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地球人に人権がない銀河で、零細猫耳社長にスカウトされました ~生体パーツ扱いのどん底から操縦チートと拿捕ビジネスで成り上がる~  作者: 星灯ゆらり
第6章 銀河辺境大戦

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104.中身入りデブリ

『『『みゃ!』』』


 猫攻撃機が発進する。

 地表の戦闘機を思わせる機体が、4つのエンジンが発する光で、暗い宇宙に浮かび上がって見える。

 数は20隻。

 4隻ずつが瞬間的に姿を消すように見えるのは、4隻ずつがそれぞれ別の獲物を狙って加速したからだ。


 大戦果をあげた直後であり、ピンチをくぐり抜けた直後でもあるのに、やる気と体力にあふれていて頼もしい。

 ただしそれは一面的な見方だ。


「ひとりくらい、猫ボート艦隊の指揮をして欲しかったんだけど、みんな面倒臭がって!」


 ベリル陛下がご機嫌斜めだ。

 船長猫耳たちには司令猫耳ほどの指揮能力はないが、自分が先頭で戦いながら少数の船を率いるのは上手い。

 だから、運用法によっては戦闘も可能な猫ボート艦隊の指揮官としては向いている。

 なお、猫ボート艦隊は、現在は遠隔で俺が指示を出して、最寄りの物流拠点にエネルギー補給用のパーツを取りに行かせている。


『こういうときは毎度と言えばいいのでしょうか』


 艦隊指揮中なので制服姿の星系管制が、鬱陶しい笑顔で通信してくる。

 第7営業艦隊による護衛は無料ではない。

 銀河輸送という強敵相手に戦争中の俺たちへの協力は、あらゆる意味で『高くつく』。


 第7営業艦隊にとどまらず、銀河通商全体が銀河輸送に敵視されて最悪宣戦布告されるリスクを負う。

 神聖猫耳王国が支払う護衛料も、とんでもない額になる。


「必ず払うから支払期限を遅らせてくれないかな?」


『銀河帝国からの大規模出資を受け入れるなら支払い不要になりますよ?』


「えぐいっす……」


 俺に密着したままのスッスがうめく。

 星系管制が提示した出資額は、受け入れたらしばらく全力で戦争できるかわりに、神聖猫耳王国が銀河帝国の属国になるしかない額だ。


「データでは銀河通商からになっていますが」


「猿谷さん。こちらの実情を分かってるみなさんを相手に誤魔化しはしませんよ。面倒ですし」


「予想はしていたけど、通商は実質的に銀河帝国の国策企業なのね」


 ブルネットが納得顔になっている。

 俺は『銀河帝国領内に本社がある巨大企業』程度にしか認識していなかったので、かなり驚いている。


「スッス。これまで言わなかった理由、聞いていい?」


「守秘義務ってことで察してくれると嬉しいっす」


「にゃーには政治もよく分からんにゃ。サル、この出資、受けるにゃ?」


「ちょっとキン姉! こんな話、受けるわけないじゃない! 僕ら、猫耳の唯一の国だよ!?」


「今ある資金じゃ銀河輸送の本拠まで攻め込むことはできねーにゃ」


 政治も軍事も分からないと自称するキンではあるが、頭も技術も優れているし、勘はそれ以上に優れている。

 今なにが足りないかの判断は、他の面々より上かもしれない。


『えっ。ひょっとして出資を受け入れる流れですか? 私個人としては独立したまま生き残って、あとでたっぷり配当で儲けさせてもらいたいんですが』


 星系管制の、今は灰色っぽい光翼が、少し神経質に上下に動いた。


「サルくん、意見いい?」


「陛下、あとで地表の専門家にも聞いてくださいよ? 大事なのは目的を見失わないことだと思います。俺個人の目的は、トーティを酷い形で利用しようとする連中を消滅させる(行動を改めるなら殺す気はない)ことですが、神聖猫耳王国としては国の存続と国民の生命と財産の保護だと思っています。攻めてきた敵艦隊を滅ぼすのや拿捕するのまではいいですが、敵の本拠に攻め込む場合、戦争前より敵を増やしてしまって目的に反する行為になるかもしれません。少数で強力な艦隊や拠点を潰す奴は、恐れられます」


「うん? どゆこと?」


「やりすぎは危険ということです。組織としての地力では、神聖猫耳王国は銀河輸送に圧倒的に劣ります。銀河輸送の艦隊を破壊か拿捕する自信はありますし、銀河輸送の本拠の破壊なら可能です。ただし占領は無理です。拿捕猫耳の質は非常に高いですが、艦隊戦と比較して『まぐれ当たり』の確率が激増する移乗戦闘では敵陸戦隊相手に甚大な被害が出ますので」


 だから、敵地に攻め込むなら、占領ではなく破壊して、膨大な血を流すしかなくなる。

 流れるのが敵の血だけでも問題は巨大だ。

 そんな戦闘狂が現れたら、大勢で囲んで殴り殺すのが、当然だからだ。


「だめかな? 星間連合から除名はされないと思うよ?」


『星間連合から除名処分されなくても、悪名が轟きすぎて宣戦布告されまくる状況になれば、銀河通商も銀河帝国も、神聖猫耳王国への関与を止めると思ってください』


「そのときはサルさんを『スカウト』するための艦隊が、通商か帝国からやってくるというわけね?」


 ブルネットが、激情を抑え込んだ口調で言う。

 星系管制は、珍しく真面目な顔と態度で返答する。


『猿谷さん狙いで第2営業艦隊主力と帝国の正規艦隊が最低1つ。トーティさんについては、リゼーレさまが確実に介入されるでしょうが、その場合はトーティさんが人間として生きることは不可能と思ってください』


「トーティだけは助かりそうなのが、数少ない安心材料ね」


 言葉とは裏腹に、ブルネットの声は暗い。

 まだお腹にいる子供も、ベリルやキンたちも、保護の対象外と断言されたからだ。


 星系管制が俺を見る。

 その瞳には茶化す色は皆無で、俺が派手に事態を動かすことを期待する、悪神トリックスターじみた、ギラギラした輝きがあった。


「先のことも重要ですが、まずは目先のことを確実に解決していきましょう。攻め込んできた銀河輸送艦隊の生き残りには、タキオン砲装備の船が27隻含まれています。そのうちの1隻は機動要塞です。拿捕に成功すれば戦力強化が可能になり、今より効率的な作戦も立てられるかもしれません」


「なあサル。トーティのペットの機動要塞から、タキオン砲を半分くらい取り外すのはどうにゃ? 修理できていない機動要塞からだけひっぺがすなら、母港の防衛戦力もあんまり減らないと思うにゃ」


「姪ちゃんのペットから取り上げるのは気が進まないよ」


「それもありますが、あれだけ大きなものを一度分解すると、修復した後に性能が下がりませんか? 今はポンコツ機動要塞でも、躾と修理が完了すればある程度は使えるようになるかもしれません」


「にゃ。すぐに起きる戦いより、将来の戦いに備えるにゃ?」


 俺だけでなく、ベリル陛下も頷いた。

 通信要求を意味する音声が響く。

 『棒』を撃ち尽くした猫攻撃機が、傷ひとつない機体で『ゆっくり』と猫の巣号へ接近する。

 下僕が通信に応じると、艦橋内の大きな画面に、20人の猫耳船長が表示された。


『『『に゛ゃー』』』


 出撃してから短い時間しか経過していないのに疲れ果てている。

 機体にも傷はないが、エンジンが短時間の酷使によってうっすらと焦げている。


「一度母港へ戻りましょう」


 俺の提案に反対意見は出ない。

 少しして戻ってきた猫ボート艦隊から補給を受けてエネルギー残量を少し回復させた後、猫耳王国と銀河通商に関係のある船すべてが、手分けして警戒しながら母港へ飛ぶのだった。



  ☆



 母港に帰還した後、俺たちは補給と情報共有を大急ぎで開始した。


「敵の機動要塞はデブリ特化型!? なんで?」


 ベリルが驚くのも無理はない。

 猫攻撃機が持ち帰った戦闘ログは、俺たちの予想から大きく外れたものだったのだ。


「領域全体がデブリで覆われていますね。いや、デブリというより、薄い幕?」


「「「材質は不明ですが極めて頑丈です」」」


 船長猫耳たちと共に戦った下僕たちが補足する。

 複数方向から葉巻型小型船を追い立ててきた猫攻撃機が、危うく衝突しかかってエンジンを限界まで酷使し戦場から離脱する。


「「「にゃ」」」


 少し回復した戦闘猫耳たちが『ここを見て』という雰囲気で一点を指差す。

 一撃必殺を諦めた猫攻撃機が、4隻で1隻の葉巻型小型船を集中攻撃する。

 3連続の『棒』により3枚の薄膜が排除され、4本目の『棒』が葉巻型小型船に急接近する。

 猫の巣号による補助がないので光速の5万倍程度だが、いくら装甲が優れていても、小型船を一撃必殺する威力は十分にあるはずだった。


 画面の中で、艦載機の4分の1程度の大きさのデブリが飛んだ。

 いや、よく見ると、非常に単純な作りの宇宙船だ。

 居住性は極めて劣悪。

 優れた加速力を備えたエンジンと、一度加速するだけで精一杯の航続力しか持たない、片道専用の船に【見】えた。


「クソが」


 思考できない程度に『加工』された人造人間が搭載されて、センサーとして機能させられている。

 急加速した『デブリ』が『棒』にぶつかり、自身が中身ごと砕け散るのと引き換えに、『棒』の進路をずらして葉巻型小型船から遠ざけた。


「デブリが2種類!? 膜型デブリと、中身入りデブリ? 信じられない。そこまでする?」


「ほとんどの地球人には人権がない以上、効率のみを考えるなら有効です。……あのデブリは防御用兵器で、数が数ですから回収して再展開するのは困難です。ですから、あの艦隊が我々と対抗できるのはあの場所だけで、あの艦隊は我々の母港まで攻め込むことはできません。拿捕の難易度は上がってしまいましたが、放置も可能と思われます」


「僕は、放置したくないかな。サルくんと同郷のひとがもとになった人たちだし、地球人奪還社の人たちも激怒してるから。あと、そろそろ拿捕で稼がないと銀河帝国からの出資受け入れが現実化しかねないっていうか……」


「急いで拿捕の計画をまとめます」


「よろしくサルくん。悪いけど、猫の巣号の補給が終わるまでにお願い」


 エネルギー切れ寸前の機動要塞を『満タン』にするには時間がかかるが、それでもせいぜい1日か2日だ。

 俺はキンと船長猫耳に声をかけ、敵侵攻艦隊に止めを刺すための計画を立て始めるのだった。

ベリル  |司令Lv3-[財産Lv8]

ベリル  |司令Lv3-[財産Lv4] ※前回の作戦の経費と、整備と補給の費用を負担

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