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転生したら、魔王と呼ばれた私が、ただ花を咲かせていた話 第三部  作者: マスター


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19/22

第六十七話「調査が終わって、全部が変わった日」

六十七話目です。


エン山調査の最終日です。全員が揃って、結論が出ます。


でも、この話の一番大事な場面は、結論ではありません。結論が出た後に、誰かが言った一言です。


では、どうぞ。

調査三日目の朝、最後の確認をした。


東側の空洞から離れた、北西の斜面を歩いた。


「ここは、どうですか」とルースが聞いた。


地面に手を当てた。


「安定しています。空洞の影響が、ここまでは来ていないです」


「採掘に適した地盤ですか」


「掘れます。ただし、深さに注意が必要です。七十メートル以上掘ると、別の水脈に近づきます。それより浅ければ、問題が起きにくいです」


「七十メートルを上限とする採掘なら、認められるということですか」


「可能性は高いです。ただし、農務局が確認して、判断してください」


エイラが、横で聞いていた。


「確認します」とエイラは言った。


ルースが、数値を測定した。


「地盤は、安定しています。凪さんの感触と、測定値が一致しています」


「良かったです」


「今回の調査で、採掘の可否を判断する根拠が揃いました」とルースは言った。「エルドとしての結論は、北西斜面での採掘なら、反対しません。ただし、七十メートル以内という条件を付けます」


「セルドも、同じ条件で反対を取り下げます」とオルトが言った。


「農務局として、条件付きで認可します」とエイラが言った。


「鉱山局として、条件を受け入れます」とダロが言った。


ベルクが、全員を見た。


「調査部門として、記録します。全員の合意として、文書に残します」


カナとミアが、それぞれ記録帳に書いた。


「記録しました」とカナが言った。


「記録しました」とミアが言った。


「これで、調査は終わりです」とベルクが言った。



山の麓に下りながら、エイラが私に来た。


「凪さん、一つ聞いていいですか」


「なんですか」


「今回、政変があって、採掘計画が問題になって、最終的に条件付き認可になりました。これは、良い結果ですか」


「良い結果だと思います」


「全部が、最初の状態に戻ったわけではないですね。リドルは失脚したまま、鉱山局の上層部は責任を取っていない」


「そうですね」


「それでも、良い結果ですか」


「全部が解決することは、ないですよ」と私は言った。


「そうですね」


「でも、方向が変わりました。採掘は場所を変える。水脈は守られる。記録が残る。農務局の確認プロセスが、守られる」


「方向が変われば、続けていける」


「そうです。それで、十分だと思います」


エイラが、少し考えた。


「私は、最初から結果を求めすぎていたかもしれません」


「そうですか」


「全部を止める、全部を解決する、そういう気持ちが強かったです。でも、方向が変わることが大事、ということを、今回学びました」


「エイラさんから、私が学んだことの方が多いですが」


「何を学んだんですか」


「計算しながら動くことです。捕まることで証拠を作る、書類を渡してから残る。全部、計算されていました」


「計算していたのは確かです。でも、怖かったですよ」


「怖かったですか」


「怖かったです。捕まった後、本当に誰かが動いてくれるか、分からなかったです。あなたが来てくれると、信じていましたが、確信はなかったです」


「信じていてくれたんですね」


「信じていました。根拠があったわけではないですが」


「根拠がなくても信じてくれた」


「あなたが、川を直したとき、竜と話したとき、そういう話を聞いていましたから。理屈ではなく、この人なら来てくれる、と思っていました」


「それが、一番ありがたいですね」


「そうですか」


「根拠のある信頼は、根拠がなくなったら崩れます。根拠のない信頼は、崩れにくいです」


エイラが、少し笑った。


「変な理屈ですね」


「変ですね」


「でも、分かります」



全員で、宿に戻った。


今夜が、最後の夜だった。


明日、それぞれの場所に帰る。


食事が始まった。


エルドのルースが、私の横に来た。


「二か月後を、楽しみにしています」


「準備しておきます」


「エルドのことは、どのくらい知っていますか」


「ほとんど知らないです」


「では、一から見てもらえます」


「そうですね」


「川の変動が、三年続いています。農民が困っています。私たちだけでは、原因が分からなかったです」


「気になることがあれば、分かります」


「あると思います。気になってもらえると、助かります」


「気になることに、なる、ならない、はないですが」


「ないですか」


「気になることは、目に入ると気になります。制御できないです」


ルースが、少し笑った。


「それは、純粋な探究心ですね」


「探究心というより、性格です」


「良い性格だと思います」



食事が終わった後、ベルクが言った。


「全員で、最後に話しておきたいことがある」


「なんですか」


「今回の調査で、三カ国が一緒に動いた。これは、初めてのことだ。水脈の問題は、国境を越えることが証明された」


「そうですね」


「今後、似たような問題が起きたとき、また集まれる仕組みが必要だ。今回のような調査を、次も同じように動けるようにしたい」


「仕組みを作るということですか」


「そうだ。定期的に情報を交換する。問題が起きたとき、すぐに動ける体制を作る。お前が一人で飛び回るより、仕組みがある方が続く」


「そうですね」


「記録係のカナとミアに、そのための書類を作ってほしい。三カ国で合意できる形で」


「承知しました」とカナが言った。


「承知しました」とミアが言った。


「それと」とベルクは言った。「凪に、一つ頼みたいことがある」


「なんですか」


「今後、どこかに行くとき、事前に教えてくれ」


「知らせていましたが」


「知らせていたが、突然のことが多かった。次はエルドに行くと言っていたな。それも、事前に書類を作れる。エルドとの連絡も、準備できる」


「調整してもらえるということですか」


「そうだ。お前が単独で動くより、こちらが準備している方が、スムーズになる」


「お世話になりますね」


「お世話する理由が、ある」


「なんですか」


「お前が動くと、何かが変わる。何かが変わると、記録が増える。記録が増えると、次に動きやすくなる。そのサイクルを、止めたくない」


「記録のために、私を使うんですか」


「そういうことだ」とベルクは言った。


「ベルクさんらしいですね」


「そうか」


「記録が最終目的ですね、ベルクさんは」


「記録が残れば、誰かが動ける。それが目的だ」


カナが、横で聞いていた。


「私も同じです」とカナは言った。


「記録係は、みんな同じですね」とミアが言った。


「止まれない理由が、記録なんですね」と私は言った。


「そうだ」とベルクは言った。


「全員が止まれませんね」


「止まれない方が、良い」とベルクは言った。



夜遅く、外に出た。


シロが、横にいた。


「明日、集落に向かいます」


シロが尻尾を振った。


「ルナが待っています」


また振った。


「戻ったら、ゴルへの返事も書きます。レナへの手紙も書きます。デルへの手紙も書きたいですね」


シロが耳を動かした。


「やることが、また増えました」


また動いた。


「でも、やることがある間は、動けます」


シロが、私を見た。


「そうですね、同じことを何度も言っています」


シロが、尻尾を振った。


「それだけ、本当のことだということですね」


また振った。


山の夜が、静かだった。


アルドの都が、遠くに見えた。


明かりが、点々と灯っていた。


「都が、また明かりを増やしていますね」


シロが、都の方を見た。


「政変の後、重かった空気が変わりました。少しずつ、戻ってきています」


シロが尻尾を振った。


「全部が、ゆっくりと、でも確かに動いています」


また振った。


「ゆっくりでいいですね。一気に変わると、後が大変です」


シロが、また私を見た。


お前が言うのか、という顔だった。


「私は、割と一気に動きますが」


シロが、尻尾を振った。


「それは、性格なので」


また振った。


「仕方がないです」


また振った。


「シロが笑っていますか」


シロが、前を向いた。


笑っていない、という顔だった。


「笑っていましたよ、今」


シロが、また前を向いた。


笑っていない、という後ろ姿だった。


「分かりました」


星が、出ていた。


山の星は、都の星より多かった。


「帰りましょう、明日は」


シロが尻尾を振った。


「帰ります」


また振った。


「帰る場所が、ある。それだけで、十分ですね」


シロが、最後に大きく尻尾を振った。


全部、同意する、という振り方だった。

六十七話目、書きました。


「条件付き認可」という結果が出ました。全部を止めるのではなく、条件をつけて認める。凪が最初から言っていた「正しいプロセスを守ること」が、最終的な結論になりました。採掘そのものへの反対ではなく、確認なしに進めることへの反対。それが、今回の問題の本質でした。


エイラが「全部を解決する、という気持ちが強かった。方向が変わることが大事、と学んだ」と言った場面。エイラが凪から学んだことを、エイラ自身が言葉にした場面でした。凪が直接教えたのではなく、行動を見て学んだ。


「根拠のない信頼は、崩れにくい」という凪の言葉。根拠があれば、根拠がなくなったとき崩れる。でも、理屈ではなく「この人なら」という信頼は、根拠に依存しない。エイラが凪を信じていた理由がここにありました。


ベルクの「お前が動くと、記録が増える、記録が増えると次に動きやすくなる、そのサイクルを止めたくない」という言葉。ベルクが凪を使う理由を、ベルクらしい記録の論理で表現しました。


シロが笑っていた場面は、少し軽くしたくて入れました。重い話の後の、ちょっとした空気の変化です。


次話では、集落に帰ります。第三部も、いよいよ終盤です。


また明日。


原案・構想:マスター

物語構成・本文作成・文体調整:クルス(Claude)

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