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地球人に人権がない銀河で、零細猫耳社長にスカウトされました ~生体パーツ扱いのどん底から操縦チートと拿捕ビジネスで成り上がる~  作者: 星灯ゆらり
第6章 銀河辺境大戦

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101.遺書と泥棒猫と光る羽根

 地球人奪還社の幹部陣との会合に出席して『神聖猫耳王国は受けた恩を決して忘れない』ことを内外に示したり、ベリル陛下が関わるほどではないが名前が知られている人間が関わらざるを得ない会議にリモートで出席したりと、俺のやるべきことは結構多い。

 ただし基本的にすべて猫の巣号の中でだ。

 俺の健康と寿命は神聖猫耳王国にとっての資産ともいえるので、ベリルもこの件については妥協してくれない。


「隠居所に押し込められた爺さんみたいですね」


 なお、俺の親父は銀河通商の現地職員として地表で働いている。

 『原始的』な暮らしや食事を期待する宇宙人にとっては、かなり魅力的な料理人兼地表案内人らしい。


「どもっす先輩。元気にしてるっすか?」


 猫の巣号にある病室でブルネットを診ていたスッスが艦橋に顔を出す。

 俺は白翼人間の有力者への手紙を書いていた手をとめて、手をあげてスッスを出迎えた。


「スカウト前と比べて、体力の上限が3割減っている感じですが元気です」


「ここでその体調なら外に出たら老衰があり得るっす。マジっすよ」


 スッスは足を使わず光翼を広げ、『すい~』という感じで飛んできて俺の隣の席に座る。

 非実体化した光翼が椅子から突き出ている光景にも、もう慣れた。


「スカウトを受けると決めた時点で戦死も覚悟していましたからね。正直、うまくやってると思いますよ」


「どっちかというと、うまくやりすぎて面倒なことになってる感じじゃないっすかね」


 スッスが、懐から淡く光る羽根を取り出した。

 艦橋の空気の動きはゆっくりなのに、強めの風に吹かれているかのように揺れている。

 光り方がスッスの光翼とは違う。

 俺はふと、性別不詳が基本の光翼人間なのに女性にしか見えない光翼人間を思い出した。


「これ、コランダム総司令からっす。通常のルートじゃ妨害が入るかもしれないっすから、個人的な繋がりを利用して送られてきたっす」


「……本人の羽根とか言いませんよね?」


 恐る恐る手を伸ばして受け取ると、羽根の揺れがいきなりおさまった。

 間違いなく美しくはある。

 そして同時に、華やかで、甘い、破滅に繋がる何かを感じた。


「総司令ならやりかねないっすけど、たぶん今回は違うと思うっす」


「今回は、ですか」


 常時遠隔で癒されているような環境なのに、胃に痛みを感じる。

 スッスが胃薬と水入りグラスを渡してくれたので、俺は軽く頭を下げてから、薬を口に含んで水で胃へ流し込んだ。


「一応、総司令の気遣いでもあるっすよ? あの方が口説いている男に声をかけるなんて自殺行為っすから、女よけと光翼人間よけになるっす」


「それは、暗殺とか、そういう意味ででしょうか」


「男に総司令と比較されてプライドがズタズタになるらしいっす。自分はハイレベルパイロットとしての先輩に惚れてるので関係ないっすけど」


 どうコメントすればいいんだ。

 スッスは『猫の巣号を使った操縦訓練の計画書』の作成を始めていて、次の休みに俺を突き合わせる気のようだ。

 俺は光る羽をスーツの内ポケットにおさめ、一旦忘れることにした。


「スッス。ブルネットと、その、二人目についてですが」


「報告書はデータで送ったっすよ?」


「直接聞きたいんですよ」


 あのペット(機動要塞)どもの手にかかれば容易にハッキングやクラッキングされてしまうのを知っている。

 だから、重要な情報は直接聞きたいんだ。


「まだ受精卵っすよ。リゼーレさまの加護は確認できたっすから、リゼーレさまの言う通りになると思うっす」


 スッスの言葉は、リゼーレを崇拝しているから出てくる言葉ではない。

 崇拝しているのとは関係なく、リゼーレの能力と実績にもとづいた予測だ。


「トーティの時点で俺の手に余る事態だったんですけどね」


「上位存在やその候補に関わるってことはそういうことっす。先輩は体が脆すぎて、一部の能力が上位存在でも総合すれば人間って感じの、脱法的な何かになるかもっす。リゼーレさまの自称人間とか自認が人間とは違って」


「上位存在、ですか」


 グラスにわずかに残った水を舐める。

 【見】る力と【声】を届ける力を得はしたが、他は普通の人間と同じかそれ以下なのが俺だ。

 この状態、あるいはここから【見】る力と【声】が向上した状態を『上位』と呼ぶのは、感覚的には納得しづらい。


「先輩も価値観はリゼーレさまに近いっすね。あの方、他の上位存在とはノリがあわないらしいっす。上位存在の中には、人間のことを微生物か何かくらいにしか認識していない方もいるっす」


「……なるほど」


 俺は、死にかけていたときに見た光景を、うっすらと思い出す。

 上位存在にとってあれが普通の光景なら、悪意や好意の有無に関係なく、人類を『ちいさなもの』と認識するのが当然だ。


「リゼーレさまに初めて敬意を感じたかもしれません」


「そこは最初から感じて欲しかったっす」


「感謝はしてますよ。借りが多すぎてどうやって返せばいいのか分からないくらいですし」


 言いたいことは山ほどある。

 それはそれとして強く感謝している。

 リゼーレ本人の自認が人間でなければ、俺は宗派替えして崇めていた。


「困った方っすけど、いい方っすよね」


「いえ。とてもいい方で、とても困った方だと思います」


 スッスと俺は顔を見合わせ、同時に吹き出していた。



  ☆



「泥棒猫の気配がするわ」


「み゛っ」


 突然のブルネットの登場に、スッスは硬直する。

 光翼が降伏の意思を示すかのように『だらり』と脱力する。


「ブルネット。体調は?」


 スッスとの関係は健全な上司と部下の関係なので、俺はいつもと同じ態度でブルネットに接する。

 なのに、何故か恨めしげに睨まれてしまった。


「あの女の気配もするの」


 ブルネットの猫耳が後ろに向いている。

 これは、遠慮と、わずかな失望!?

 俺の喉から「ひゅっ」と息が漏れた。


「コランダム総司令から名刺のようなものを頂きました。スッスが言うには、妙な勧誘をしてくる連中への牽制になるそうです」


 ブルネットに失望されるくらいなら、家族以外の人間関係を無茶苦茶にする方がマシだ。

 俺は、相変わらず光っている羽を内ポケットから取り出した。

 ブルネットは羽を凝視して、牙を剥き出しにしていた。


「スッス。大きな貸しにしてくれて構いません。助けてください」


「ここで自分に話を振るっすか? ああもうっ、先輩、とっても大きな貸しっすからね!」


 俺は、ブルネットに気付かれないよう、スッスを拝んだ。

 スッスは何度か深呼吸して気持ちを落ち着かせ、キンなみに野生に帰りかけているブルネットに呼びかける。


「奥方さま。今から言うのは、同じ種族だから総司令を庇っているわけではないっす。……アレでも、先輩を狙うような有力者の中では、たぶん一番まともな部類っす」


「……信じられないわ」


「信じても信じなくても、先輩に引き抜きや政略結婚の話は来るっす。それ、そのときに断る武器にはなるはずっす」


 スッスは、俺の手にある羽を、自身の光翼で指し示す。

 ブルネットは心底嫌そうな顔をするが、先程のような殺意に近い気配はなくなった。


「一旦保留にするわ」


 ブルネットは大きな息を吐いて、俺を挟んでスッスとは反対側の席につく。

 妊娠初期で興奮しても体調が悪くならないのは、猫耳の優れた体力と頑丈さに加えて、猫の巣号の高度な居住性のお陰だ。

 俺も、コランダム総司令には感謝『は』している。


「こんなときに言うのはどうかとも思いますが、この先、時間があるかどうか分かりませんのでこれを確認してください」


「「遺書!?」」


 俺が送ったデータを見たブルネットとスッスが、凄い顔で俺を凝視した。

 今のふたりは、ちょっと怖い。


「あなた、どうしてっ」


「奥方さまストップっす! この船でも体調維持に限界はあるっす」


 スッスは比較的落ち着いてはいる。

 が、俺の遺書を見る目はとても厳しい。


「先輩のことっすから、死後に生体パーツに加工するつもりと……ここ、修正できてないっす。このままじゃ死後にマジの生体パーツっすよ」


 スッスの目が冷たい。

 俺は咳払いして慌てて修正する。


「今はそんなことは考えていません。俺が望んで加工されたら、それが神聖猫耳王国の先例になってしまいます。トーティや、産まれてくる息子や、孫世代以降に、こんな先例を押しつけるのは絶対に嫌ですからね」


 俺は人間として生きて死ぬことで、嫌なら上位存在にならなくていいという先例になるつもりだ。

 実際にできるかどうかは分からない。

 猫耳王国は戦争をしているし、今後も別の戦争をするだろうからな。


「私より先に死ぬつもり?」


 ブルネットの涙目は、怒り顔よりずっと怖くて、辛い。


「長生きの努力は怠りませんが、年齢差もありますし、そうなる可能性は高いです。そのときは、申し訳ありませんが後はお願いします」


 まだ独立していない子供がいるなら俺の遺産すべてを教育費込みでブルネットへ。

 子供が全員独立している場合も、俺の仕事の引継ぎをブルネットに任せるため遺産すべてをブルネットへという内容の遺書にしている。


 涙目のブルネットが俺のスーツのそでをつまんで、しばらく離してくれなかった。



  ☆



 2週間後。

 戦争は継続中で、しかし物理的な戦争は2週間の間、一度も発生していない。


『大きな勢力は、どこも防御に集中しているからお互い攻め込めないんですよ。おかげで中小の企業が活発に動き出して市場シェアを広げています。まあ、小遣い稼ぎの投資にはなりましたよ』


 星系管制はジャージ姿で、俺の実家でもある下宿でだらだらしている。

 地球人には滅多にいないレベルの美貌を除けば、まるで田舎の陰キャ高校生だ。


「サル! 今いいかにゃ?」


 キンが許可を待たずに艦橋に入って来る。

 緊急時用に渡しているマスターキーを気軽に使うのは、正直どうかと思う。


『通信を切りましょうか?』


「あなたも大口出資者です。聞く権利はありますよ。……情報面のセキュリティはお願いしますね」


『あの機動要塞たち、結構手強いので面倒なんですよね』


 面倒ではあっても困難ではないらしい。

 まず『覗き見』をしていた拿捕猫耳や船長猫耳に正規の閲覧資格が与えられ、次に機動要塞のAIたちが完全に閉め出された。


「んじゃ報告するにゃ。報告つっても計画完了ってだけにゃ。残った人材じゃ使いこなせねー猫巡洋艦からタキオン砲を外して猫の巣号の対空砲と入れ替えたにゃ。質量弾も戦闘用デブリも全部降ろしちまったから、敵からの『棒』は根性入れて狙撃するか躱すしかねーにゃ」


『それ、銀河帝国の精鋭艦隊でも机上の空論なんですけどね』


「キンさん、ありがとうございます。整備班にも俺が感謝していたと伝えて下さい。……猫耳王国の取り柄は人材ですからね。2、3度なら侵攻作戦にも協力してくれる下僕たちもいますし、彼女たちが乗ることになる猫の巣号の守りを固めることを優先しました。それに、タキオン砲なら攻撃にも使えますから」


「で、どこを攻めるにゃ?」


「それは銀河輸送次第ですね。猫耳王国と地球人奪還社から完全に手を引くなら和平もありでしょうが、銀河通商なみに大きな企業がこの程度で退くとは思えません。仮にトーティについて気付いていないとしても、俺と下僕たちだけでも、連中にとっては美味しい獲物でしょうし」


『銀河輸送について、不確定ですが情報があります。地球人を加工して作られた生体パーツを、もとの姿に復元するプロジェクトが進行中かもしれません』


 俺とキンは、困惑して小首を傾げた。

 どういうことかと目で尋ねても、星系管制も困惑している。


『脳味噌もない状態から地球人が復活するわけがない、はずなんですが、銀河輸送とつきあいのある上位存在の能力が不明なので、万一がありえます。なので一応伝えました』


「なるほど。上位存在ですか。リゼーレさまほど強い相手が攻めて来たら、母港は必ず破壊されますね」


「母港だけで済めば御の字にゃ」


『リゼーレさまは、人類と関わっている上位存在の中では特別に強い方ですからね? 攻めてくるとしても猿谷さん程度の能力ですよ。きっと』


「俺は上位存在じゃありませんが、俺くらいに脆い上位存在なら勝ち目がありそうですね」


 俺たちは気楽に雑談する。

 銀河輸送が大勢の自力センサー持ちを揃えて侵攻を開始する、数日前の出来事だった。

◆ CAT'S NEST MK3(20/20)  ※猫攻撃機20隻を搭載。戦力評価不明

船体:6 / 跳躍:4 / 航続:6 / 装甲:3 / 居住:5 / 船倉:1 / 兵装:4



◆ CAT JAVELINEER ※通称「猫攻撃機」

船体:2 / 跳躍:5 / 航続:5 / 装甲:5 / 居住:1 / 船倉:0 / 兵装:6


◆ CREW

サル   |操縦Lv6+[衰弱Lv4]

ブルネット|事務Lv3 [射撃Lv3]

スッス  |操縦Lv4-[医療Lv2]

船長猫耳ズ|猫語Lv2+[船長Lv3]

拿捕猫耳ズ|整備Lv2+[白兵Lv2]

猫耳の下僕|操縦Lv3 [信仰Lv2]




◆ BERYL DEFENSE FLEET

規模:3 防衛:12 遠征:12


◆ BERYL THE GREAT MK3

船体:3 / 跳躍:4 / 航続:5 / 装甲:0 / 居住:4 / 船倉:0 / 兵装:5


◆ BERYL THE GREAT MK2

船体:3 / 跳躍:4 / 航続:4 / 装甲:2 / 居住:2 / 船倉:2 / 兵装:4


◆ CAT CRUISER *4

船体:3 / 跳躍:4 / 航続:4 / 装甲:2 / 居住:1 / 船倉:1 / 兵装:4


◆ CAT TUGBOAT MK2 *32

船体:2 / 跳躍:4 / 航続:4 / 装甲:1 / 居住:0 / 船倉:0 / 兵装:0



◆ OTHER SHIPS

船体:4 *1 / 船体:3 *17 / 船体:1 *40 ※タキオン砲を外した猫巡洋艦を16隻追加



◆ CREW

ベリル  |司令Lv3-[財産Lv8]

キン   |整備Lv3+[白兵Lv2]

司令猫耳 |司令Lv2-[拿捕Lv2]

拿捕猫耳ズ|整備Lv2+[白兵Lv2]

猫耳の下僕|操縦Lv3 [信仰Lv2]

ブラン  |秘書Lv2+[衰弱Lv1]

ノワール |諜報Lv2+[霊媒Lv1]

母猫耳ズ |市民Lv2+[衰弱Lv1]

新人下僕ズ|操縦Lv1+[信仰Lv1]

新人船長ズ|船長Lv1+ ※平均LV

市民猫耳ズ|市民Lv1+ ※平均LV

他種市民ズ|市民Lv1 ※平均LV


◆ CREW IN TRAINING

船長候補 |船長Lv1 ※平均LV

新人学生ズ|市民Lv1 ※平均LV


◆ SOLD

小型武装輸送船 *3 ※売却して艦隊維持費にあてた



◆ PET

◆ RUIN STATION

船体:6 / 跳躍:4 / 航続:5 / 装甲:5 / 居住:0 / 船倉:0 / 兵装:4


◆ RUIN STATION *3 ※老朽化

船体:6 / 跳躍:2 / 航続:4 / 装甲:5 / 居住:0 / 船倉:0 / 兵装:3


◆ RUIN STATION ※老朽化

船体:6 / 跳躍:2 / 航続:3 / 装甲:5 / 居住:0 / 船倉:0 / 兵装:5



◆ CREW

超AIズ |船長Lv2 [頑固Lv4]




◆ CAN BE PRODUCED

船体:3 / 跳躍:4 / 航続:4 / 装甲:5 / 居住:2 / 船倉:3 / 兵装:3(6) ※兵装6の生産はまだ不安定


◆ BERYL HOME PORT(40/40)

権利:5 / 規模:6 / 装甲:0 / 修理:5 / 居住:3 / 備蓄:0 / 兵装:3

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