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【完結】なぜか悪役令嬢の私が守られている!?  作者: しのギドラ
最終部

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38話(エピローグ)婚礼前の時間

 学園を卒業した、あくる日。

 私は今にも腰が折れてしまいそうなほどの、重みに耐え抜いていた。


「お、重い……! この国の正装が、ここまでの重量だとは思わなかったわ……!」


 今まで鍛錬で培ってきたはずの私の肉体ですら、この衣装が放つ重圧感に音を上げそうだった。

 何重にも重ねられた滑らかな生地と、きつく締め上げられた帯は、もはや優雅なドレスというより一種の試練だ。


「どちらかと言うと中華風の華やかさかしら……でもこの重厚感は和風の十二単……!?」


「ちゅうかふう……? わふう……? ジゼル様、大丈夫ですか?」


 この日のために駆けつけてくれたリリアが、心配そうに私の顔を覗き込んでくる。

 私は慌てて体勢を整え、今の自分にふさわしい優美な笑顔を取り繕ってみせた。


「な、何でもないのよ、リリア。私たちの婚礼のために遠路はるばる来てくれて本当にありがとう……すっごく嬉しいわ!」


「ジゼル様のご結婚のためなら、どこへだって駆けつけます! 今の私があるのは、すべてジゼル様のおかげなのですから……!」


「うん、その気持ちは嬉しいのだけれど。……ただ、あなたの隣に並んでいる人がね……」


 私は、リリアの隣に当然の顔で佇む王太子を、不満げに見上げた。

 私の視線を受け止めたルドルフ殿下は、不敵で余裕めいた笑みを浮かべてこちらを見下ろしてくる。


「何だ、リリアが正式に私の婚約者となったことがそんなに気に食わないのか?」


「不満だし、不安に決まっているでしょう!? あなた、大勢の前でリリアへ婚約破棄を突きつけた前科があるのですから……!」


 私はルドルフ殿下へ、不敬と知りつつも腕を組んでジロリと睨みつけた。

 あの激動の夜会で、立ち消えたと思っていた二人の縁談。

 まさかここへ来て劇的な復活を遂げ、正式な婚約者として結ばれることになろうとは。


「リリア! 本当にルドルフ殿下でいいの!? もしまた無理やり権力で結ばされたのなら、私が……っ!」


「ジゼル様、大丈夫です。これは私が自分自身の意思で選んだ道なのです。……私がルドルフ殿下をお支えしたいと心から望み、私の方から王家へ嘆願を出させていただきました」


「へ……あ、えええ!?」


 本来のゲームシナリオを思えば、彼らが惹かれ合うのは必然かもしれない。

 けれど、私の知る今世の横暴だったルドルフ殿下を想えば、リリアから歩み寄るなんて夢にも思っていなかった。


「私とて、学生の頃はあまりに未熟で愚かだった。だが、そんな欠陥さえもリリアは真っ直ぐ受け止め、許容してくれたのだ。彼女こそ我が国の王母に相応しい女性と言える」


「それはまあ、何一つ異論はないけれど……! リリア、あなたは本当に後悔はないの!?」


「もちろんです! ジゼル様がルドルフ殿下のお心の優しさを見せてくださったおかげで、私はただ流されて婚約を受け入れるのではなく、彼という人そのものを受け入れたいと思えたのです。すべては、ジゼル様のおかげなのですよ!」


「う……リリアがそこまで言うのなら……」


 どこか腑に落ちない気持ちは残るものの、当人たちがこれほど晴れやかな顔で寄り添っているのなら、外野の私が野暮な口出しを挟む筋合いはない。

 私がまだ苦笑いを浮かべていると、彼らの背後に控えていたケヴィンが、くすりと楽しげに声を漏らした。


「今のお二人は、本当に素敵でお似合いですよ。側近としてお仕えすることになった僕から見ても、眩しいくらいです」


「まあ、ケヴィンがそう言うのなら、本当にうまく行っているのでしょうけれど……」


 今のケヴィンは、ルドルフ殿下にその秘められた才覚と誠実さを高く評価され、側近の重鎮として堂々たる采配を振るっている。

 自身の存在価値を正当に認められた彼の瞳には、かつてのような卑屈さは微塵もなく、確かな自信が宿っていた。


「ケヴィン、もしリリアが泣かされるようなことがあったら、遠慮なく私に連絡してね! 私が速攻で国に殴り込みに行くから……!」


「ふふ、大丈夫だと思いますよ。それに今は……ジゼル先輩ご自身の御婚礼が最優先でしょう? ……本当に、驚くほどお綺麗です。世界中の誰よりも、今のジゼル先輩が一番美しいですよ」


「……ありがとう、ケヴィン。あなたにも、たくさん苦労をかけてしまったわね……」


 私は二人の温かい眼差しに見守られながら、自分の姿を姿見に映し出し、なんだか照れくさく見つめ返した。

 鮮烈な赤と金を基調とした、フェイランの国の豪華絢爛な婚礼衣装。

 それは私がこれから、彼の隣でこの国と共に生きていくのだという、誇らしい証でもあった。


「そろそろ時間だな。私たちは一足先に大礼堂へと向かおう。ジゼル……色々とあったが、こうして決着をつけ、お前の門出を祝うことができて心から誇らしく思う」


「ルドルフ殿下、あの時は本当にお世話になりました。……また後ほど、宴の席でお会いしましょう」


 彼らが扉の向こう、華やかな儀式の場へと向かっていく背中を見送った後。

 私はゆっくりと深く息を吸い込み、窓の外に広がる澄み渡った青空を見上げた。


 今日は、生まれ育った故郷を離れ、愛する人の隣で新たな歴史を紡ぐ日だ。

次回最終話です。

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【代表作】→「悪役令嬢は全員生存エンドを目指す」
◆累計ページビュー44,000pv超え感謝◆

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あらすじ→「全員生き残るか、一人残らず死ぬか」その二択しかない極限の乙女ゲーム。
前世の記憶を取り戻したルナリアは、自分が"全滅エンド"を招く悪役令嬢だと知る。
導き出した答えは、誰とも関わらず、孤独に生きること。
そう誓った矢先に出会ってしまったのは、攻略対象——公爵令息のグレン。
父の虐待を見抜き、どんなに突き放しても離れない彼に、距離を取ろうとするほど執着されていく。
やがて暴かれる、最初から大切な人を"殺す力"を宿していたという残酷な真実。
それでも彼は、皆の前で誓った。
「生涯をかけて君を幸せにする」と。
虐げられた令嬢×公爵令息。
作品ページはこちら→「悪役令嬢は全員生存エンドを目指す」
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