第十一話 自分が、変わりつつある。
⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎。
どれほど愚かだろうか。
⬛︎⬛︎を持った⬛︎⬛︎⬛︎が、⬛︎⬛︎⬛︎を搾取する。
愚かは、⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎存在。
数多の数字がまた時計の針を逆に戻しながら、⬛︎⬛︎する。
【193年10月10日】
名もない子は、9歳となった。
今も陰湿な虐めは続いてる。
だけどミーの支えが、名もない子の虚無を色のある世界に変えつつある。彼は、まだまだ灰色の世界で生きている。彼女は、彼をその世界から引きずり出すのではなく、変えようとしていた。
虐めは、生命が持つ根本的な知識であり、これを脱脚させる事はできない。それは生きるために刻まれた生存戦略であるから。生きるために産まれた本能の一つだからだ。
けれど、排除すれば生命に何が残る?
―秩序が産まれない崩壊の理。
生命は、そうして生きて来た。
何もない虚無の中で産まれた世界の寄生虫―
「君の誕生日とか聞いてなかったね、教えてよ。」
「……分か…らない。」
「えっ?…分からないの?」
「そんな事ある?!」
ミーは、物珍しそうに驚いた。誕生日を分からないなんて、とても驚いただろうね。誰もがそれを持っていて覚えている物だと思っていたから。
「えと…じゃあ…自分が何歳なのかも分からない?」
「うん…。」
「……よしっ!分かった!」
「なら私が君の誕生日を考えてあげる!」
「いいの?お祝いとかされるの?」
「そうだよ、今日から君は、お祝いされるんだよ。」
「今日から君の誕生日は、この日だからね。私が決めたから。」
「嬉しいかも。」
「嬉しいでしょ。えと今日はー…」
ミーは、カレンダーを見た。
数字が並び過ぎた日は、黒文字で線が引かれている。引かれてない線を見ると10/10と書いてあった。
「1015年10月10日か…今から君の誕生日は10月10日だよ。覚えてね。」
「そう言えば何が欲しいのか、一つも聞いてなかったね。いきなりだけど何が欲しい?」
「今日の…デザート欲しい…我儘…かな?」
「そんな事ないよ。今日のデザートは、もちろん食べたかったけど……マーマパイあげるのは少し抵抗でるなぁ…でも君の誕生日プレゼントだから遠慮なくあげるけどね。」
「ミー…ありがとう。」
「ふふ。君に感謝してもらえたの、いつぶりかな。もっと感謝できる時はした方が良いんだよ。自分もスッキリするから。」
「それじゃあ続きしよっか。あ、でも今日は君の誕生日だから、君がずっと先行していいよ。」
どうやら外でマルバツゲームをしてるみたい。
土の上を鉄棒で3×3の線を引き、マルとバツをかけるスペースに印をつける。
今のところ62勝0敗407回の引き分けで、ミーが勝っている。遊びに手加減など無かった。遊びは真剣に取り組むこそ遊びであるから。
真剣に取り組みながら、感情が揺れて動き出し、名もない子はどうしたら次に勝てるのかを考えている。その結果負けないための配置を理解したが、全てが引き分けになる泥試合になっていた。
どこに書いてもミーが決まった所に印をつける。
どうやっても勝てないみたいだ。
ここに置いたらミーが真ん中に書く…そしたらまた引き分けになる。どこに書いたら勝てるかな…。
真ん中に書いて…いや、それだとまた引き分けになる。
勝ち方が絶望的に分からない…。
うーん…。
「もう僕さ、勝てないよ。」
「え?もう降参?…確かに結構したね。」
「私がほとんど勝ってたけど…。」
「いやまだやる。」
「やるの?次は勝てるといいね。私は勝ちを譲らないけど。」
次は、左下に書いてから、反対の角に書こうかな。でも、結局は引き分けになる。この単純だと思ったけど難しいな…左下に書こう。
「そこにまた書くのね。」
「私は、真ん中に書こうかな。」
ミーは、真ん中を書いた…また引き分けになる。僕には分かる。沢山やってきた中でどう終わるのか先が分かるんだ。
「また引き分けになったね。」
「まだまだ続ける?」
続けるしかない。一度でも勝ちたい…僕は、諦めない。
次もまた角に書く…右上に。
「私は左下に書こうかなー。」
カキカキ
次は、真ん中にしてみようかな。
そうしたらミーは、真ん中の左に書いた。ミーの顔が少し失態をしたような顔を少しだけ見せた。これは勝てるかもしれない。勝てる…勝ちの線が二つできた。
やっと勝てた。勝利が目の前にある。
「あちゃー…やっちゃった。」
そしてミーは、真ん中の上に置き、僕は右下を書いた。
やっと勝った。
僕は勝ちを表すように強く左斜めに線を引く。
とても力がこもっていた線だった。
「やっと勝てたね。」
ミーは、僕が引いた線を見て嬉しそうにする。
僕が勝てたのがそんなにも嬉しい事なのかな。
「この遊びに燃えてくれて嬉しいな。」
「強くて賢い私に勝てたご褒美に、花の冠作ってあげるね。君にピッタリで良く似合うと思う。」
「それ作ったら4個目だね。失敗しないでよ。」
「はいはいわ分かってますよーだ。中途半端な花の冠が嫌なら自分で作りましょうね。あ、でも誕生日か。」
「作るよ〜。」
ミーは、名もない子に花冠を作る。そこら辺に生えてある小さな花をプチッとちぎり、器用に作っていた。
ミーは意外と頼りがいがありそうだが、少し抜けている部分がある。その証拠にドヤ顔はするが、完璧にできないなど私が考えた事ができなかったとか、どれも中途半端に終わるかだ。このようなのは物を作る時でし発揮しない。人間関係を含めたら完璧だが…。
「今日は、上手にできそうじゃん。」
「今日はってなに?今日はって。前のやつでも十分できてたでしょ。」
「そうかなー。なんか見栄え悪かったりボロボロだったでしょ?。」
「物作るのド下手ですけど何か?!」
「あ、ごめん。」
ミーに怒られたみたいだ。それでもミーは、花冠を作る。やっとできたみたい。前と比べたら十分マシな方だ。
「できたよ!見てよこれ!今までで1番上手に作れた!」
「ほーら被ってー。」
ミーは、名もない子の返事を聞く前に完成してから頭の上に乗せた。名もない子は微笑む。
「前よりも綺麗に作れてる。それでも僕の方が上手だけど。」
「なによ…こんなの技術の問題よ。」
「それ自分で下手ですって言ってるじゃん。」
「もー!。」
結局は、名もない子も花冠を作った。
二人は、親友とも言える関係性にまで関係が深まり、ミーの私情も忘れていった。遊びの中で名もない子が成長しながら、自分を取り戻していく。
無機物のようで空っぽだった中身に、彼女の暖かい心臓に反応して脈動を分けてくれたから。そのおかげで、彼の中身は脈動し、ドクドクと人を取り戻していく。
今では、冗談やいじりを言えるぐらいにまで。
素晴らしい成長ではないか。
お互い作った花冠を渡して、お互いが花冠を被り、お互いが指を差しながら笑っている。
―夜が来た。
もう暗くなり、晩御飯の時間かもしれない。
作り過ぎて、花が少なくなったな…。
これで最後かも。
「この花冠さ誰にも見つからないとこに隠しとくね。」
「君めっちゃ気が効くじゃん。」
僕は、誰にも見つけられないような所に隠す。
この学校の壁と小さな木の間に。ここは誰も通らない。倒れる幅が狭くて、草が生えた小さな木が通路を阻むから。ここは何かを作った時に、保管する場所としたら最高だ。最初は僕が見つけた所だけど。
「隠してきたよー。」
「もう行こっか。」
僕はミーと一緒に玄関に入る。
真っ直ぐに歩き左の廊下をちょっと歩いた場所に、皆んなが集まって食べる食卓があるんだ。
「マーマパイ楽しみだね。」
「誕生日バースデー様、わざと言ってますか?」
「別に言ってないけど?」
この言葉で表せない、この感じが楽しい。
僕とミーは、椅子に座り晩御飯が出るのを待つ。待って少しも経たない内にテーブルの上に食べ物が置かれる。今日の晩御飯は、初めて見るものが少しあるけど気にしない。
食べれたらそれで十分だから。
パンの上に丸焼きにされた小動物がある。
…これを…食べるの?匂いは食欲を唆るけど抵抗がある。見た目は、玩具みたいだけど、焦茶色のソースが塗られてる。
「今日は魚料理だね。誰かが寄付してくれたのかな?とっても贅沢な食事だよ。」
「これって珍しいの?丸ごと焼かれてて、腕とか足とかない動物みたい。どうやって生きてるのかな。」
「魚しらないの?」
「知らないのも無理ないよね。魚って海に生きてて、超が10個以上付くぐらいに珍しいの。これを食べられる人なんて最上位の貴族しかいないんだよ。」
「へー。どのくらい凄いのか分からないけど、もう食べるね。」
パク。
「っ?!ホカホカしてて美味しい。この焦茶色のソースも味わった事ない。」
「今日は、運がいいね。」
「誰も知らない誕生日に魚が出るなんて。私と食べちゃお。…あれ?骨とか大丈夫?。」
「骨?全部が柔らかて分からないけどやばいの?。」
「骨抜きされてるのね。なら安心して食べれる。」
魚は、とっても美味しかった。
今まで食べた事がないぐらい美味しかった。最初は丸ごと出されてて気持ち悪かったけど、今はそんなこと思えない。それを思い出させないぐらいに美味しいから。
うげっ…まっず!……頭の部分と、その近くにある肉が不味い…。こらは食べられそうにない…美味しいのに全部美味しくないのは残念。うわ…まだ味が口の中で残ってる…。パンとオニオンスープで早く洗い流さないと…。
「この魚って言うの…頭の部分クソ不味いね…。ボコボコの野菜食べてるみたい…。」
「頭の部分は苦くて不味いからね…この部分は本来捨てられてる部分なんだ。」
「なんでそんなもの捨てないで出すんだよ…。」
「分かるよその気持ち。寄付して貰った食べ物だから捨てて欲しいよね。頭は勿体無いと思ったんじゃない?あれ?あの料理の叔母さん…頭を美味しそうに食べてる。…大人の味とかなのかな。」
皆んな食べ終わりデザートが来た。
やっぱりミーの大好きなマーマーパイは、僕も大好きだ。ミーの分も食べれるなんて最高だ。二つも食べれるなんて。でも食べ切れるかな?。
木の小皿で用意されたマーマーパイがテーブルに置かれて、ラルフがそれを盗んだ。
「あ……。」
ラルフは悪びれることすらなく、目の前で豪快に食べた。
「へっ。見ろよこいつの顔。僕の分が食べられたーって間抜けな顔してる笑。」
まさか…盗まれるなんて…誕生日だからと気分が良くて浮かれていた…。いつもなら警戒しないとデザートをラルフに盗まれる。盗まれたら直ぐに食べられるので取り返しはできない…。悔しいけど受け入れるしかない。
しかし周りの人は、マーマーパイを食べている。
前までは、僕を笑っていたけど…それが続いていたのか飽きたのか分からないが、誰も見向きもしない。空気同然だ。
ラルフは、満足気に自分の席に座り二つ目のマーマーパイを食べていた。
「ごめんね…気づかなかった。私が目を見張っていたら…。」
「大丈夫だよ。」
「ミーの分がまだあるから。」
「あ…そうだったね。結局は奪わらてないようなもんだし。本当だったら二つ食べれたから、何もされてないと一緒だね?。でも、こんな誕生日嫌だよね?。また来年になったら私が誰にも盗まれないの考えておく。」
「ありがとうミー。それよりマーマーパイ頂戴」
「はいどうぞ。」
サクッ
「やっぱりデザートの中でこれが1番好きだよ。」
「良かった。」
「ハッピーバースデー。」




