ。。。


服装>

春先の寒い時期は、Gパンや手近にあるズボン、シャツなどを着て上にセーター。

ライフジャケットの出っ張りが邪魔にならないよう、さらにセーターを重ね着する。

最後に昔ながらのカツオカッパの上下を着るが、尻はすぐに破れてビリビリに裂ける。

ガムテープで補修しても同じこと。

強風のときは、頭から波しぶき(スプレー)を被ってずぶ濡れになる。

足元はスニーカーだが、学連の指導があるまでは裸足(はだし)だった。

当時は、これが当たり前だった。

「お前らそろそろ、野蛮人から卒業しろよ」

ふん、余計なお世話じゃ。。。

お陰で4年間、風邪など無縁であった。


食事>

部員は、艇庫の2階で起居する。

1階に狭い台所があるが、入部当時は、近所の「めし屋」に合宿中の世話を頼んでいた。

疲れた顔のおばさんが、一人で営んでいた。

米は持参していた(とおもう)

食事時間には、下級生が調理場に入り込んで、おばさんの手伝いをする。

狭い調理場は、シッチャカメッチャカ。

洗い場は、あらあら食器が山となっている。

ガラの悪い先輩は「〇〇メシ」などと呼んでいたが、おばさんはよくしてくれた。


1年ほどたって、艇庫で自炊となった。

部費滞納者が多くいた結果であると、想像に難くない。。。

朝食は、ごはん、生卵、みそ汁。

あとは、何を食べていたか思い出せない。

貧しいメニューだったのだろう。

でも、文句言わずに食べた。

・・・お前なんぞ、あったりまえだろうが!

なぜか食事当番の記憶がない(ウロ)

皿を洗った覚えもない(ウロ)

先輩の車を勝手に乗り回して、事故寸前の危ない橋を渡ったことはある。

無免許だった。。。


風呂>

薄汚れたシャワー室はあるのだが、物が置いてあったりしている。

水は出たようだったが、使用したことはなかった。

ときには、銭湯に行くこともあったが、普段は皆ズボラで無頓着だった。

練習中に、散々波しぶきのシャワーを浴びてるし。。。


夜食>

就寝後、夜中に同期の相棒がチョンチョンと指で突いて起こしにくる。

1年先輩と僕たち二人は、艇庫のベランダから電柱を伝い降りる。

1kmほど歩いて国道に出ると、夜中に開いている屋台があった。

そこまで、裸足(はだし)で歩いていく。

パトロールに出会ったら、職務質問確定の薄汚い怪しげな3人組。

チャーハン、ラーメン、馬かった牛まけた。

先輩には、何度もゴッチャンになった。


授業出席>

合宿中は、必須科目に限り登校が認められていた。

初夏にもなって、私たちが電車に乗り込むと、乗客たちの好奇な視線を浴びる。

真っ黒に日焼けしたこいつら、一体全体何者だ???

そんな視線の中、ターミナル駅のホームまでは行くのたが、、、

同じクラスの相棒と「授業どうする?」

キリギリスの誘惑に負けて、1年留年となった。


ある時、途中で相棒の忘れ物を取りに自宅まで付きあった。

居間のソファーで待っていると、在宅していた彼の姉さんが紅茶を入れてくれた。

突然、「アンタ、何!その手は!?」

てっきり、汚れた手で上がり込んだので怒られたと思った。

なにせ、合宿中に手など洗う習慣などなかったし、気にもしていなかった。


ビックリして手をみると、、、

日焼けした手の甲は、塩を吹いて白い曼荼羅(まんだら)模様になっている。

その上に、整備のとき不注意で切った傷の血が固まって、幾筋もこびりついている。

ありゃりゃ!?

あらはずかし、隠そうとしたがもう遅い。


ボーッと手を見つめていると、

「洗面所で洗っておいで!」

石鹸で洗った後。タオルを汚すのもマズイと思いシャツで拭いた。

部屋に戻ると、薬箱を出して消毒してくれた。

恥ずかしさで言葉が見つからず、この間ずっと無言だった。

スミマセンくらいは、言ったと思う。。。

嬉し恥ずかし、ああ青春恋心。

日曜日の夕方に合宿が終わると、私たち1年生は荷物を抱えて、皆で駅まで歩いて帰った。

むさ苦しい男所帯の合宿所から解放され、足取りは軽かった。

途中すれ違う女性たちが、みんな美人に見えた。

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