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第十七話 慈善家たちの茶会

 ミロシュ・ド・ヴラニェクの慈善茶会は、王都の南東にある小さな庭園で開かれていた。


 庭園といっても、貴族の遊び場というより、施しのための場として整えられているらしい。

 入口には白い布で覆われた長机が置かれ、その上には寄付帳、募金箱、菓子の皿、温かな茶の壺が並んでいた。

 奥には子供たちが何人か集められている。孤児院の子らしい。


 クラリッサは馬車を降りるなり、眉を寄せた。


「善意の匂いがしますわ!!」


 ジャンは言った。


「薔薇の香りよりはましだと思うけど」


「善意は、時々薔薇より強く香ります」


 モルガナが外套の裾を整えながら言った。


「お嬢様。今日は寄付の場でございます。菓子の量に文句を言わないように」


「まだ言っておりません」


「先に申し上げました」


「もっと信頼してくださいまし」


「信頼は積み重ねでございます」


「またそれ!」


 そこへ、ミロシュ・ド・ヴラニェクが近づいてきた。


 彼は柔らかな栗色の髪を持つ青年だった。

 シリルほど華美ではなく、ラドヴァンほど硬くもなく、テオバルドほど甘くもない。人のよい笑みを浮かべ、白い手袋をはめている。


「クラリッサ・ド・ラ・ギーズ嬢。お越しいただき、光栄です」


「お招きいただき、ありがとうございます」


 クラリッサは礼を返した。


 ミロシュはジャンにも丁寧に挨拶した。


「シャトノワ殿。ラ・ギーズ家とは古くからご縁があるとか」


「ええ。縁という言葉は、便利ですね。だいたい断りづらい時に使われます」


 ミロシュは一瞬だけ不思議そうな顔をしたが、すぐに笑った。


「ご冗談が上手い」


「冗談に聞こえたなら、成功です」


 クラリッサは、ジャンの横腹を肘で軽くつついた。


「少しは愛想よくなさい」


「僕にそれを求めるのは、君が静かにするのと同じくらい難しいことだよ」


「失礼ですわ!」


 ミロシュはそのやり取りを、穏やかに見ていた。


「お二人は、本当に親しいのですね」


「幼なじみですわ!」


 クラリッサは当然のように言った。


「ジャンは、昔からわたくしの――」


「後始末が得意ですの、とは言わないでくれ」


 ジャンが先に遮った。


 クラリッサは少し不満げにした。


「では、昔からわたくしの周囲にいる人ですわ」


「雑な紹介だなあ」


「でも事実でしょう」


「事実は時々、人を雑にする」


 ミロシュは微笑んだ。


「信頼できる方が近くにいらっしゃるのは、よいことです」


 クラリッサは、その言葉を聞いて、ほんの少しだけ身構えた。


 ラドヴァンも同じようなことを言った。


 信頼できる方が近くにいるのは、良いこと。


 その言葉自体は悪くない。

 だが、女のそばに誰かがいて、女の言葉を整えたり、支えたり、時には押さえたりする。

 それが当然だと思われているようで、少し気に入らなかった。


 もっとも、クラリッサの場合、多少押さえた方がよい時もある。


 そこが腹立たしかった。


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