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地球人に人権がない銀河で、零細猫耳社長にスカウトされました ~生体パーツ扱いのどん底から操縦チートと拿捕ビジネスで成り上がる~  作者: 星灯ゆらり
第6章 銀河辺境大戦

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103/105

103.奇襲作戦

 白翼人間が運営する、もとはブラックマーケットだった商業施設に銀河輸送の艦隊が寄港した。

 機動要塞1つと特大船64隻を中核とする、300隻を超える巨大艦隊だ。


「白翼人間は中立を宣言したっす」


「中立にゃ? にゃーたちの敵にまわってるにゃ」


「まあまあ。一応こっちにも情報を流しているわけですし、銀河輸送を降伏させたあとは言い訳くらいは聞いてあげましょうよ」


「サルが一番ブチ切れてるにゃ!」


「白翼人間があの施設をこちらによこすなら、光速の数十倍まで加速した『棒』を降らせるだけで敵艦隊を殲滅できるんです。頭にきて当然ですよ」


 発射プラットフォームである猫攻撃機は乗り捨てることになるが、脱出した船長猫耳と下僕をトラクタービームで受け止める自信はある。

 だが、すべては仮定の話だ。


「サルくん。それをやっても銀河輸送には別の艦隊があるだろうし、人間が大勢住んでいる場所を意図的に破壊したら、最悪の場合、星間連合から除名処分だよ?」


 星間連合は他国を滅ぼす戦力を持っていないが、星間連合から追い出されるような国とまともに取引する勢力は非常に少ない。

 結果的に、除名イコール破滅になる。


「除名されると取り引き先が減って猫の巣号の維持費も払えなくなるわ。ただでさえ白翼人間との取り引きが減っているし」


 ブルネットがため息を吐いて、全員が見える場所へ現在の財務状況を表示させる。

 かなりの衝撃映像で、俺も思わずうめいてしまった。


「サルくん。敵の戦力を分かってるだけ教えて」


「はい。敵侵攻艦隊は総勢321隻です。うちわけは、機動要塞1つ、葉巻型特大船が64隻、葉巻型小型船が256隻です。推定性能のデータはこちらをご覧ください」



◆ 蜂の巣型機動要塞 *1

船体:6 / 跳躍:2 / 航続:5 / 装甲:5 / 居住:3 / 船倉:6 / 兵装:4


◆ 葉巻型特大船 *64

船体:4 / 跳躍:2 / 航続:5 / 装甲:5 / 居住:1 / 船倉:2 / 兵装:4


◆ 葉巻型小型船 *256

船体:2 / 跳躍:5 / 航続:3 / 装甲:5 / 居住:1 / 船倉:0 / 兵装:2



 銀河輸送も【見】られることに対策はしていたが、銀河通商と比べれば非常に温かった。

 ひょっとしたら、上位存在とのつきあいがないか、弱い上位存在としかつきあっていないのかもしれない。


「あんまり強くなさそうにゃ。ぜんぶ新装甲を使ってるからかてーけど、タキオン砲搭載船は特大船の64隻だけにゃ」


「キン姉。それって錯覚だからね。普通にタキオン粒子を当てただけじゃ落とせない装甲とタキオン砲の両方がある特大船って、足が遅くても戦闘では強いんだから。敵拠点の攻略をするときとか、めちゃくちゃ強いよ」


「にゃーは艦隊戦はよく分からんにゃ。サルはどう思うにゃ?」


「頑丈すぎます。猫攻撃機は非常に強力ではありますが、一度に搭載可能な『棒』は最大で4本です。百発百中と一撃必殺を実現しても80隻しか落とせません」


「特大船と機動要塞だけ落とせばどうにゃ? 機動要塞も10本も当てたら落ちるにゃ?」


「それは俺も考えましたが……」


「キン。大きな船より小型船の脅威度は高いわ。多数の小部隊に分かれて、猫耳王国の母港以外を襲ったら、私たちには対処方法がないのよ」


「はい。分遣艦隊の戦力では、仮に撃退できたとしても甚大な被害がでます。猫の巣号で敵小部隊を1つ1つ殲滅することは可能ですが、それをすれば敵機動要塞と敵特大船と戦闘する前に維持費で破産します。敵小型船を拿捕しても、猫の巣号の運用コストを賄えません」


「それって、戦う前に負けてるって意味じゃないっすか?」


 スッスの表情は引きつり、光翼が神経質に『ぱたたたっ』と上下している。

 いつもは毅然とした態度で控えている拿捕猫耳たちも、動揺を隠せない。


 俺はスッスに答えず、無言でベリルに向き直る。

 ベリルは緊張した態度で、尻尾が無意識に床を叩いている。

 息詰まるような数分がすぎ、通信席のブランが声をあげた。


「陛下。ノワールから通信です。緊急度が最大のためこのまま繋ぎます」


『白翼人間が銀河輸送に屈しました。積極的に参戦する気配はありませんが、白翼人間の星系における通行権と補給を受ける権利を銀河輸送に与えました。確定です』


 スッスが天をあおぐ。

 しかし怖いくらいに真剣な表情で、俺個人に逃亡計画のデータを送ってくる。

 母港を捨て、ベリル運送時代からの古参メンバーとトーティ以外を切り捨てる、非情だが現実的な計画だった。


「ふー。間に合ったあ。ある程度対立してくれないと、商業施設を巻き込む攻撃ができないから……」


 ベリルから緊張が抜ける。

 尻尾から力が抜けて床でだらんとする。

 俺は逆に緊張して、かつてなく緊張している。


「索敵を再開します」


 これまで抑えていた自力センサーが本来の性能を発揮する。

 艦橋でこのときを待っていた下僕たちが、俺の自力センサーを利用して分析と報告を行う。


「銀河輸送艦隊を直接確認しました」


「現在の相対速度は光速の20万倍」


「銀河通商第7営業艦隊からデータ通信です。猫ボート艦隊は準備完了。以後も猫ボート艦隊の護衛を継続するとのことです」


 突然の展開に、スッスが小首を傾げた。

 光翼が『わたわた』とあちこちを向いて、最後には俺の手にしがみつくように伸びてきて、『押しのけようとする力』を突破して俺の手に触れた。


「最初から奇襲攻撃する予定でした。情報のセキュリティに自信がないので、外部との連絡を断って、敵に向かって加速を続けていました」


「私も詳細を聞かされていなかったのよ」


「にゃーもにゃ」


 ブルネットとキンがベリルを睨む。

 ベリルは「にゃあ」と鳴いて誤魔化そうとするが、姉ふたりはそんなことではごまかされない。


『『『にゃ?』』』


「猫攻撃機は攻撃を開始してください。エネルギー残量には特に気をつけて」


『『『にゃ!』』』


 猫の巣の甲板から『ふわり』と猫攻撃機が離れる。

 そして、猫の巣号と物理的に繋がったケーブルを介して『俺が【見】た情報』を受け取り、狙いをつけて『棒』を撃ち出す。

 目標は、商業施設の周囲で神聖猫耳王国の船の接近を警戒している船たちだ。


 猫攻撃機20隻が、狙いを変更しながら3度繰り返す。

 撃ち出すたびに反動で猫の巣号と離れるが、そのたびに危なげなく猫の巣の至近にまで帰還して、4度目で甲板に着艦する。


 攻撃はまだ終わらない。

 エネルギーを補給。

 『棒』を補充。

 母港にひとりも残さず連れてきた拿捕猫耳(補給猫耳)たちが、熟練の手つきで素早く補給と補充を完了させて再度猫攻撃機を送り出す。


「そ、そこまでやるっすか」


「猫の巣号に詰め込めるだけ『棒』を詰め込みました。この奇襲に失敗すれば負けですからね。注ぎ込めるものはすべて注ぎ込みました」


「猫の巣号のエネルギー残量、7パーセントしか残ってないっすよ!?」


「傘下の運送会社の猫ボート艦隊にトラクタービームで『受け止め』てもらいます。第7営業艦隊が護衛していますから、まあ大丈夫でしょう」


「そこで襲われたら先輩も自分も永遠に宇宙を漂流することになるっすよ!? 襲った連中は第7営業艦隊かリゼーレさまに滅ぼされるの確実っすけど!」


「攻撃を受けた直後に俺たちの意図を読み切り、その上で覚悟を決めて追撃できる、俺たちの負けですよ」


 猫攻撃機20隻が、2度目の攻撃を終えて着艦する。

 補給と補充はさらにスムーズになり、発艦と攻撃もますます洗練される。


 最終的に、4度目の着艦の時点で、銀河輸送の自力センサーが猫の巣号を捉えた。


 ここまで放った『棒』は320本。

 光速の約20万倍の速度で、猫の巣号の少し前を飛んでいる。


「くくっ」


 俺は笑いを我慢できなくなる。


「くふっ、あはっ」


 紅潮したベリルが上機嫌で笑い出す。

 下僕たちが淡々と報告を上げる。


「現時点の予想命中率8割」


「銀河輸送の船が商業施設の港湾区から緊急発進中」


「敵艦隊からの通信要求を多数受信。作戦通り無視します」


「現時点の予想命中率は8割のまま」


「弾着まであと10秒」


 ベリルが笑いを止める。

 エネルギー残量を5パーセント使って、320本の『棒』を追い越す。


「着弾します」


 上振れして260本が命中。

 自力センサーの性能不足を補うために、1隻あたり10人以上搭乗していた人造人間すべてが、一瞬にも満たない時間で船ごと砕け散る。

 一部の船はタキオン砲での迎撃を試みたようだが、光速の20万倍という圧倒的速度の前に、時間が足りなすぎた。



◆ 蜂の巣型機動要塞 *1

船体:6 / 跳躍:2 / 航続:5 / 装甲:5 / 居住:3 / 船倉:6 / 兵装:4


◆ 葉巻型特大船 *26

船体:4 / 跳躍:2 / 航続:5 / 装甲:5 / 居住:1 / 船倉:2 / 兵装:4


◆ 葉巻型小型船 *34

船体:2 / 跳躍:5 / 航続:3 / 装甲:5 / 居住:1 / 船倉:0 / 兵装:2



「先輩、まさか、パイロットの頭の中を全部【見】て敵船の動きを読み切ったっすか!? なんて無茶を」


「俺の読みをもとに当てたのは船長猫耳たちですよ。それに、体力的には問題ありません。トーティの尊厳を奪い尽くすつもりの連中をぶち殺さないと腹の虫がおさまらなくなるという問題はありましたが、321隻中260隻を殺したので、かなりスッキリしました」


「残骸がどこに飛ぶかの計算がちょっと自信なかったけど、近くの星系の恒星や惑星には飛んでないから問題なし! もし問題があっても悪いのは銀河輸送!」


 ベリル陛下が力強く断言する。

 この場にいる全員がベリルとの付き合いが長いので、『誤魔化しているようにしか見えない』と顔に書いてあるが口は出さない。


「陛下。猫ボートの艦隊を発見しました」


「うん!」


 このとき、俺とベリルの連携は完璧だった。

 猫の巣号に最後に残ったエネルギーを使い、猫ボートの艦隊が最も『受け止め』やすい進路へ変更した。


「あっ」


 だが、トラクタービームのタイミングがずれた。

 32隻のうちの半数以上が外れ、14本のトラクタービームが猫の巣号を捉え、猫ボートが限界を超えて『引っ張る』ことで猫の巣号の減速を試みる。

 残念ながら、当初予定の半数未満では、光速の9万倍まで減速するのが限界だった。


「陛下。猫攻撃機に避難してください。猫の巣号から離れて減速すれば、第7営業艦隊の救助が間に合うはずです」


「……サルくんは?」


「非常時用のエネルギー(というよりほぼ爆弾)を使って発艦を支援します」


「あなた!」


「先輩!?」


「居住性の高いベリル号は母港に残していますからね。この状況で猫攻撃機に乗れば、おそらく俺は耐えきれません」


 銀河輸送艦隊は激減して恐慌状態。

 被害のわずかな余波で甚大な被害を受けてしまった商業施設も、同じような状況だ。


 猫ボート艦隊は加速力と航続力が足りないから俺たちの助けになれない。

 ここで命を使い切って『終わり』なら、俺は満足して死ねる。


 まあ、そんな劇的な展開にはそうそうなりはしない。

 この銀河には、俺たちの敵や部下だけでなく、味方もいる。


『私の投資を無駄にするのは勘弁して下さい』


 第7営業艦隊(正確には銀河通商第7営業艦隊第1分遣隊)が猛烈に加速して、猫の巣号へ接近する。

 作戦が終わり次第分解整備が必要な酷使をして、ぎりぎりまで猫の巣号へ近付き、トラクタービームで猫の巣号を捕捉する。

 トラクタービームに特化した猫ボートと比べると引っ張り力は弱い。

 しかし、16隻もいれば、猫ボート艦隊が追いつける程度まで減速は可能だった。


「たすかったあ……。サルくんはブルネットお姉ちゃん……とついでにスッスに怒られておいてね。僕は星系管制にお礼しとくから」


「は、はい」


 右からはブルネットに、左からはスッスに抱きつかれた(というより抑え込まれた)俺は、【見】なくても肌で感じられてしまう、殺気じみた激情に震えるのだった。

◆ CAT'S NEST MK3(20/20)  ※猫攻撃機20隻を搭載

船体:6 / 跳躍:4 / 航続:6 / 装甲:3 / 居住:5 / 船倉:1 / 兵装:4


◆ CAT JAVELINEER ※通称「猫攻撃機」

船体:2 / 跳躍:5 / 航続:5 / 装甲:5 / 居住:1 / 船倉:0 / 兵装:6


◆ CREW

ベリル  |司令Lv3-[財産Lv8]

サル   |操縦Lv6+[衰弱Lv4]

ブルネット|事務Lv3 [射撃Lv3]

キン   |整備Lv3+[白兵Lv2]

スッス  |操縦Lv4-[医療Lv2]

船長猫耳ズ|猫語Lv2+[船長Lv3]

拿捕猫耳ズ|整備Lv2+[白兵Lv2]

猫耳の下僕|操縦Lv3 [信仰Lv2]



◆ CAPTURED

拿捕の戦果なし ※被弾した船はすべて破壊したため

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