#28 そういう性格だよな
しっかりと璃祢は自分の気持ちを全て話した。
時計の針の音と、璃祢自身の心臓の鼓動が大きく聞こえた。一分が五分にも数十分にも感じられる。思わず璃祢は固唾を呑んだ。気づかないうちに震えていたようで、手の中のカップに白い波紋が広がっている。
再び床に座っていた絢斗はしばらくの間、何も反応を見せなかった。
それが更に璃祢に不安を抱かせた。やはりダメなのかもしれない。先輩後輩の付き合いと、恋愛感情が入り混じった関係では全く違うものだ。
(やっぱり僕は、そんな対象に見られてなかったんですよね……)
「ったく、鈍感もいいかげんにしろよな」
「え?……絢斗先輩?」
ベッドに座る璃祢のとなりに腰掛け直した絢斗は、そのまま璃祢を抱き寄せた。危うくホットミルクをこぼしそうになり、慌てて両手でしっかりと持ち直した璃祢は、すぐ近くにある愛しい人の存在に胸を高鳴らせた。
「絢斗先輩危ないです」
「うるせぇ、こぼすなよ」
「むぅ……あの……お返事聞きたいです」
「つかあんだけ抱きついたりキスしたりしてて、その上返事も必要か?そういう下心あった行動ってわかんねぇ?普通」
「ちゃ……ちゃんと言葉にして欲しいです」
「お前が好きだ……で、いいか?」
「ときめき要素の欠片もないです」
「そういうお前の言葉が台無しにしてるんだろ。もう言わねぇから」
「やです。あのちょっと離してください」
「あ?」
不機嫌な声を出しつつ、少しだけ体を話した絢斗。こぼす危険性のあったカップをテーブルに置いた璃祢は、今度はしっかりと絢斗の背中に手を回して抱きついた。「スリスリ」と絢斗の肩におでこを擦りつけている。
「絢斗先輩……」
「あ?」
「お腹すきました」
「お前……そういう性格だよな」
「ホットミルクじゃ足りません」
「今シチューの具材煮込んでるから待ってろ」
「人参さんは?」
「たっぷり入れてやったから心配いらねぇよ」
「ポイしてください」
「ざけんな。ちゃんと食わせてやるから安心しろ」
(そ……それは楽しみのような……でも人参さんはいらないような……)
複雑な気持ちを抱きつつ、璃祢はしばらく絢斗の腕の中にいた。
いつもよりも穏やかで幸福そうな笑顔を浮かべて――――
これにて完結になります。
たくさんの方に読んでいただいていたようで
少しでも楽しんでいただけていたら幸いです。
正直不完全燃焼というか、泰明のネタばらしシーンは思っていた設定がじぶんでもよくわからなくなるという……正直あれでいいのか悩みどころがありますが
それでも思い描いていたストーリーに近いものが出来上がったので、良かったと思います(´∀`)
今まで本当にありがとうございました(*´∀`*)




