心願成就(中編)~誕生プレゼント
もう直ぐママの誕生日だ。
素敵なプレゼントを贈りたいけど、僕にはお金がない。何か手作りのものを贈ろうかと思ったのだが、僕は不器用で上手につくることができなかった。
そんな時、お願いポストの話を聞いた。
――駅前の商店街にお願いポストというものがある。古い郵便ポストで、願いごとを手紙に書いてポストに入れると叶えてくれる。代わりに、大切にしているものを差し出さなければならない。
そういう話だった。
困った。僕には願いを叶えてもらう代わりに差す出すことが出来るようなものがない。僕が今、一番、大切にしているものと言えば、
――エースマンのバッジだけだ。
エースマンはキング星から宇宙の平和を守る為にやって来た超人だ。空から、海から、そして地下から現れる怪獣たちと戦い地球を守ってくれる。エースマンと共に怪獣たちと戦う地球自衛軍の隊員、ゲンタ隊員がエースマンの正体だ。怪獣が出現し、危機が訪れた時、ゲンタ隊員はエースマンに変身することができる。
お菓子メーカーが「エースマン」人気にあやかり、「エースマン・スナック」を販売している。「エースマン・スナック」を買うと、エースマン・カードが一枚、ついて来る。基本、怪獣たちのカードなのだが、エースマンのカードが出るとラッキーだ。更に、スペシャル・カードがあって、それが当たると、地球自衛軍のピンバッジと交換することができる。
「エースマン・バッジ」と呼ばれている地球自衛軍の隊員の胸に輝く地球自衛軍のバッジは皆の憧れだった。
僕は、幸運なことに、初めて買った「エースマン・スナック」でスペシャル・カードが当たった。皆が欲しがっている「エースマン・バッジ」を持っていた。
お願いポスト様。
もう直ぐママの誕生日が来ますが、僕にはプレゼントを買うお金がありません。お願いです。ママが喜ぶプレゼントをください。代わりに一番、大事なエースマン・バッジを差し上げます。
放課後、手紙を持って商店街に行った。
ポストの場所は分かっていた。前に一度、友だちと見に行ったことがあったからだ。流石に一人だと気味が悪かったが、勇気を振り絞って、僕は薄暗い路地を歩いた。路地の突き当りにぽつんとポストが立っていた。お願いポストだ。
持って来た手紙を投函した。そして、
――お願いポスト様。僕の願いをかなえてください。
とポストに手を合わせて祈った。
帰り道、商店街を歩いていると、「しんがんじょうじゅ~」とアナウンスが流れて、びっくりした。「しんがんじょうじゅ」って何だろうと思った。
家に戻ると、机の引き出しに仕舞ってある宝箱に入れておいた「エースマン・バッジ」が無くなっていた。
お願いポストが僕の願いを聞いてくれたのだ。
翌朝、起きると、食卓にママが座っていた。
「どうしたの?」と聞くと、ママが不思議そうな顔をして、「朝、起きたら、こんな箱がテーブルの上に置いてあったの」と答えた。
「箱? 何が入っているの?」
「とっても高価なバッグよ」
「へえ~良かったね」
「あなた、この箱のこと知らない?」
「今日はママの誕生日だろう。神様がバッグをプレゼントしてくれたんだよ」
「そんなこと・・・」
ある訳がないと思っているのだ。
「嬉しくないの?」と聞くと、「気味が悪い。誰かが寝ている間に部屋に入ったみたい。警察を呼んだ方が良いのかしら・・・」とママが困り顔で言った。
「バッグはどうなるの?」
「それは・・・警察が証拠として持って行くことになるんじゃない」
そんなことになれば、お願いポストに頼んだ意味が無くなってしまう。
「実はね――」と僕はママに事情を説明した。
お願いポストに手紙を書いて、ママに誕生プレゼントを贈りたいと願い、その代わりに「エースマン・バッジ」を差し出したことを。
ママもお願いポストのことを知っていた。
「本当に・・・そんなことがあるのね」と驚いていた。
ママが言った。「ありがとう。ママはね、あなたの気持ちだけで嬉しい。誕生プレゼントを贈りたいという気持ちだけで十分。高価なバッグなんてママには似合わない。だから、もう二度とこんなことをしてはダメよ」
「うん」と僕は頷いた。
「さあ、朝食にしましょう。今日はママの誕生日だからケーキを買って帰る。学校から帰ってから、一緒に食べましょう」
「うん!」
やった。今日のおやつはケーキだ。




