第十話 自分が、恐れ欲する。
⬛︎⬛︎…。
何もない空間から⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎。
⬛︎⬛︎すると言うことは罪だ。
⬛︎⬛︎は、一つ一つが⬛︎⬛︎にやって来た。
それが⬛︎⬛︎⬛︎と⬛︎⬛︎⬛︎だ。
それらは、罪として⬛︎⬛︎された。
だが、誰かがそれを⬛︎⬛︎しようと⬛︎みた。
⬛︎⬛︎⬛︎な⬛︎⬛︎は、それを⬛︎⬛︎させ⬛︎の罪に⬛︎⬛︎した。
⬛︎⬛︎⬛︎と⬛︎⬛︎⬛︎は、⬛︎⬛︎となり、全てを飲み込んだ。
そして無だけが残った。
【193年2月2日】
―自分は目を覚ました。
ミーが言っていた明日が来たんだ。
明日を待ってたんだ。
ポカポカとした光が窓から自分らを包み込む。
この日光も、暖かさがあった…だけど、あの暖かさではない。それでも何か、気持ちよく寝れた気がする。
これはどんな気持ちなんだろうか。
自分の隣で眠るミーを見た。
まだまだ寝ている。自分よりも気持ち良さそうに寝ている。それはとても…可愛く思えた。
どうやら皆んなまだ寝てるみたい。
自分は早く起きたんだね。もう一度寝ようかな。
なぜだか分からないが…今日も昨日みたいに同じ日を過ごしたいと思った。暖かさを無条件に与えてくれるから。
だけど…安心して寝られたが、それを嬉しいと思っていいのか分からない。自分は…幸せになるに値するのか―。
「あ…おはようぅーーーん。」
ミーは背伸びをして起きた。
両腕両足をピンと伸ばして口を大きく開ける。
「どうだった?よく寝れた?」
名もない子は、頭を縦に振る。
とってもよく寝られたみたいだね。
「皆んなまだ寝てるみたい…」
「今から下に降りて外で遊ぼうよ。」
「……ん。」
名もない子は、大人しくミーについて行き、寝室から出る。
ミーと名もない子は、静かにベットから降りて1階まで降りた。偶然にも階段を降りて四歩前ぐらいにラルフが居た。ラルフは、こちらを見て何か言ってきた。
「おいおい。灰人と混血コンビじゃん」
「きっもい組み合わせだな。」
「なによ。キモいのはあんたよ。」
「自分らが人間だからって調子乗らないで。なんら私達と変わらないくせに。」
「あ?俺に今…気持ち悪いって遠回しに言ったのか?それと俺がお前らと同じ?意味不明なこと言ってんじゃねーよ!」
「今から痛い目に合わねーと駄目なようだな!」
ラルフは、拳を握る動作をして殴ろうとしてきた。だけど、その前にミーがビンタした。パンッと綺麗な音が鳴る。
「え?………は?……」
「あんたが手を出そうとしたのが悪い。」
「う…ぅぅ……うわーん。」
ラルフはビンタされて泣いた。痛みを知らない子だから人一倍に敏感みたい。誰にもビンタなんてされた事ないからね。お父さんにも打たれた事ないのにとか言いそうだけど、ラルフにお父さんなんて存在しない。
「う"わーん。お前ら絶対に言いつけてやる!」
「覚えてろよ!」
ラルフはビンタされた頬を手で押さえながら走り、二人を通り過ぎて2階に登った。これで二人に構うことに懲りたら良いのにね。
「うわ…あいつ泣き虫じゃん。」
「…プッ…私笑ってないからね。」
「……ふ。」
二人は、彼の醜態を見て面白かったみたいだ。
だけど、笑いは止んでミーは遊ぶことを思い出した。
「そうだそうだ。外で遊ぶ予定だったんだ。」
「今から何して遊ぶか聞きたい?聞きたいよね?」
「ん…。」
「えーとねー。私がここに来た時に誰かが泥団子を作ってたのを見たんだよね。今からそれ作ろうか!」
二人は外に出た。
外は広かった。遠くの向こう側には大きな石の壁が囲むように並んでいて。この教育学の周りには、レンガの壁で囲われていた。地面は砂場や土があり、草が足首まで生えている。それからレンガの向こうには家が沢山あった。他の人の声が聞こえる。
「よし、今から泥団子だからね。」
「作り方分かる?」
名もない子は、頭を横に振る。
「分かった。」
「まず泥団子って言うのはね。土を丸めて作る物なんだ。泥団子を作る時には水も必要なんだよ?でも安心して、丁度そこに井戸があるから。」
泥団子を作るには丁度良さそうな地面に、井戸がある。井戸の隣には誰が作ったであろう泥団子が数個置いてあった。
「見てよ、これが泥団子だよ。」
「あれ?でもなんかボロボロじゃん。」
近くで見ると結構ボロボロになっている泥団子だ。綺麗に丸く作られたのは分かるが、ひび割れたり欠けたりしている。
「本来なら鉄球みたいにピカピカで丸いんだ。だけどこれ、誰かに崩されたのかな?…まぁいいや。今から作るからそれ見てね。」
ミーは、井戸から水を出して、サラサラの土の上に落とした。土の上に水が残っており、ミーがそれを混ぜるように手で捏ねる。すると粘土のように土が纏まり丸くなってきた。だけど細い線や凸凹が残っている。
「じゃーん。簡単でしょ?」
「まだまだすることあるけど。一旦やってみて。」
名もない子は、井戸水を汲み上げた。その水を土の上にやりミーがやっていた事と同じことをする。ミーより水の量は多いが、なんとかなるだろう。
「おー。初めてにしては上出来じゃん。」
「そしたらね、次はこのくらい綺麗に丸くするんだよ。そういえば綺麗に丸くするの教えてなかったね。今からこれを手と手で転がすから見て真似して。」
ミーは名もない子が泥団子を作り始めてから綺麗に丸くできたみたい。そしてミーは転がしている。名もない子もそれを見て真似る。段々と綺麗な丸に変わっていった。
「私の泥団子ちゃんみたいに綺麗になったね。それからこのサラサラした土をかけるんだ。」
「そうそう。」
二人はサラサラした土をかけた。良い感じにできている。あとはラストスパートの鉄球みたいにピカピカさせることだけだ。
「うーーん……どうやったらピカピカにできたっけ。前は作ってもらったのを見ただけだし聞いただけで…。」
「うーーん。実は私ね作るの初めてなんだ。」
ミーは、泥団子を作ったことがないみたいだ。自分が見て知ってるから作れると思ったんだろうね。でもピカピカにできてないが状態は綺麗だと思う。
「ごめんだけど…これで完成にしとこうかな。」
「うん…。」
二人は、泥団子を作り誰にもバレない所に隠した。レンガの壁側にある、草で茂った所に。ここなら誰にもバレないし誰にも壊されない。
「また作り方思い出したら完璧なの作ろうね。」
「でも楽しそうにしてて嬉しかったよ。また明日も何か遊ぼうね。」
微笑ましい関係だ。
だけど、名もない子の心は…簡単には開かない。自分と関わってしまえばミーは、自分と同じ目に遭うと思っているからだ。要因を考えれば実際そう起こるが、ミーは強い。色んな意味で強い。安心はあるが、果たしてそれが良い方向に進むだろうか。タコが真水で生きるように。
朝食の時間が来た。
子供達と二人が席に座っている。
今日は、見た感じに硬そうなパンと豆にオート米。一口サイズの肉が二つあった。そして暖かいポタージュ。
「このパン絶対に硬いよね…。爪でツンツンするだけでタンタン聞こえるもん。レンガのみたい。」
「そ…れ……これに入れて…食べ…る…。」
「この黄色いくて、良い匂いがするスープにパンを入れて、ふやかしてから食べるってこと?」
「…ん。」
「教えてくれてありがとう。」
「えーと。まずは肉から食べてー、オート米を食べる。それから食べ終わったらパンを黄色いスープに入れる。…よしっ。」
速攻でやったみたい。肉は久しぶりにくる食べ物だから味わえば良かったのにね。硬いパンは、ポタージュを吸い込んでふやけた。
「お、いい感じかな。」
パクッ…
「うんま〜い。これいいね、好きな食べ物に入れよ。
名もない子も躊躇いはしたが、パンを手に取りポタージュに浸す。ミーの顔を見ながら、ゆはけたパンを食べた。ポタージュのコーンの味と味気ないパンに良く合った。パンを美味しく食べさせてくれる。
名もない子がこんなにも、人の目を気にしずにスープに浸したのは、成長だろうかね。
おっと…ラルフがまた見てるよ。まつ毛に涙が付いてるし顔が赤い。結構泣いたみたいだね。悔しそうに見てる。また食べ物を投げるかもしれない。ラルフの友達もこっちを見てる。
「ねー君…食べ終わったらすぐに外出よっか。」
「ん…。」
二人は食べ終わり、急いで外に出た。
それを見たラルフは、まだ食べ残っているのに立ち上がり、その二人の後をついて来た。
「ついて来てんじゃん…」
「手離さないでね、今から別ルート行くよ。」
ミーは、名もない子の手を掴み廊下を走った。
ラルフとその取巻きも付いてくる。
「待てよっ!足速っ!」
「はぁはぁっ、クソがっ。」
右を曲がり左を曲がり、また右に回る。
ぐるぐると走り回る。もう名もない子は体力が限界だ。
「巻けそうにないっ。外に出るよ!」
足にブレーキをかけて、左に飛び出した。
二人は外に出て宙を舞っていた。高さはそんなにないが、ゆっくりと落ちてたように見えた。二人は倒れてミーが下敷きになってた。
「…痛い。」
「っ!?…」
名もない子は、慌てて立ち上がる。
「あー痛かったぁ。私は大丈夫。」
「怪我してない?」
こちらを追ってくる足音が近づいて来た。
「おーい!混血と仲良くしようとしてる灰人が消えたぞ!」
ミーは名もない子の口を手で塞いだ。
バレて捕まればどんな目に遭うか分からないからね。
「シーだよ。バレたらやばいかもだから。」
こちらを追ってくる足音は近くまで来たが引き返したようだ。もう足音は遠くなっていく。
「はぁ…疲れたね。」
「とってもとっても疲れたよ。」
「…も…楽しかった………。」
「成長したね。」
ミーは微笑んだ。名もない子が少しでも声を出してくれるから。昨日までは、ずっと無言だったから。
自分は、ミーが何をしたいのかハッキリと分からない。自分のように分からない。これは、他の人にも当てはまる気持ちだけど。彼女は何か特別さを感じる。
この特別さをなんだろう。
何かを遊んでだり、ミーのおかげで食事をできたりと自分に、無提供に親切さを与えてくる。
その特別感は暖かさが取り柄なのか…
それとも苦しいことや痛いことをしないからなのか…
はたまた自分に関わってくれるのか…
答えが一つも見つからない。
でも、自分はミーと一緒に居たから幸せな気がする。幸せが、よく分からないけど幸せな気がするんだ。
そして、自分の中で音がする。
なんの音なのかは定かではない。
だけど分かるんだ。
何かが産まれようと欲している。
何かが這い上がる。
自分を陰に追いやろうと影が自分を攫おうとし、影達の腕がびっしりと自分の体に巻き付いてくる。数多の腕らしき影が自分を包み込みそして―
―自分は抵抗する。
その感覚の中で影に飲まれないよう自分は自分であると言う自己意識を指で数えながら、何もない自分に抵抗する。
そんな些細な抵抗をしていた。
この影達は自分の敵なのか分からない。
でも一つだけ答えが分かるんだ。
こんな何一つ正解のない大地の中で…。
―この影達は自分を守るために存在する。
それからミーと出会ってから何かが這い上がろうと破る音が聞こえるんだ。この欲そうとする影達は、ミーと出会ってから衝動的に動き出した。
今までは陰で大人しく影が成長していた。
けれど、今がその時だと出ようとしている。
この影が出て来た時に自分は…死体になるかも知らない。
自分が死ねば…ミーは覚えてくれるだろうか。
そんな恐怖が自分を自分で締め殺す。
ミーは太陽のように特別で暖かい存在の中で、自分は…自分だけはと、その太陽を独り占めしたい。
どうか太陽よ…自分をよく覚えてください。
時間を暖かさで消してくれる優しい太陽よ―
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!。
少しでも面白い!続きが読みたい!と思っていただけたら、ブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです!皆様からの応援が、執筆の大きな励みになります。
これからも【名もない赤子】をよろしくお願いいたします!。




