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世にも不思議なショートショート  作者: 西季幽司
不思議な話・その五
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修学旅行

 町の上空に巨大な未確認飛行物体が現れた。

 UFOだ。楕円形をしており、先端部分に触覚のような長い角が生えている。見た目はまるで、


――空に浮かぶ巨大なゴキブリ。


 だった。

 突然、上空に現れたかと思うと、制止したまま動かなかった。

 世界中から大勢の人間がUFOを見物する為に町にやって来た。

「危険ですので、屋外に出ずに、なるべく家にいてください!」と市役所の宣伝カーが警告を発しながら走り回った。

 宇宙船には地球を侵略にやって来た宇宙人が載っているのかもしれない。外に出るのは危険だった。

 不気味なUFOに、町から出て行く住民もいた。

「彼らは、我々と友好を結ぶ為にやって来たのだ!」と叫び、輪になって手を繋ぎ、UFOとテレパシーでコンタクトを試みる団体が現れた。

 彼らは警察の警告を無視して、野外で輪になって手を繋ぎ、「宇宙の友よ~我々の言葉に応えよ~」と呪文のように唱えながら踊り狂った。

 だが、UFOは空に浮かんだままだった。

 対応に困った政府は自衛隊を出動させた。

 軍隊が町にやって来て郊外の山裾に布陣し、UFOの動向を見守った。だが、UFOはただ空に浮かんでいるだけで、何の反応も示さなかった。


 学校が休みなったのは良いが、外に出ることができないのには困った。遊びに行けない。二、三日は家で大人しくしていたが飽きて来た。UFOは上空でじっとしたまま動かない。ちょっとくらい、遊びに出ても大丈夫だろう。

 うちは共働きで日中、両親は家にいない。

 僕はナッ君を遊びに誘ってみた。

「退屈で死にそうだ~」

 ナッ君も外に出たがっていた。

 他にも声をかけると、サトウ君とショウ君が「行く、行く」と言う。皆、家で退屈していたのだ。僕ら四人は近所の公園に集合することにした。

 公園に集まり、「しょうでこ」で遊び始めた。地面に安全地帯と離れ小島を書き、鬼を決めて逃げ回る遊びだ。夢中になって遊んでいると、見知らぬ男の子が三人、ふらりと公園に現れた。そして、僕らの遊びをじっと見つめていた。

「誰だろう?」

「さあ。見たこと無い顔だね」

「家にいるのに退屈して出て来たんだろうね」

 隣の学校の子供たちだろうと思った。

「一緒にやる?」と声をかけると、三人は「うん」と飛んで来た。三人はアル、セム、タヌと名乗った。変わった名前だ。


――外国人なのだ。


 と僕は思った。

「しょうでこ」は人数が多い方が面白い。ルールを説明すると、直ぐに理解した様子で、僕らは一緒に遊び始めた。

 夢中になって遊んでいる内に、陽が暮れてしまった。

「そろそろ帰らないと、親に怒られちゃう」

 サトウ君が言い出した。

 アル、セム、タヌの三人の子供たちは、まだ遊び足りない様子だったので、「じゃあ、また明日、ここで一緒に遊ぼう」と約束して、僕らは家に戻った。


 政府の閣議決定により、自衛隊の戦闘機をスクランブル発信させ、宇宙船の様子を窺うことになった。

 領空より退去を求め、応じない場合、最悪、攻撃もあり得る――とニュースは報じていた。


 翌日も僕らは一緒に遊んだ。彼らは二人増えて五人になっていた。

 ショウ君が家を抜け出して来ることが出来なかったので、こちらは三人、計八人で遊んだ。

「ねえ、君たち、どこの子?」と聞いてみた。

 セムが人差し指を立てて空を指差した。

「どういうこと? 空から来たの?」

「うん」とアルが頷く。

「空には、あのでっかい宇宙船がいるだけだけど、そこから来たの?」と聞くと、また彼らはまた「うん」と頷く。

 僕は思い切って聞いてみた。「君たち、宇宙人なの?」

「うん」とタヌが頷いた。

「宇宙人? 本当? 僕らとそっくりじゃない」

「驚かせていけないから、君らにそっくりな姿をしているんだ」

 本当はどんな恐ろしい姿をしているのだろうか。

「言葉だってしゃべっているし」

「翻訳機を使っているんだ」

 翻訳機なんか見当たらない。体の何処かに埋め込まれているのだろうか。

「ねえ。君たち、宇宙船でやって来て、何をしようとしているの? 僕らの星を侵略するの?」

「まさか」と彼らは笑うと、地球に来た訳を教えてくれた。

 彼らは一生の大半をマノエとして過ごす。地球の時間で何百年という長い、長い時間をマノエとして過ごすと、やがてハルムとなる。ハルムとなった彼らは、慌ただしく交配を行い、子孫を残すと死んで行く。

 そう蝉の生態とそっくりなのだ。

「生まれて暫くは君たちの学校のようなものに、僕らも通うのさ」

 学校を卒業する際に、学習の一環として、よその惑星に旅をすると言う。よその惑星を見て、見分を広め、知識を深めるのだ。

「修学旅行⁉」と僕が言う。

「修学旅行がどんなものか知らないけど、きっと似たようなものだと思う」とアルが頷いた。

「へえ~」とナッ君が驚いた顔をした。

「楽しかったけど、騒がしくなって来たから、そろそろ次の場所に移動しなければならないんだ」とセムが言う。

「また来る?」と聞くと、タヌが「地球に来たのは初めてだけど、楽しかった。『しょうでこ』は僕らの星で流行ると思う。次の卒業生が就学旅行に来る際の、訪問先の候補のひとつになると思う」と言う。

「そう」と僕が顔を輝かせると、「でもね、次の卒業生が来るまで、地球の時間で何百年もかかる。それに修学旅行の候補地は多いから、地球に来るのは、次の次かもしれない。いつになるか分からない」とアルが悲しそうに言った。

 もう彼らに会うことはないだろう。

「楽しかったよ」、「君たちに会えて良かった」

 僕らは固い握手を交わして別れた。


 自衛隊の戦闘機が宇宙船に近づいた、その瞬間、かき消すように宇宙船が消えた。一瞬で瞬間移動してしまった。

 宇宙船が消えた後には、青空が広がっていた。

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