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最強の鑑定士って誰のこと?~満腹ごはんで異世界生活~  作者: 港瀬つかさ
書籍27巻分

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レアな素材は探すのが大変です

悠利のお仕事、本領発揮なるか……?

 レオポルドが求める素材の大半は集めることが出来たし、仲間達の方も訓練も兼ねての素材集めをあらかた終えることが出来た。ただ、本日の本命とも言うべき素材がまだ見つかっていないというのが、現在の状況である。

 見つからないなら皆で頑張って探そうということで、悠利達はのんびり雑談を楽しみながらも散策を続けていた。ちなみに、見つからない最後の一つはレオポルドがルシアとの仕事で必要なものだということが判明しているので、大好きな友達のために頑張る! という感じでヘルミーネがやる気満々だった。

 ……まぁ、やる気の半分は、どうやらそれが新作スイーツに関わることらしいと知ったからであるが。安定のスイーツ大好きなお嬢さんだ。それがやる気に繋がってはいるので、別にお咎めはありません。


「それにしても、ユーリが一緒だと素材を探すの早くて助かるねー」

「それはそうだね。改めて、鑑定の有能さを実感した」

「お役に立てて何よりでーす」


 レレイとアロールが感心したように告げる言葉に、悠利はいつも通りののほほんとした調子で答えた。彼女達は採取訓練をしているので自分達で素材を探しているのだが、レオポルドが必要としている分の採取を手伝うときは悠利が【神の瞳】さんで辺りをサーチしていたのだ。

 どの辺にあるかなー? みたいな感じで意識を集中すれば、悠利が探そうと思った素材のある場所がピカピカと光る。そしてその場所を悠利が仲間達に教え、皆が採取をするという感じの流れだった。普通なら探しにくいものも、悠利の【神の瞳】ならば簡単に見つけることが出来るのだ。

 勿論、自分達で素材の形状や分布、採取の方法などの情報を調べ、実際に現地に足を運んでどこに素材があるのかを探し、その上で傷つけないように丁寧に採取するという訓練の大事さは理解している。そこをサボるつもりはない。ただ、やはり悠利がいると便利だなと皆が思っただけである。


「修行とか単なる採取依頼のときは別に良いけど、急ぎで探さなきゃいけないときは、ユーリに手伝って貰ったら助かりそうだよねー」

「急ぎで探さなきゃいけないとき?」

「たまにあるんだよー。緊急依頼って感じで冒険者ギルドでお知らせされるの。期限が短いから大変なんだけど、その分報酬が高かったりするんだよ」

「なるほど。特急料金みたいなものだね」

「……うん? よくわかんないけどそんな感じ!」


 満面の笑みを浮かべるレレイ。良く解らないのにそんな感じと言い切る辺り、安定のレレイであった。やれやれと言いたげにティファーナがため息をついているが、当人は何一つ気にしていなかった。細かいことを気にしないのがレレイなのです。


「緊急依頼は人命に関わったりすることが多いから、少しでも早く依頼を達成できる方が良いんだ」

「お薬の材料とか?」

「採取系だとそんな感じだね。ただ、鑑定持ちで冒険者をやってる人は少数派だからね」

「あー……。確か、鑑定士組合の方でお仕事してるんだっけ」

「そう」


 アロールの言葉に、悠利は記憶を探ってから答える。こんなことを言っている悠利の所属も一応、鑑定士組合である。冒険者ギルドではない。従魔登録でお世話にはなっているが、それはあくまでも従魔の登録であって、悠利自身は冒険者ではないのだ。

 鑑定は汎用性の高い技能であり、荒事に向かない者達の方が多いらしい。そのため、安全に屋内で仕事が出来る場所を求めて鑑定士組合に所属するのだという。鑑定系の技能を持ちながら冒険者としてバリバリ働いている面々というのは、他に戦闘向きの技能を持っていることが多い。

 採取でも戦闘でも十二分に能力を発揮できる鑑定系の技能であるが、大抵はバックアップに回ることが多く、実際の現場に出てくることは少ないのだという。実際、《真紅の山猫》の仲間達も、アリー以外は鑑定系技能を持っていない。皆、自分の記憶力と判断力で素材を探すのだ。

 そういう話を聞いた身としては、大変そうなときはお手伝いをしようかなと思う悠利だった。勿論、頼れる保護者であるアリーに許可を取ってから、である。勝手には動きません。大事なことなので。


「ところで、レオーネさんが探してる夢幻花って、そんなに見つけにくいんですか? 今のところ反応がないんですけど」

「正確には、あたくしが欲しいオレンジの匂いがする夢幻花が希少なのよ」

「なるほどー」


 先ほどから悠利はずっと、レオポルドのオーダーである「オレンジの匂いがする夢幻花」を探しているのだが、ちっとも見つからないのだ。悠利の【神の瞳】が見つけられないということは、本当にそこら辺にないということである。

 そんな悠利に、ティファーナが説明を付け加えてくれた。


「何の匂いもしない夢幻花でしたら、先ほどから沢山ありますよ、ユーリ」

「え?」

「足下のその小さな花が夢幻花です」

「これがそうなんですか?」


 ティファーナに示されて足下を見た悠利は、固まって咲いている真っ白な花を見つけた。小さな花だ。悠利の記憶にあるスミレの花にちょっと似ている。花弁は混じりっけのない真っ白だった。

 【神の瞳】で確認してみれば、確かに夢幻花と出た。ただし、「何の匂いもしない」という注釈が付いている。この花は、真っ白の無臭の状態が基本なのだが、時折色が付いた花が見つかる。その色が付いた花は、様々な香りがするのだという。

 色によって香りが変わる様が、まるで夢幻のようだということから名付けられたのが、夢幻花という名称の由来だ。また、香りがする色つきのものがなかなか見つからないことも名称に一役買っている。滅多に見つからない、まるで夢か幻のような希少な花、ということで。

 種から栽培してどうにか色や香りをつけようとしてみても、どうにも上手くいかないのだという。色々と謎の多い夢幻花らしい。そのため、こうして地道に探すしかないのだ。


「ここにオレンジの匂いがする夢幻花はあるんですか?」

「あるか解らないのよねぇ。ただここは夢幻花の群生地ではあるから、運が良ければ見つかるかしらってところよ」

「そうなんですね」


 のんびりとした会話をする悠利とレオポルド。見つかると良いですねぇと笑う悠利と、見つかったら嬉しいわねぇと告げるレオポルド。実にほのぼのとした光景であった。

 ……ただし、その二人のやりとりを聞いていた面々は、そっと顔を見合わせた。レオポルドが何でわざわざ悠利にお手伝いを頼んだのかが、解った気がしたのだ。


「ねーねー、レオーネさん、ユーリに何か期待してるのかなー?」

「まぁ、見つかれば御の字ぐらいなんでしょ。ただ、ユーリの幸運を計算に入れてる感じはするけど」

「抜け目ないわねぇー」


 レレイ、アロール、ヘルミーネはこそこそと額を付き合わせてそんな会話を交わしている。悠利の幸運がちょっと普通とは違うレベルだというのは周知の事実である。当人はあんまり気にしていないが、レアな状況を引き当てるのは一度や二度ではないのだ。

 そしてその幸運は、悠利本人にのみ恩恵があるわけではない。周囲の面々にも良い効果として現れることがあるのだ。一緒に騒動に巻き込まれても、その方が安全性が高かったとかが、実際のケースとして確認されている。

 だから今回も、レオポルドがそれを少しばかり期待しているのではと少女達は思ったのだ。イレイシアは口を挟んでいないが、彼女も同感なのだろう。皆の言葉に控えめに頷いている。

 そんな訓練生達の姿を見て、ティファーナは口元に笑みを浮かべた。冒険者として数多の修羅場をくぐり抜け、今またお貴族様相手でも物怖じせずに調香師として活躍しているレオポルドである。そのぐらいの計算はやってのけてもおかしなことではない。


「キュピ、キュー」

「うん? どうしたの、ルーちゃん」

「キュピピー」


 悠利の足下でぽよんぽよんと跳ねながら、ルークスはご機嫌だった。鳴き声も鼻歌みたいな感じである。ニコニコしているが、ルークスの言葉は悠利には解らないので、一体何を喜んでいるのかがさっぱりだった。

 なので悠利はちらりと視線をアロールに向けた。異言語理解という技能のおかげで、自分が使っているのと別種の言語を容易く理解できるアロールは、従魔の言葉も全て理解できるのだ。こういうときには通訳をお願いするのがいつもの流れだった。餅は餅屋である。

 悠利の視線を受けたアロールは、静かに答えた。


「お散歩みたいで楽しいって」

「へ?」

「危ないこともないし、皆がわいわいしながら歩いてるから、お散歩みたいだってさ」

「な、なるほど……」


 一応は素材を探している最中ではあるのだが、あまり緊張感がないのでルークスの中ではお散歩みたいな感じになっているらしい。大好きなご主人様と、尊敬する先輩達と一緒にお散歩が出来て楽しい、ということなのだろうか。

 そんなルークスの発言に呆れたように、ナージャは細く長く息を吐きだした。対してテリーは、ルークス同様ご機嫌で歩いている。こちらもこちらで、ご主人様であるアロールと一緒に行動できて楽しいのだろう。微笑ましい。

 そんな風に微笑ましい光景を挟みつつも、一同は散策を続けていた。しかし、夢幻花はあちこちに咲いているものの、レオポルドが求めるオレンジの匂いがする夢幻花は見つからない。それどころか、白以外の色の夢幻花がまったく見つからないのだ。


「なかなか見つからないですねー」

「そうねぇ」

「うーん、見つからなかったらルシアさんも困っちゃうし、どこかにないかなー」


 困り顔で呟きながら、悠利はぐるっと周囲を見渡した。相変わらず【神の瞳】さんに反応はない。ないはず、だった。


「あれ?」


 視界の片隅に、チラリと青い光が見えた。【神の瞳】が見せる青色は、悠利が探しているものだ。急いで悠利はそちらへ視線を向ける。すると、咲き誇る真っ白な夢幻花の一角に、ぴかぴかと青い光が見えた。


「あったー!」

「え? どこ、どこー!?」

「待って! レレイは行かなくて良いわよ! 大事な花に何かあったらどうするのよ!」

「……え、どういう意味?」

「勢い余って花を傷つけないでって意味よ」

「うぅ……」


 テンション高めに突っ走ろうとしたレレイは、ヘルミーネに力一杯止められていた。特筆すべきは、ヘルミーネだけでなくアロールに命じられたテリーもレレイの腕を掴んでいた。皆、やっと見つかった素材を大事にしたいようです。

 そしてレレイも、勢い余った自分の力がか弱いお花にどういう影響を与えるかは理解できたらしい。皆に止められて大人しくしていた。

 そんなある意味でいつも通りの騒動をスルーして、悠利はレオポルドとルークスと共に青い光が見える場所へと向かった。沢山ある白い夢幻花。それに埋もれるように、淡いオレンジ色の花弁が見えた。


「アレです、レオーネさん。あのオレンジの」

「本当にあったわねぇ……。凄いわ、ユーリちゃん」

「見つかって良かったです」


 コレでお役に立てたぞ、みたいな顔をしている悠利。ありがとうと微笑むレオポルド。どれー? と言いたげに身体を揺らしているルークス。そこへ仲間達も合流する。

 真っ白な花の中に一つだけ、埋もれるようにして見えるオレンジ色。そこから、ふわりと爽やかなオレンジの匂いが漂ってきた。他の夢幻花からはちっとも匂いがしないので、余計にその香りが鮮やかに皆に届いた。

 目的の花を見つけたので早速採取をしようと近づくレオポルド。どういう感じで採取するのが良いのか気になるのでついて行く悠利。同じく面白いことがあると思ったのかついて行くルークス。

 そんな中、レオポルドがオレンジの夢幻花に向けて手を伸ばした瞬間、それは起きた。


「――――ッ!!」

「え!?」


 キーンという耳鳴りのような音が聞こえて、レオポルドが驚いたように一歩後退った。手をそっと押さえているレオポルドに、悠利は驚く。レオポルドの手の甲は赤くなっていた。


「レオーネさん、大丈夫ですか?」

「え、えぇ、大丈夫よ。でも、何が……」

「何かいますよ、レオーネさん。凄く怒ってる」

「「怒ってる?」」


 何が起きたか解っていない悠利とレオポルドに対して、レレイが前方を指さす。レレイが指さした先には、オレンジ色の夢幻花の前に腕を広げて浮かんでいる何かがいた。

 それは、小さな、掌に載る大きさぐらいの小さな生き物だった。背中に二対の透明の羽根を持つ小さな人形みたいな生き物。身体付きは人間に似ているが、瞳の感じが明らかに人外という雰囲気だった。


「妖精……?」


 ぽつりと呟いた悠利の目の前で、小さな身体でその生き物は威嚇するように声を上げている。生憎と悠利には耳鳴りのようなキーンとした音のようにしか聞こえない。何かを喋っているのだろうが、まったく解らないのだ。


「確かに妖精ですね。人前に出てくることは滅多にないと聞いていますけど」

「あ、そういう感じで良いんですね?」

「ええ。目撃例も少ないので、情報も少ないそうですよ」


 ティファーナに説明をして貰って、悠利は目の前の小さな小さな妖精を見る。怒髪天を突くレベルで怒っているのは伝わってくるが、愛らしい見た目なのでどうしても可愛いという感想が出てくる悠利だった。

 なお、ルークスも初めて見る妖精に興味津々なのか、じぃーっと見つめている。身体の一部がちょろりと伸びているのは、触ってみたいと思っているのだろうか。それでも、相手が不機嫌なのは理解しているので、実際に行動には移していない。ルークスは賢いスライムなのです。

 レオポルドはレオポルドで、目当ての花の前に妖精が陣取っているので困っている様子だった。このオレンジ色の夢幻花を採取できれば今日の予定は終わるはずだったのだが。

 小さな身体で威嚇してくる妖精に困る一同。レレイなど、うっかり触って潰してはいけないというように、ヘルミーネの隣でじっとしていた。相手が怒っているのは解っても、別にこちら側に敵意はないので。

 そんな中、目の前の生き物の言葉が理解できるアロールが、その場に膝をついて妖精と視線を合わせた。


「ごめん、少し落ち着いてくれるかな。君の事情を聞かせてほしい」

「――?」

「うん。僕は君の言葉が解るから、教えてくれるかい?」


 アロールの静かな言葉に、怒っていた妖精は話が通じる相手が出てきたと言うことで、留飲を下げたらしい。しばし、アロールと何かを話している。

 こういうときはアロールがとてもとても頼りになるなぁと悠利は思う。それは悠利以外の皆も同じ気持ちだったらしく、訓練生は尊敬の眼差しでアロールの小さな背中を見ていた。

 しばらくしてから、アロールがゆっくりと振り返った。そして、神妙な顔をして告げた。


「自分が育てた花に勝手に触るなって怒ってるよ」

「え……?」

「その妖精ちゃんが育てた……?」

「らしいよ。だから、採取しようとしたことにキレたみたい」


 淡々としたアロールの言葉に、一同沈黙。まさかの、展開だった。妖精が出てくるのも驚きだったし、妖精が夢幻花を育てたというのも、驚きだった。

 これは、どうするのが良いんだろうか。そんなことを考えながら、思わず顔を見合わせる悠利とレオポルドなのだった。





見つけたけど、簡単じゃなさそう……?

さぁ、どうしましょうかねぇ?

ご意見、ご感想、お待ちしております。

なお、感想返信は基本「読んだよ!」のご挨拶だけですが、余力のあるときに時々個別でお返事もします。全部ありがたく読ませて頂いております!

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小ネタ置き場作りました。
最強の鑑定士って誰のこと?小ネタ置き場
クロスオーバー始めました。「異世界満腹おもてなしご飯~最強の鑑定士サイド~
ヒトを勝手に参謀にするんじゃない、この覇王。~ゲーム世界に放り込まれたオタクの苦労~
こちらもよろしくお願いします。ゲーム世界に入り込んだゲーオタ腐女子が参謀やってる話です。
32bh8geiini83ux3eruugef7m4y8_bj5_is_rs_7
「最強の鑑定士って誰のこと?~満腹ごはんで異世界生活~」カドカワBOOKS様書籍紹介ページ
1~25巻発売中!26巻2月10日発売。コミックス1~12巻発売中。電子書籍もあります。よろしくお願いします。
最強の鑑定士って誰のこと?特設サイト
作品の特設サイトを作って頂きました。CM動画やレタス倶楽部さんのレシピなどもあります。

cont_access.php?citi_cont_id=66137467&si
― 新着の感想 ―
育て方を教えてもらおう!
希少種見つけるあたり、さすが『幸運:∞』なユーリw ……さて、後はこの妖精さんをどうやって餌付けして、今後も定期的に収穫できるようにするか、だ……w
あー、つまり本来の夢幻花は白色無臭で、妖精が関わると色と匂いが付くって事?
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