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転生したら、魔王と呼ばれた私が、ただ花を咲かせていた話 第三部  作者: マスター


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第五十三話「夜の作戦は、七割、うまくいった」

五十三話目です。


作戦実行の夜です。全部がうまくいく話を書くのは、簡単です。でも、全部うまくいくと、面白くない。七割うまくいって、三割が予想外になる。その三割が、物語を動かします。


では、どうぞ。

夜の十時、五分前。


北の路地に、全員が集まった。


センが、外の警備の動きを確認した。


ダロが、合鍵を持っていた。


ミアが、記録帳を服の中にしまっていた。


シロが、静かにしていた。


「確認します」と私は言った。「センさんは、塀の外で待機。私とダロさんとシロで、中に入ります。カナさんを連れて出たら、センさんに引き渡します。センさんとミアさんが、カナさんを都の外に連れ出します」


「分かった」とセンは言った。


「ダロさんは、中で問題が起きたとき、私の指示に従ってください」


「分かった」とダロは言った。


「シロは、私の横にいてください。警備に近づきすぎないこと」


シロが耳を動かした。


分かった、という意味だった。


「質問はありますか」


「一つ」とダロが言った。「お前が警備を眠らせる、というのは、本当にできるのか。見たことがない技術だ」


「一度だけ、試したことがあります」


「どこで」


「竜に対して、一瞬だけやりました」


「竜に」とダロは言った。驚いた顔をした。


「竜が、眠りましたか」


「眠りませんでした。でも、一瞬、動きが止まりました。人間なら、もう少し効果があると思います」


「自信があるのか」


「自信はないですが、やります」


「それが凪のやり方か」とセンが言った。


「そうです」


センが、外の気配を確認した。


「交代が始まる。行け」



木に登った。


思ったより、簡単だった。


根が太くて、掴みやすかった。


シロが、下から私を見上げていた。


「登れますか」


シロが、助走をつけた。


一気に、木の幹に前足をかけた。


そのまま、するすると登ってきた。


「上手いですね」


シロが、横に来た。


得意そうな顔だった。


ダロが、下から苦労しながら登ってきた。


「重い」とダロは言った。


「急いでください」


「分かっている」


塀の上に出た。


向こう側を見た。


暗かった。


庭があった。


人影が、遠くに見えた。


警備だった。


遠い方向にいた。


「今です」


塀を越えた。


着地した。


音が出た。


少し大きかった。


警備が、こちらを向いた。


「来ます」とシロに言った。


シロが、低くなった。


私は、力を使った。


警備の方向に向けて、静かに送り込んだ。


眠れ、という感覚ではなかった。


落ち着け、という感覚で送り込んだ。


警備が、少し足を止めた。


歩き始めた。


でも、速さが落ちた。


「完全には、効いていないですね」


ダロが降りてきた。


「どうする」


「警備が、こちらに来る前に、建物に入ります」


「急げ」


三人で、建物の裏口に向かった。


ダロが、合鍵を使った。


扉が、開いた。


中に入った。



建物の中は、薄暗かった。


廊下が続いていた。


ダロが先頭を歩いた。


「地下への階段は、左だ」


「警備は、中にいますか」


「二人いる。一人は、一階の奥。もう一人は、地下の入口前だ」


「地下の入口前に、人がいます」


「そうだ。そいつを、眠らせられるか」


「やってみます」


「やってみます、か」


「さっきより、うまくやります」


ダロが、少し苦笑した。


「頼む」


階段の前に出た。


地下への入口が見えた。


警備が、椅子に座っていた。


「気づかれる前に、近づく必要があります。少し、待ってください」


「何をする」


「床を、使います」


地面に手を当てた。


建物の中だったが、石の床だった。


石の下に、地面があった。


力を、床を通して送り込んだ。


警備の足元から、静かに、ゆっくりと。


眠れ、ではなく、落ち着け、ゆっくりしろ、という感覚で。


警備が、少し首を傾けた。


あくびをした。


目が、重くなっているようだった。


「今です」


三人で、静かに近づいた。


警備が、目を閉じた。


椅子に、もたれかかった。


眠った。


「できました」


「本当にできるのか」とダロは言った。


「今回は、うまくいきました」


「さっきは、半分しか効かなかったのに」


「さっきは、遠すぎました。今回は、近くで丁寧にやりました」


「覚えておく」とダロは言った。


地下への扉を、合鍵で開けた。



地下は、さらに暗かった。


ダロが、小さな明かりを持っていた。


廊下に、扉が三つあった。


「どれですか」


「一番奥だ」


一番奥の扉に、合鍵を差し込んだ。


回した。


扉が開いた。


中を見た。


カナが、床に座っていた。


目が、開いた。


私を見た。


「凪さん」とカナは言った。


「来ました」


「ミアは」


「外で待っています。安全です」


カナが、立ち上がろうとした。


足がふらついた。


「大丈夫ですか」


「大丈夫ではないですが、動けます」


ダロが、カナを見た。


カナが、ダロを見た。


「あなたが来たのか」とカナは言った。驚いた声だった。


「来た」とダロは言った。「急ぐぞ」


「記録帳は」


「ミアさんが持っています」


カナが、少し目を閉じた。


安堵した、という顔だった。


「良かった」と小さく言った。


「話は後で。今は、出ます」


カナの腕を支えた。


三人で、廊下を戻り始めた。


そのとき、一階から足音が聞こえてきた。


「早い」とダロが言った。


「何人ですか」


「一人のはずだが」


「複数に聞こえます」


足音が、二つあった。


「見回りの時間が、変わったかもしれません」


「どうする」


「一階は通れないかもしれないです。別の出口はありますか」


「地下に、もう一つ扉がある。使われていない倉庫への扉だ。そこから、外に出られるかもしれない」


「かもしれない、ですか」


「八十年使われていない。外に繋がっているかどうか、確認したことがない」


「行きます」


「賭けになるぞ」


「賭けが好きなわけではないですが、他に選択肢がないです」



使われていない倉庫への扉を開けた。


埃だらけだった。


暗かった。


シロが、先に入った。


鼻を動かした。


「外の匂いがしますか」


シロが、奥の方を向いた。


進め、という動きだった。


「あります」


四人と一頭で、倉庫を進んだ。


奥に、扉があった。


古い扉だった。


木でできていて、腐りかけていた。


「開けます」


力を込めた。


扉が、軋んだ。


押した。


音を立てながら、開いた。


夜の外気が、入ってきた。


外だった。


施設の裏側に、細い路地が続いていた。


「出られました」


カナが、外気を吸った。


「久しぶりです、外の空気が」


「後で、ゆっくり吸ってください。今は、急ぎます」


路地を、走った。


回り込んで、北の路地に出た。


センが、待っていた。


ミアが、センの横にいた。


ミアが、カナを見た瞬間、走ってきた。


「先輩」


「ミア」とカナは言った。


二人が、抱き合った。


「記録帳は」


「あります、ここに」とミアが言った。胸の中から、記録帳を出した。


カナが、受け取った。


両手で持った。


「良かった」とカナは言った。もう一度言った。「本当に、良かった」


センが、私を見た。


「よくやった」


「七割、うまくいきました」


「七割、というのは」


「地下の扉が倉庫に繋がっていたのは、誤算でした。でも、出られたので、まあ良しとします」


センが、少し笑った。


「まあ良し、か」


「ダロさんの情報のおかげです」


ダロが、横にいた。


カナが、ダロを見た。


「なぜ、助けてくれたんですか」


「お前の言葉を、聞いた。渡さない、という言葉を」


「あれを、聞いていたんですか」


「聞いた。あの言葉で、考えが変わった」


カナが、少し黙った。


「ありがとうございます」


「礼はいい。急げ。一階の見回りが、気づくかもしれない」


センが、カナの腕を取った。


「行くぞ」


「凪さんは」とカナが言った。


「残ります」


「残る、というのは」


「ベルクさんの援護をします。カナさんを助けるだけでは、また誰かが捕まるかもしれないです。根本を変えないといけない」


カナが、私を見た。


「気をつけてください」


「気をつけます」


「記録は、守ります」


「守ってください。ミアさんも、一緒に守ってください」


「守ります」とミアが言った。


「帰ってきてください」とカナが言った。


「帰ります」


センが、カナを連れて走り始めた。


ミアが、後を追った。


三人が、夜の都に消えた。


ダロが、私の横に立った。


「残るのか」


「残ります」


「私も、残る」


「なぜですか」


「お前を一人にするのは、危ない気がする」


「ダロさんが一緒にいることで、危なくなることもあります」


「それでも、残る」


シロが、私の横に来た。


私が残るなら、自分も残る、という顔だった。


「二人と一頭で、残ります」


ダロが、少し空を見た。


「次は、何をする」


「ベルクさんに、会いに行きます」


「夜中に」


「そうです。明日の朝まで待てない気がします。セルドへの手紙が届けば、外から圧力がかかります。その前に、ベルクさんと話をしておきたいです」


「ベルクの監視が、厳しいぞ」


「厳しいですね」と私は言った。「でも、行きます」


ダロが、また少し苦笑した。


「やってみます、とは言わないのか」


「今夜は、言い切ります」


「なぜ」


「カナさんが、渡さない、と言い切ったから。それを聞いたダロさんが、動いてくれた。言い切ることで、動く人がいるかもしれないです」


ダロが、黙った。


しばらくして、言った。


「行こう」


三人で、夜の都を歩いた。


どこかで、カナが都の外に向かっていた。


セルドに向かった手紙が、ラグル族の足で、今も走っていた。


全部が、動いていた。


七割うまくいった夜が、まだ終わっていなかった。

五十三話目、書きました。


「七割うまくいった」というタイトル通り、全部は計画通りにいきませんでした。庭の警備への力の使い方が半分しか効かなかった、地下の倉庫扉が誤算だった。でも、結果として出られた。完璧でなくても、動き続ければ何とかなる、という凪のスタイルが出た話でした。


カナとミアの再会は、短くしました。抱き合って、記録帳を確認して、それだけ。感情的な場面を長くしすぎると、テンポが落ちます。短くても、二人の関係が伝わる場面にしたかった。


ダロが「残る」と言った場面。「信用しなくていい」と言い続けていたダロが、行動で信用を作っていっている過程です。カナの「渡さない」という言葉が、ダロを変えた。そのダロが、今度は凪の「言い切る」姿勢に動かされた。


「言い切ることで、動く人がいるかもしれない」という凪の気づき。第二部までの「やってみます」から変わってきた凪の姿です。


次話では、深夜のベルクとの接触と、状況が大きく動く展開が待っています。


また明日。


原案・構想:マスター

物語構成・本文作成・文体調整:クルス(Claude)

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