表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お嬢様は追放されました!  作者: 大天使ミコエル


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

138/147

138 そんなロマンスがありますの?(2)

 結局借りて来てしまいましたわ。


 一人の家。

 目の前のテーブルにあるのはミラから借りてきた例の本『夫を亡くしたミラノが幸せになるまで』だ。


 一人、黙々と読み耽る。

 本の中では、主人公であるミラノとそのミラノにアピールしている年下の青年トリエステがデートの最中だ。


 怖いもの見たさで、つい続きを読んでしまう。


 トリエステがボートに乗り、ミラノを手助けするため手を差し出す。

 トリエステはそのミラノの手の甲に口付けた後、ボートの上へ引き寄せる。

 抱き止められるミラノ。

 その背中に、トリエステの手のひらが伝う。

 ボートの中に横たわるトリエステとそれに引き寄せられるミラノが……。


「何読んでるんですか?」


「きゃあああああああ!!」


 唐突に横から声がかけられ、アセリアは部屋に響くほどの大声をあげた。


「な、ななななな、ハ、ハルム……」


 なんとかハルムの顔に視点を合わせると、慌てて口を動かした。

「ハルム、いらっしゃいましたのね。わたくし、てっきりいないのだと思って、読書の耽ってしまいましたわ。あの、ウィンリーとミラとベラが読んでいた本で、これはミラがファエンから買った本なんですけれど。わたくし、特別読みたかったわけではないのですけれど、貸してくれるとミラが仰るものですから。ミラったら、主人公の名前が自分に似ているから買ったのですかしらっ」

 おかしな早口になる。


 わたくし、動揺しすぎですわ。こんな風に喋ったら、ハルムが怪しむじゃありませんの。別にやましい本ではありませんもの。大丈夫ですわ。特別、犯罪を犯しているわけでも、不倫なわけですらない、純粋な恋愛の本なのですから……!


「落ち着いてください」

 ハルムが困ったように笑う。

「今帰ってきたばかりですよ。お嬢様が、集中しすぎてたようですね」


「あ、あら、そうですの」


 言いながら、開いているページがボートの上で横たわるシーンだということに気付いた。


 ど、どうやって隠しますの?手で隠したらよけい気を引いてしまいますわ。


「あ、あの……っ!ハルム!!」


 視線を別の方へ向けようと、アセリアは慌てて立ち上がる。

 ギッ、と音を立てて動いた椅子に引っかかり、ぐらついてしまった。

 トサッとアセリアを抱き止めたのは、ハルムの腕だった。

「大丈夫ですか?」


 ……近い、ですわ。


 熱くなる顔の熱を無視しながら、アセリアはハルムの顔を見上げた。


「お嬢様……?」


 ハルムの瞳をじっと見る。

 もう少し近付ける?


「あの……」


 そして、沈黙が訪れた。

 探るようなハルムの視線がアセリアに注がれる。

 アセリアの背中に添えられたハルムの手に力が入る。


 きっと、少し意識すれば届く距離。


「お嬢様……」


 けれど、そこで、ハルムは一つ息を吐いた。


「どうしたんですか、お嬢様」

 そう言ったハルムは、もういつもの通りだった。

「もうすぐ食事にしますから、本は片付けておいてくださいね」

 そう言って、キッチンへと行ってしまう。


 なんだ。


 一人取り残されたアセリアは、指でそっと、自分の唇に触れた。


 ……キスはいたしませんのね。

これはもういけるんじゃないでしょうか!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ