表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したら、魔王と呼ばれた私が、ただ花を咲かせていた話 第三部  作者: マスター


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
17/22

第六十五話「三週間で、ルナが泣かなくなった理由」

六十五話目です。


集落での三週間が終わります。エン山の調査に向けて、出発する日の話です。


ルナが、今回は泣かなかった。なぜか。泣かなくなったのが成長なのか、それとも別の理由があるのか。


では、どうぞ。

三週間が、あっという間に過ぎた。


毎日、カナに何かを伝えた。


毎日、ルナとミアが池に行った。


毎日、ガルが記録した。


毎日、シロが集落を歩いた。


そういう三週間だった。



出発の前日、カナが私を呼んだ。


「見せたいものがあります」


集落の南の外れに連れていかれた。


「ここを、触ってみてください」


地面に手を当てた。


「柔らかいですね」


「三週間前と、比べてどうですか」


「かなり違います。来たときより、ずっと良くなっています」


「私が毎日、根の周りを少しずつ耕しました。水の流れを確認して、詰まっているところを見つけて」


「カナさんが、一人でやったんですか」


「一人ではないです。ルナと一緒に、毎日少しずつやりました」


「ルナが手伝っていたんですか」


「ルナが気づいて、教えてくれた部分もあります。先日の木の詰まりの件は、ルナが最初に感じ取りました」


「ルナが」


「そうです。私が教えたのではなく、ルナが自分で気づきました。私が確認したら、合っていました」


「それは、大きな変化ですね」


「そうです。凪さんが来るたびに、集落の状態の数字が上がっていましたね」


「そうですね」


「今回は、凪さんがほとんど手を入れていないのに、上がっていると思います」


「そうですね。二十四くらいに、なっていると思います」


「二十四」


「自分で回れる状態が二十でした。今は、二十四です。余裕が生まれています」


「余裕があると、問題が起きても対処できる」


「そうです。少しの変化では、崩れない状態になっています」


カナが、地面を見た。


「私にも、少し感じ取れるようになりました」


「そうですね」


「最初は何も分からなかったです。でも、三週間毎日触れていたら、昨日と今日の違いが分かるようになってきました」


「それで、十分です」


「十分ですか」


「変化が分かれば、問題に気づけます。気づければ、対処できます」


「凪さんほどは、できないですが」


「私ほどできなくていいです。カナさんはカナさんのやり方で、感じ取れることが増えれば、それで十分です」


カナが、また地面を見た。


「三週間、ありがとうございました」


「カナさんが、続けてくれたんです」


「きっかけを作っただけですか」とカナは言った。


「また言いましたね」


「ガレス王の言葉を、覚えていますから」


「受け取ります」


「そうしてください」とカナは言った。笑いながら言った。



出発の朝、全員が集まった。


ガルが、食事を多めに作っていた。


「帰りに、また寄ってください」とガルは言った。


「寄ります」とカナは言った。


「ミアさんも」


「寄ります」とミアは言った。


「約束ですか」とルナが聞いた。


「約束します」とカナは言った。


「ミアさんも」


「約束します」


「よし」とルナは言った。


全員に約束させた。


「ルナが、全員に約束させましたね」と私は言った。


「大事だから」とルナは言った。「帰ってくる約束をしてもらった人は、帰ってくるから」


「そうですか」


「ナギがそうだったから」


「私が」


「うん。帰ってきます、って言った人は、帰ってきた。だから、みんなに言ってもらう」


「そういう法則があるんですか」


「ある」とルナは言った。確信を持って言った。



荷物を持って、集落の外に出た。


ルナが、隣を歩いた。


「今日は、走って来ないんですか」と聞いた。


「走らなかった」とルナは言った。


「なぜですか」


「走って来る必要がなくなった」


「どういう意味ですか」


「前は、ナギが来るのが嬉しすぎて、走って迎えに行きたかった。去るのが寂しすぎて、一歩でも早く送り出したくなかった。だから、感情が大きかった」


「今は違うんですか」


「今は、帰ってくるって分かってるから。カナさんもミアさんもいるから。シロも一緒だから。心配が、前より小さい」


「成長しましたね」


「成長した、というより」とルナは言った。少し考えて言った。「信じられるようになった」


「信じる、とは」


「ナギが帰ってくることを、ちゃんと信じられるようになった。前は、心配の方が大きかった。信じているつもりでも、心配の方が勝っていた。今は、信じる方が大きい」


「どうして、変わりましたか」


「ナギが、毎回帰ってきたから」とルナは言った。「一回帰ってくれば、また帰ってくるかもしれない。二回帰ってくれば、もっと信じられる。何回も帰ってきてくれたから、ちゃんと信じられるようになった」


「続けることで、信頼が生まれる」


「精霊と同じだよ。ルミが毎日来てくれるから、今日も来てくれると信じられる。ナギも毎回帰ってくるから、今回も帰ってくると信じられる」


「そうですね」


「だから、走ってこなかった。走らなくても、大丈夫だと思ったから」


集落の入口まで、歩いてきた。


ルナが、止まった。


「ここまでだ」


「集落の外は来ないんですか」


「来ない。今日は、ここまで」


「前は、遠くまで来ていましたね」


「前は、送り出したくなかったから、一緒に長く歩きたかった。今は、ここで十分」


「そうですか」


「石、持った?」


「持ちました」


「帰ってきたら、返して」


「返します」


ルナが、私を見た。


「帰ってきてね」


「帰ります」


「条件なし」


「条件なしで帰ります」


ルナが、少し笑った。


「行ってらっしゃい」


「行ってきます」


ルナが、手を振った。


前回より、小さく振った。


大げさに振らなくても、届くと知っているような振り方だった。


歩き始めた。


振り返った。


ルナが、まだ手を振っていた。


目は、赤くなかった。



カナが、横に来た。


「ルナが、泣きませんでしたね」


「そうです」


「成長しましたか」


「成長、というより、信じられるようになったそうです」


「ルナが言ったんですか」


「言いました。毎回帰ってくるから、今回も帰ってくると信じられる、と」


カナが、少し黙った。


「それは、凪さんが積み重ねてきたことですね」


「そうですね」


「毎回帰ってくることで、信頼が積み重なる。記録が積み重なって証拠になるのと、同じ構造ですね」


「そうかもしれないですね」


「ルナは、本当に鋭いですね」とカナは言った。


「そうです」


「また会いたいです、早く」


「帰ってきたときに、また会えます」


「待っていてくれますね」


「待っています。ルミも待っています」


カナが、少し笑った。


「ルミにも、会ってきたので。帰ってくる理由が、また増えました」


「そうですね」


ミアが、後ろから来た。


「二人で何の話をしていましたか」


「帰ってくる理由の話です」とカナが言った。


「帰ってくる理由が必要なんですか」


「必要ではないですが、あると嬉しいです」


「私は、記録の続きがあるから帰ってきます」とミアは言った。


「それで十分ですね」


「十分です」


シロが、前を歩いていた。


振り返った。


「どうしましたか」


シロが、後ろを見た。


集落の方向を見た。


それから、また前を向いた。


「見てたんですか、ルナを」


シロが耳を動かした。


「心配していましたか」


シロが、尻尾を振った。


心配ではなく、気にしていた、という感じの振り方だった。


「ルナ、泣いていなかったですね」


シロが、また尻尾を振った。


「良かったですね」


また振った。


「帰ったら、また会えます」


シロが、前を向いた。


歩き始めた。


行こう、という歩き方だった。


「行きましょう」


四人と一頭で、歩いた。


初夏の道だった。


草が、背丈を増していた。


「前に来たときは、春の道でした」とミアが言った。


「そうですね。春咲きの花が咲いていました」


「今は、夏の花ですね」


「季節が変わりましたね」


「この物語も、季節が変わりましたね」


「物語、ですか」


「私が記録している、凪さんたちの話です。春に始まって、夏になっています」


「そういう捉え方をするんですね」


「記録係なので」とミアは言った。「全体を見る習慣があります」


「全体を見ると、どう見えますか」


「最初、凪さんは一人で森の中にいました。今は、カナ先輩も、私も、ベルクさんも、エイラさんも、ダロさんも、センさんも、ガレス王も、ゴルも、レナさんも、ルナも、ガルさんも、シロも、精霊も、みんなつながっています」


「増えましたね」


「増えました。一人で始まって、どんどん増えた。花を一本咲かせた場面から始まっているんですよね、記録が」


「そうですね。最初に池に行って、精霊を手に乗せた日から書いていましたか」


「そこから書いています」


「全部が残っているんですね」


「全部残っています」


「ありがとうございます」


「礼はいいです」とミアは言った。「記録することが、私の気になることなので」


私が、少し笑った。


「気になるから、するんですね」


「そうです。凪さんと同じです」


「同じですね」


「全部つながっていますね」


「全部つながっています」


エン山への道を、歩いた。


夏の風が吹いた。


温かかった。


帰る場所が、後ろにあった。


向かう場所が、前にあった。


どちらも、確かにあった。


「行きましょう」


シロが尻尾を振った。


カナが歩いた。


ミアが歩いた。


全員で、歩いた。

六十五話目、書きました。


「ルナが泣かなくなった理由」が、この話のテーマでした。成長したから、ではなく、信じられるようになったから。信じる気持ちが、心配より大きくなった。精霊が毎日来てくれることを信じられるようになったように、凪が帰ってくることを信じられるようになった。これは、凪が積み重ねてきたことの結果でした。


「走って迎えに来なかった」「ここで十分」という場面。前回より小さく手を振った場面。大げさに振らなくても届くと知っている、という描写に、ルナの変化を込めました。


カナが「記録が積み重なって証拠になるのと同じ構造」と言った場面。信頼の積み重ねと、証拠の積み重ねは、同じ構造。カナが記録係として、自然につながりを見つけた場面でした。


ミアの「全体を見る習慣がある」という言葉。記録係は、今を書きながら、全体も見ている。春から始まって夏になった物語を、ミアが見ていた。


次話はいよいよエン山の調査です。第三部の締めに向けて、大きく動きます。


また明日。


原案・構想:マスター

物語構成・本文作成・文体調整:クルス(Claude)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ