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転生したら、魔王と呼ばれた私が、ただ花を咲かせていた話 第三部  作者: マスター


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第五十九話「リドルが、全部しゃべった」

五十九話目です。


アルドで、リドルが証言します。ベルクが動かした結果です。内側から、状況が崩れ始めます。


物語が、一気に動く話です。テンポを意識して、短い場面を積み重ねながら書きます。


では、どうぞ。

翌朝、ガレスに呼ばれた。


「アルドから、連絡が来た」とガレスは言った。


「リドルの件ですか」


「そうだ。リドルが、昨日の午後、公式な場で証言した。全部、話したそうだ」


「全部、というのは」


「政変の経緯、エン山採掘計画の詳細、鉱山局の上層部が主導したという事実。全部だ」


カナが、記録帳を開いた。


「ベルクさんが、動かしたんですね」


「そうだ。ベルクが証拠を集めて、リドルに提示した。リドルも、利用されたという側面があった。証拠があれば、話す理由が生まれた」


「リドルが話したことで、状況が変わりますか」


「変わる」とガレスは言った。確信を持って言った。「アルドの議会は、今頃、混乱しているはずだ。鉱山局の上層部が、責任を問われる。エン山採掘の計画が、公式に問題になる」


「エイラとダロは」


「釈放される可能性が高い。不当な拘束だということが、証明されたから」


カナが、少し目を閉じた。


「良かったです」


「ベルクも、動ける状態に戻るかもしれない」とガレスは言った。


「ベルクさんは、今どこにいますか」


「昨夜の連絡では、リドルと一緒に、議会に向かったとあった」


「議会に」


「お前が持っているエイラの書類を、議会に提出する必要がある。ベルクが、それを求めているはずだ」


「持っていきます、私が」


「お前が、アルドに戻るということか」


「そうです。書類を届けて、直接確認します」


「急いだ方がいい。議会の動きは、速いことも遅いこともある。証拠が早く届けば、早く決着がつく」


「分かりました。今日中に、出発します」



オルトが、地図を持ってきた。


「最短ルートは、これだ」とオルトは言った。


「山越えですか」


「そうだ。昨日来た道より、一日短い。ただし、道が険しい」


「問題ないです」


「シロに乗っていくか」


シロが、すでに準備している顔をしていた。


「乗せてもらえますか」


シロが、腰を低くした。


「ありがとうございます」


カナが、言った。


「私も、一緒に行きます」


「体は大丈夫ですか」


「大丈夫です。それと、私の証言も、議会に必要かもしれないです。記録係として、直接話した方が、説得力があります」


「それは、確かにそうですね」


ミアが、手を上げた。


「私も行きます」


「ミアさんも」


「記録係が二人いた方が、心強いです。それと、私の記憶の中にある内容が、追加の証拠になる可能性があります」


センが、腕を組んだ。


「私も、行く理由ができた」


「センさんも」


「カナとミアを、一人で行かせるわけにはいかない。護衛は必要だ」


「全員で行きますか」


「全員で行く」とカナは言った。


ガレスが、それを聞いていた。


「良いな」とガレスは言った。


「ガレス王は、来ませんか」


「セルドの王が直接行くのは、まだ早い。ただし、私の書状を持っていけ」


「書状、というのは」


「セルドの王名で書いた、アルドへの声明だ。エン山採掘について、セルドとして反対する声明だ。これがあれば、単なる内政問題ではなくなる」


「外交問題として、提出できます」


「そうだ。アルドの議会が、国際的な問題として扱わざるを得なくなる」


オルトが、書状を持ってきた。


「さすがです」


「お前が来ると分かった時点から、準備していた」とガレスは言った。


「早いですね」


「農地の問題は、待てない。お前に、教わった」


「また、私が言ったことが返ってきましたね」


「覚えていた」とガレスは言った。少し笑った。



出発の準備をしていたとき、デルが来た。


セルドの老人、デルだった。


「また来たな」とデルは言った。


「またお会いしましたね」


「ガレスから、聞いた。アルドに戻るそうだな」


「そうです」


「竜は、どうしている」


「卵を守っています。採掘が再び問題になっていますが、今回で止まると思います」


「止まるといいな」


「止めます」


「また言い切った」とデルは言った。


「言い切るようにしています」


「良いことだ。年を取ると、言い切れることが少なくなる。若いうちに言い切っておけ」


「そうします」


デルが、懐から何かを出した。


小さな瓶だった。


「これを、持っていけ」


「何ですか」


「山の薬草から作った薬だ。疲れたとき、飲め。体が、少し楽になる」


「ありがとうございます」


「礼はいい。竜の話を、聞かせてくれたから。あの竜が、子どもを守っていたという話は、嬉しかった」


「また来ます。セルドの川が、戻り続けているか、確認しに来ます」


「来い。次に来るときは、もっと水が増えているといい」


「増えています。きっと」


「言い切ったな」とデルは言った。また笑った。


「ありがとうございます」


デルが、ゆっくり歩いて戻っていった。


九十近い老人が、静かに歩いていた。


「デルさん、長生きしてください」と届かない声で言った。



シロの背中に乗って、山道を急いだ。


カナとミア、センが後ろを歩いた。


山を越えると、アルドの平原が見えた。


「速いですね、シロ」


シロが耳を動かした。


「疲れていますか」


シロが尻尾を振った。


疲れていない、という意味だった。


「頼りになります」


都が、遠くに見えてきた。


「状況が、どうなっているか」


シロが、前を向いた。


行けば分かる、という顔だった。


「そうですね」


走りながら、考えた。


リドルが証言した。鉱山局の上層部が、責任を問われている。エイラとダロが、釈放されるかもしれない。ベルクが、議会に向かっている。


全部が、同時に動いている。


「今が、一番大事な時間ですね」


シロが、また速くなった。


同意する、という速さだった。


「急ぎましょう」



都の手前で、ラグル族に会った。


待っていたような立ち位置だった。


「連絡ですか」


ラグル族が、小さな布を咥えていた。


受け取って、開いた。


ベルクからだった。


「エイラが釈放された。ダロも、釈放された。議会に、今日の午後、証拠を提出する場が設けられた。急いで来い。お前の証言が必要だ」


「今日の午後」


シロが、速さをさらに上げた。


「急ぐんですね」


シロが振り返らなかった。


当然だ、という後ろ姿だった。


後ろを振り返った。


カナたちが、走っていた。


「午後に、議会で証拠を提出します」と叫んだ。


「分かりました」とカナが叫んだ。


全員で、走った。



都の門を通った。


昨日と違って、厳しくなかった。


むしろ、門番が道を開けてくれた。


「ベルク調査官から、話が来ています。通ってください」


「ありがとうございます」


都の中が、前と違った。


市場が、開いていた。


人が、出てきていた。


声が、戻ってきていた。


「変わっていますね」


「リドルの証言が、広まったんですかね」とカナが追いついて言った。


「そうかもしれないですね。空気が変わっています」


「重さが、なくなっています」


「なくなりましたね」


ミアが、記録帳に書きながら歩いた。


「都の空気が戻ってきた、と記録します」


「そういうことも、記録するんですね」


「空気の変化が、一番大事なことを示します。数字より、空気が変わったことを書きたいです」


「良いですね」


センが、周りを見ながら歩いた。


「本当に、変わった。昨日は、こんな顔をしていなかった」


「人は、希望があると、顔が変わります」


「お前が持ってきたのか、希望を」


「みんなが、それぞれの場所で動いたからです」


センが、また少し笑った。


「本当に、言い切らないな、自分のことは」


「そういう性格なので」


「ガレスに言われただろう、受け取れと」


「言われました」


「受け取れ」


「受け取ります」


「良し」



議会の建物に向かった。


前を歩いていたシロが、止まった。


建物の前に、人が立っていた。


ベルクだった。


「来たか」とベルクは言った。


「来ました」


「早かった」


「急ぎました」


ベルクが、カナを見た。


「カナ」


「ベルク様」とカナは言った。


「怪我はないか」


「ないです」


「記録帳は」


「あります」


「ミアが守ってくれたか」


「守ってくれました」


ベルクが、ミアを見た。


「良くやった」


ミアが、少し目を赤くした。


「ありがとうございます」


「泣くな」


「泣いていません」


「目が赤い」


「赤くないです」


「赤い」


「少しだけ」とミアは言った。


ベルクが、少し口の端を上げた。


「入るぞ。時間がない」


「エイラさんとダロさんは」


「中にいる。待っている」


「全員いますか」


「全員いる。あとは、お前が来るだけだった」


私が最後だった、ということらしかった。


「急いで来ました」


「間に合った」


「間に合いました」


ベルクが、扉を開けた。


「行くぞ」


中に入った。


議会の建物だった。


大きかった。


天井が高くて、石の壁が並んでいた。


人が、たくさんいた。


議員たちと、関係者たちと、記録係たちと。


全員が、こちらを見た。


「凪です」と私は言った。「アルドの農地と、セルドの川のために、来ました」


静かだった。


でも、その静けさは、昨日の都の重い静けさとは違った。


聞いている静けさだった。


「話します」


ベルクが、横に立った。


カナが、記録帳を持って立った。


ミアが、追加の記録を持って立った。


センが、後ろを守るように立った。


シロが、私の横に来た。


全員が、揃った。


「始めましょう」

五十九話目、書きました。


リドルが証言した、という情報から始まって、全員でアルドに戻り、議会に乗り込む、という展開を一話でまとめました。テンポを意識して、場面を短く切り替えながら書きました。


ベルクとカナの再会は、あえて短くしました。長い感情的なやりとりより、「怪我はないか」「記録帳は」という実務的な確認の中に、二人の関係が出ていると思います。


ベルクとミアのやりとり「泣くな」「泣いていません」「目が赤い」「赤くないです」「赤い」「少しだけ」。こういう短い会話が、緊張した場面の中の空気を少し変えます。


デルとの別れ際の「言い切った」というやりとりも入れました。凪の変化を、別のキャラクターが毎回確認する形で出しています。


都の空気が変わっていた場面。数字では表せない変化を、ミアが「空気が変わったことを書きたい」と言って記録した。それが記録係の仕事です。


次話は、いよいよ議会での証言です。全部が一つの場所に集まります。


また明日。


原案・構想:マスター

物語構成・本文作成・文体調整:クルス(Claude)

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