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モブ転生 戦闘適性なしの農民ですが、なぜか勇者パーティーの前衛をやっています  作者: ブヒ太郎
モリア編

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第77話:魔導馬車と昼ごはん

 馬車の発着場へ着くと、そこには何台もの馬車が並んでいた。

 その中でも、一台だけ明らかに大きさの違う馬車が止まっている。


「……おぉ、すげー……」


 思わず声が出た。

 普通の馬車より二回りくらい大きい。

 箱型の車体もかなり長く、窓までいくつも付いている。


「なんか、小さな家が丸ごとくっついてるような感じだな……」


「これが魔導馬車だ」


 モリアはそう言うと、受付らしき場所へ向かった。


「五人だ。岩山の手前にある村まで頼む」


「はい。銀貨五十枚になります」


「銀貨五十枚!?」


 俺は思わず声を上げた。


「そこらの宿の十倍くらいするじゃねぇか……」


「高い分、早いからな」


 モリアは特に気にする様子もなく、銀貨五十枚を支払った。


「普通の馬車なら二日ほどかかるが、これなら一日で着く」


「それでも銀貨五十枚かよ……」


「時間を買っていると思えば安いものだ」


「お前、金使う時ほんと躊躇しねぇな……」


「必要な物に使っているだけだ」


 まぁ、そうなんだけどよ……。

 俺たちは案内されるまま、魔導馬車へ乗り込んだ。


「おお……」


 中に入って、また声が出る。

 向かい合わせに長い椅子が置かれ、奥には荷物を置くための棚まである。

 人が五人入っても全然狭くない。


「ほんとに家みたいですねっ!」


 リリアも珍しそうに車内を見回している。


「ここなら横になって寝られそう」


 セシルは早速、長椅子へ腰を下ろした。


「長距離用だからな。そのくらいの広さはある」


「へぇ……」


 俺も車内を見て回っていると、奥に小さな台があるのを見つけた。


「なんだこれ?」


「簡易調理台だ」


 モリアが答えた。


「魔核を燃料にして火を使える。長距離移動では重宝するぞ」


「馬車の中で料理までできんのかよ……」


 どこまで家なんだ、これ。

 そんなことを思っているうちに、馬車がゆっくりと動き始めた。


 最初こそ少し揺れたが、走り出してしまえば普通の馬車よりずっと揺れが少ない。

 これなら一日乗ってても、そこまで疲れなさそうだ。


「…………」


 俺は簡易調理台を見る。

 それからリリアたちを見る。


「……ってことは、昼飯は俺が作るのか……」


「お願いしますっ!」


 リリアが即答した。


「まだ何も言ってねぇだろ」


「カイルが作るんでしょ?」


 セシルまで当たり前のように言ってくる。


「やだわ……献立何も考えてないわ……」


「母親が言いそうなことを毎度言うなお前は……」


 モリアが呆れた顔で俺を見る。


「やかましいわ」


 さて、何にするかなぁ……。

 持ってきた食材を頭の中で思い浮かべる。


「ミートサンドでいいか?」


「はいっ! お願いします!」

「私もそれでいいよ」


 リリアとセシルが嬉しそうに答える。


「私もお願いします」


 ミナも頷いた。


「なら、それにするか」


 俺が食材を取り出していると、モリアがふと口を開いた。


「しかし、お前はなんでそんなに料理が美味いんだ?」


「ん?」


「村にいた頃から作っていたのか?」


「あぁ……まぁ、そうだな」


 俺は少し考えてから答えた。


「俺も孤児でさぁ。十二くらいから村長に家を貸してもらって、一人暮らししてたんだよ」


「十二から?」


「あぁ。だからかなぁ……飯も自分で作るしかなかったし」


「ふむ。なるほど」


 モリアは納得したように頷いた。


「誰かに作ってもらったりはしなかったのか?」


「ん?」


「例えば、伴侶とか」


「カイルさん、伴侶いたんですかっ!?」


 リリアが勢いよく俺を見る。


「それなのに、私たちを誘うような言動ばかり! この浮気者!」


 セシルまで何故か俺を責め始めた。


「居ねぇよ!! 何を誘ってるって言いたいんだ!?」


「……なんだ、やっぱり居ないんじゃん。焦って損した」


 セシルが小さく息を吐いた。


「何に焦ったんだよ?」


「…………」


 するとリリアが、セシルの肩をぽんと叩いた。


「良かったね、セシル………抜け駆けは許さないよ?」


 にっこり笑っている。

 笑っているんだが……。

 なんか目だけ笑ってねぇぞ。


「ひぃっ!」


 セシルが小さく悲鳴を上げた。


「はははははっ!」


 それを見ていたモリアが、腹を抱えるように笑い始める。


「そんなに笑うことか?」


「いや……お前たちは本当に面白いな」


 モリアはまだ笑っている。

 そこでミナが、ポンポンと手のひらを叩いた。


「……はいはい、そこまで。愛憎渦巻く勇者パーティなんか、娯楽の本の中だけで十分です」


「愛憎って……」


 何の話してんだ、こいつら。

 よくわからんが、とりあえず静かにはなったらしい。


「……まぁ、なんのことで争ってるかは全くわからんが、とりあえず収まったようだな……さてと」


 俺は昼食の下準備をするために、買ってきたパンを取り出した。

 ナイフで食べやすい厚さに切っていく。


「…………」


 ふと顔を上げると、ミナが俺を見ながらにっこり笑っていた。


「なんだよ?」


「……鈍感なのはいいですが、いざって時は二人のこと、まとめて責任取ってくださいね?」


「ミ、ミナッ!? なんて事言い出すの!?」


 リリアが顔を赤くして慌てる。

 一方でセシルは、


「……ふむ……それも楽しいかも」


 何やら想像したのか、ニヤッと笑っている。


「セシルまで何言ってるの!?」


「?」


 やっぱり何の話してるのか全然わからん。

 ただ、責任を取れと言われた以上、ここはちゃんと答えといた方がいいだろう。


「お、おう。大丈夫だ」


 俺は胸をドンと叩いた。


「リリアとセシルだけじゃなくて、ちゃんとミナもモリアもやべぇときは抱えて逃げてやるからよ」


「…………」


 ミナが固まった。

 そして、しばらくして頭を抱える。


「………どんだけ鈍感なんですか……」


「ははははははっ!」


 モリアがさっき以上に爆笑した。


「なんだよ!? ちゃんと全員助けるって言ってんだろ!」


「いや……駄目だ……お前は本当に面白いな……」


 笑いすぎて、モリアの目にはうっすら涙まで浮かんでいる。

 なんなんだよ……。

 俺は訳がわからないまま、再びパンを切り始めた。

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