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転生したら、魔王と呼ばれた私が、ただ花を咲かせていた話 第三部  作者: マスター


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第五十話「都に着いたら、別の顔をしていた」

五十話目です。節目の話です。


都に向かいながら、情報を集める。そして都に入ったとき、知っていた都と違うものが見えてきます。権力が変わると、街の空気が変わる。それを、凪がどう読むか。


では、どうぞ。

アルドまでの四日間、ミアから話を聞き続けた。


歩きながら、食べながら、休みながら。


ミアは記憶力が良かった。


起きたことを、順番に、正確に話してくれた。


「政変は、十日前の夜に始まりました」とミアは言った。


「夜に、ですか」


「そうです。リドル様が、急に失脚しました。理由は、農務局との癒着、という名目でした」


「農務局と調査部門が一緒に動いていたことが、問題にされた」


「そうです。本当は、水路の問題や採掘の問題を解決するために、一緒に動いていました。でも、別の勢力から見れば、権力の集中に見えた」


「邪魔だったんですね」


「そう思います。特に、鉱山局を抑えていた部分が、気に入らなかったようです」


「鉱山局が、政変に関係しているんですか」


「直接かどうかは分からないです。でも、政変の後、すぐに鉱山局が動き始めました。記録を消そうとしたのも、鉱山局の人間でした」


「カナさんが、何を持っていたんですか。消されたくなるほどの記録が」


ミアが、記録帳を少し持ち上げた。


「採掘と、水脈の関係を示した記録です。山の泉の水が減った原因が、採掘だと証明できる内容が、ここに全部あります」


「それが消えれば、証拠がなくなる」


「採掘を再開しても、誰も問題を指摘できなくなります」


「そのために、リドルを落として、ベルクを封じて、エイラを制限して、カナを捕まえた」


「全部がつながっています」とミアは言った。


「全部つながっていますね」と私は言った。悲しい意味で言った。



三日目の夕方、アルドの国境が近づいてきた。


国境の手前で、シロが止まった。


また、何かを感じ取っていた。


「人ですか」


シロが、少し低くなった。


敵意のある何か、という感じだった。


「隠れた方がいいですか」


シロが、道の脇の茂みに向かって、頭を向けた。


三人で、茂みに入った。


しばらくして、馬が通った。


四頭の馬に、武装した騎士が乗っていた。


旗を持っていた。


旗の紋章は、鉱山局のものだった。


「捜していますか、私たちを」とミアが小声で言った。


「かもしれないですね。ミアさんが逃げたことは、知られているはずです」


「どうしますか」


「国境を、別のルートで越えます。正面からは無理です」


「別のルートが、ありますか」


「ラグル族に、聞いてみます」



ラグル族の三頭が、道を知っていた。


山の中の、細い獣道だった。


人間が使わない道だった。


一時間ほど余分にかかったが、国境を越えられた。


「ラグル族がいなければ、どうしていましたか」とミアが言った。


「困っていましたね」


「凪さん、すごいですね。こういうとき、ちゃんと手段がある」


「手段があるのではなく、つながりがあります。ラグル族と仲良くしていたのは、困ったときのためではなかったですが、助かりました」


「つながりが、手段になる」


「そういうことが、多いですね」



都に入ったのは、四日目の夕方だった。


前に来たときと、同じ門だった。


でも、違った。


門番の人数が、倍になっていた。


入る人間を、一人一人確認していた。


「厳しくなっていますね」と私はミアに言った。


「こんなに厳しくなかったです。前は」


「変わっています」


「中に入れますか」


少し考えた。


「入れると思います。ただ、ミアさんは難しいかもしれないです。顔が知られている可能性があります」


「どうすればいいですか」


「先に私が入ります。中で、別の入口を見つけます」


「凪さんは、顔が知られていないですか」


「転生者として、リドル様たちに会いましたが、鉱山局の人間に会ったのはダロさんだけです。門番には、分からないと思います」


「シロは」


「シロは、目立ちます」


シロが、少し耳を下げた。


「仕方ないです、目立つので」とシロに言った。


シロが、また耳を下げた。


「ミアさんとシロは、東側の林の中で待っていてください。一時間で戻ります」


「一時間で、何ができますか」


「中の状況を確認します。ベルクさんがどこにいるか、探します」


「一人で大丈夫ですか」


「大丈夫かどうかは、やってみないと分かりません」


ミアが、少し心配そうな顔をした。


「行きます」



門を通った。


名前を聞かれた。


「凪です。転生者です。前に、リドル様に会いました」


門番が、書類を確認した。


「リドル様は、今は」


「存じています。ベルク調査官に会いたいです。以前、お世話になりました」


門番が、もう一人の門番と顔を見合わせた。


「少し待て」と言って、どこかに確認しに行った。


待った。


三分ほどで、戻ってきた。


「通れ。ただし、単独で動くな。案内をつける」


「ありがとうございます」


案内の人間が、一人ついた。


案内というより、見張りだった。


歩きながら、都の中を見た。


変わっていた。


前に来たときは、市場が賑やかで、人が行き交っていた。


今は、静かだった。


人が少なかった。


いても、急いで歩いていた。


声が少なかった。


「空気が重いですね」と案内の人間に言った。


「何もありません」と案内の人間は言った。素っ気なかった。


「そうですか」


そうじゃないのは、見れば分かった。


市場の店が、半分ほど閉まっていた。


開いている店も、店主が外に出ていなかった。


中から、こちらを見ていた。


怖がっている、という空気だった。



通されたのは、小さな部屋だった。


調査部門の建物ではなかった。


別の建物の、端の方の部屋だった。


しばらく待った。


扉が開いた。


ベルクが入ってきた。


「来たか」とベルクは言った。


「来ました」


「一人か」


「門の外に、ミアさんとシロがいます」


ベルクが、扉を閉めた。


「見張りは」


「少し離れた廊下にいます」


「話せる時間は、短い」とベルクは言った。「簡潔に言う」


「どうぞ」


「カナは、都の東にある旧施設に入れられている。今のところ、危害は加えられていないが、いつ移送されるか分からない」


「記録帳を取り戻そうとしていると、知っていますか」


「知っているはずだ。だから、急いでいる」


「カナさんを出すことは、できますか」


「私が動けば、できるかもしれない。だが、今の私は」


「監視下にある」


「そうだ。一人では動けない。誰かが外から動いてくれれば、私は内側から合わせられる」


「外から、というのは」


ベルクが、私を見た。


「お前に来てもらいたかった。ミアを送ったのも、そういうことだ」


「ミアさんが来たのは、ベルクさんが送ったんですか」


「ミアが自分で決めた。だが、私が方向を示した。カナを助けられるのは、今の状況では外にいる者だけだ」


「外から動く方法を、教えてください」


ベルクが、少し声を下げた。


「セルドだ」


「セルドのガレス王に、話を通すということですか」


「そうだ。今回の政変は、アルドの内側の話だ。しかし、水路の問題は、セルドとの関係に直接影響する。セルドが、アルドに対して正式に確認を求めれば、鉱山局も無視できない」


「セルドが、圧力をかける」


「圧力ではなく、外交上の確認だ。しかし、効果は同じだ」


「ガレス王が、動いてくれるかどうか」


「動く可能性がある。川の水が戻ったのは、お前のおかげだと、ガレスは思っている」


「お前のおかげです、ではないですが」


「今は、そういうことを言っている場合ではない」とベルクは言った。短く言った。


「分かりました」


「セルドまで、行けるか」


「行きます。でも、その前に、カナさんがどこにいるか、自分の目で確認したいです」


「なぜ」


「状況を見てから、動く順番を決めたいです。先にセルドに行くべきか、先にカナさんの安全を確認すべきか」


ベルクが、少し考えた。


「東の旧施設を、外から確認することならできるか。中に入るのは、今は無理だ」


「外から確認します」


「今夜、できるか」


「できます」


「案内を、用意する。信用できる人間を一人つける」


「ありがとうございます」


ベルクが、扉に向かった。


振り返らずに言った。


「急いでくれ。カナの記録が、なぜ重要か、お前は分かっているはずだ」


「分かっています」


「あの記録がなければ、採掘が再開される。山の泉が、また止まる。セルドの川が、また減る。全部が、元に戻る」


「戻らせません」


ベルクが、少し止まった。


「言い切ったな」


「言い切りました」


「凪らしくない言い方だ」


「たまには、言い切ります」


ベルクが、また動いた。


扉を開けながら、小さく言った。


「頼む」



夜、ミアとシロと合流した。


「どうでしたか」とミアが聞いた。


「状況が分かりました。今夜、カナさんがいる施設を外から確認します。それから、セルドに向かいます」


「セルドに、行くんですか」


「ガレス王に、動いてもらいます。アルドに対して、外交的な確認を求めてもらいます」


「それで、カナ先輩が」


「直接助けに行くのは、今は難しいです。正面からの力技では、状況が悪化するかもしれない。外から圧力をかけて、内側のベルクさんが動ける状態を作ります」


「遠回りですね」


「遠回りですが、確実です。直接助けようとして失敗すれば、カナさんの状況が悪くなるかもしれない」


ミアが、記録帳を抱えた。


「先輩は、待てると思いますか」


「カナさんは、強い人です。待てると思います」


「そうですね」とミアは言った。「待てます、先輩は」


シロが、私を見た。


行こう、という顔だった。


「行きましょう」


夜の都を、歩いた。


人が少なかった。


でも、誰かが見ているような気がした。


そういう空気の都になっていた。


石の街が、前より重く見えた。


「必ず、元に戻します」と、都に向かって言った。


都は、何も言わなかった。


でも、聞いていた気がした。

五十話目、書きました。節目の話でした。


テンポを意識して、情報を出しながら状況を動かすことを意識しました。ミアからの情報収集、国境の別ルート越え、ベルクとの密会、夜の施設確認へ。一話の中で、かなり動きを入れました。


「全部がつながっています」という言葉を、今回は悲しい意味で使いました。善意のつながりだけでなく、悪意のつながりもある。鉱山局がリドルを落とし、ベルクを封じ、エイラを制限し、カナを捕まえた。これも、全部つながった結果でした。


ベルクが「頼む」と言った場面。第一部から登場して、あまり感情を出さなかったベルクが、初めてそういう言い方をした場面でした。それだけ、追い詰められているということでもあります。


「たまには、言い切ります」という凪の言葉。第三部から、凪が少し変わってきた部分を出したかった場面でした。


次話では、カナがいる施設を確認して、セルドへの道が始まります。


また明日。


原案・構想:マスター

物語構成・本文作成・文体調整:クルス(Claude)

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