第二十七話 新たな手紙は婚約願いではなく縁談会だった
翌朝、ラ・ギーズ家には、また手紙が届いた。
ベランジェは朝食の席で、家令が封書を持って入ってきた瞬間、ほとんど椅子からずり落ちかけた。
「今度は、どこだ」
家令は封蝋を確かめた。
「クラール家でございます。ヘルミーナ・ド・クラール様より、縁談会へのご招待です」
モルガナが静かに言った。
「縁談仲介で名高い未亡人でございますね」
ジャンはまだ来ていなかったが、クラリッサには、彼がいればきっと嫌な顔をしただろうとわかった。
「縁談会?」
クラリッサは眉をひそめた。
「わたくし、もう十分縁談しておりますわ」
ベランジェは、少しだけ希望を込めて言った。
「今度こそ、穏やかな場かもしれん」
オルタンスは封書を受け取り、文面を読んだ。
「令嬢と令息を一堂に集め、それぞれの家格、持参金、相続見込みを照らし合わせて、もっとも相応しい縁を探す会、とあります」
クラリッサの顔が、ゆっくり険しくなった。
「今、持参金と相続見込みとおっしゃいました?」
モルガナが言った。
「お嬢様」
「何?」
「お顔が、かなりよくない方向に整っております」
「そうかしら」
「はい。何かを壊す前のお顔です」
ベランジェが小さく呻いた。
「そうだ、ジャン君を呼ぼう!」
クラリッサは招待状を受け取り、じっと見た。
紙は上質だった。
文字は丁寧だった。
だが、その中身には、妙に値札の匂いがした。
「縁談会」
クラリッサは呟いた。
「いかにも嫌な響きですわね」
青いリボンの騒ぎは、まだ静かな余韻を残していた。
けれど次の場では、リボンどころではない。
令嬢たちの名前そのものに、値段がつけられようとしていた。




