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モブ転生 戦闘適性なしの農民ですが、なぜか勇者パーティーの前衛をやっています  作者: ブヒ太郎
モリア編

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第68話:宿での休息

 夕食が出来上がると、俺たち五人は居間のテーブルを囲んでいた。


「それ、私が取ろうとしてたやつです!」


「早い者勝ち」


「今、私のお皿に入れようとしてたじゃないですか!」


「まだ入ってなかった」


「入れる途中でした!」


 俺の目の前では、リリアとセシルが最後に残った肉を巡って言い争っている。


「……お前らなぁ」


 俺は呆れながら二人を見た。

 昼飯の時から肉、肉と言っていたが、夕飯になってもこれか。


「ほら」


 俺は自分の皿に残っていた肉を二人へ一つずつ渡した。


「俺の肉をお食べなさいよ……」


「いいんですかっ!?」


「やった」


「……ったく」


 二人が嬉しそうに肉を頬張る姿を見ながら、俺は苦笑する。

 そんな俺を見て、ミナがぽつりと言った。


「……ほんと、同年代とは思えないですね……」


「ん?」


「まさにお母さん……」


「誰がお母さんだ」


 すると、向かいに座っていたモリアが目を丸くして俺を見る。


「カイル……お前、今いくつだ?」


「……一応、十七ってことになっている」


「……十七?」


 モリアは俺の答えを聞くと、少し苦笑した。


「……そうか。まだ十七か」


「なんだよ、その反応」


「いや。てっきり二十はとっくに超えているものかと……」


「………そうね……」


 俺は半眼になりながら、リリアたちへ視線を向けた。


「あたしもこの子たちと付き合っていくうちに、なんだか十代なのか四十代なのか、最近わかんなくなってきたわ……」


「ハハ……なんだそれは……」


 モリアが呆れたように笑う。

 そんな会話を聞いていたセシルが、何気ない様子で口を開いた。


「……そういえば、モリアさんって今おいくつなんですか?」


「……」


 その瞬間。

 何故か周囲の空気が凍りついた。


「こ、こら! セシルちゃん!」


「ん?」


「女性に歳を聞くのはダメだって、あれほど言ったじゃないの!?」


「……あ」


 セシルもようやく何かを察したらしく、ハッとした顔をする。


「……ごめん、お母さん」


「誰がお母さんだ!!」


 俺が叫ぶと、リリアとミナが楽しそうに笑った。

 モリアも口元を押さえながら、小さく肩を揺らしている。


「……もういい。食え、お前ら」


「はーい」


「いただいてる」


「セシルは少し反省しなさい」


「反省してる」


「絶対してねぇだろ……」


 そんなくだらない話をしながら、俺たちは夕食を食べ終えた。


「ごちそうさまでした!」


「美味しかった」


「はいはい」


 食事を終えると、リリアたちはそれぞれ寝る準備を始める。

 俺は使い終わった皿や鍋を台所へ運び、そのまま洗い物を始めていた。


「さて……こいつも片付けちまうか」


 食器を一つずつ洗い、水気を拭き取っていく。


「リリア~、手伝って~」


 その後ろでは、セシルが魔物除けの石が入った桶を抱えながら、情けない声を上げていた。


「……えぇ……私ぃ?」


 リリアは露骨に面倒くさそうな顔をする。


「めんどくさいなぁ……」


 そう言いながら、ちらちらとミナへ視線を送った。


「……」


 その視線に気付いたミナが、苦笑する。


「……仕方ないね」


「ミナ!」


「三人で片付けちゃおっか」


「やった!」


「……助かった」


 途端に元気を取り戻したセシルが、桶の中の石を分け始めた。

 俺はそんな三人を横目に、黙々と洗い物を続ける。


 すると。


「はい、これ。カイルの分」


「ん?」


 振り返ると、セシルが小分けにした魔物除けの石を俺へ差し出していた。


「……俺もやるの!?」


 思わず聞き返す。

 するとセシルは、ニタニタと笑いながら言った。


「可愛い娘たちだけにさせようなんて、それがお母さんのすること?」


「誰がお母さんだ……」


 俺は洗っていた皿を置き、大きくため息を吐いた。


「ったくよぉぉぉ……」


 結局、文句を言いながらも魔物除けの石を受け取る。

 その様子を横で見ていたモリアが、妙に納得したように頷いた。


「……なるほど」


「なんだよ?」


「確かに、お母さん……かもしれないな」


「お前まで納得すんな!!」


 俺が叫ぶと、リリアたち三人が楽しそうに笑った。


「じゃあ行こ」


「はいはい」


 三人はそのまま自分たちの分の魔物除けの石を持って、寝室へ入っていった。

 俺も洗い物を済ませると、セシルから渡された魔物除けの石を持って、モリアと一緒にもう一つの寝室へ向かった。


 部屋に入ると、俺たちはそれぞれ向かいのベッドへ腰を下ろす。

 俺の隣には、魔物除けの石が入った小さな籠が置かれている。


「……さて」


 俺はその中から一つ石を手に取った。


「込めろって言われたけど……どう込めるんだよ」


「……そうか」


 向かいのベッドに座っていたモリアが、少し納得したように頷く。


「お前は魔力操作に疎いのだったな」


「身体強化くらいしかまともに使ったことねぇからなぁ」


「なら、まずは体内にある魔力の流れを察知しろ」


「流れ?」


「あぁ」


 モリアは自分の持っていた魔物除けの石へ、難なく魔力を込めながら続ける。


「身体に流れる血液とは違う、別の流れだ。意識を集中すれば感じ取れるはずだ」


「……んなこと言われてもなぁ」


「目を閉じろ」


「はいはい」


 言われた通り、俺は石を握ったまま目を閉じた。


「余計なことは考えなくていい。まずは自分の中に意識を向けろ」


「……」


「何か、普段とは違う流れを感じ取れないか?」


 俺は黙って、自分の身体に意識を集中する。

 心臓の鼓動。

 呼吸。

 身体の中を流れている血。

 それとは別に何かないかと探していると。


「……ん?」


 ほんの少しだけ、違和感があった。

 身体の奥を流れているような。

 血とは明らかに違う、妙な感覚。


「……なんか、あるな」


「それだ」


 モリアが静かに答える。


「その流れを、今持っている石へ集中させるイメージだ」


「石に……」


 俺は握っている魔物除けの石へ意識を向けた。

 身体の中で感じた流れを、そのまま腕へ。

 腕から手へ。

 そして、握っている石へ。


「……っ」


 次の瞬間。

 手の中から何かが抜けていくような感覚がした。


「お?」


 俺は思わず目を開く。

 手の中にある魔物除けの石には、先ほどまではなかった微かな魔力が宿っていた。


「……出来た?」


「あぁ」


 モリアが小さく頷く。


「ちゃんと込められている」


「おぉ……」


 俺は少し感心しながら、石を眺めた。


「案外、出来るもんだな」


「お前の場合、魔力そのものを扱えていないわけではない。今まで意識して使っていなかっただけだろう」


「なるほどなぁ……」


 俺は魔力を込め終えた石を脇へ置き、次の石を手に取った。


(……ってか、これ全部やったら追加報酬くらい貰えるよな?)


 そんなことを考えながら、俺は再び石へ魔力を流し込んでいった。

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