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お嬢様は追放されました!  作者: 大天使ミコエル


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139/146

139 なんだったっていうんだよ

 なんだったんだろうか。


 ハルムは眠れないでいた。

 外で、夜の鳥が鳴く。


 あの瞬間、世界が止まったようだった。

 アセリアが、こちらを見た瞬間。


 何度も思い返す。

 あの瞳。

 あの吐息。


 当のアセリアはというと、ベッドですっかり眠り込んでいた。

「うにゅ〜」

 と何やら寝言らしき声が聞こえる。


 モゾモゾと動いた、と思うと、トサッと布団がベッドの上から落ちた。


 ハルムはゴロリと床に敷いた布団の上からそれを眺め、程なくして執事としてハッとし、起き上がる。

 暑いから布団を蹴飛ばしてしまったのだろうが、腹を冷やされでもしたら大変だ。


 こういう思考は、もう自分に執事というものが染みついていることを感じる。

 別に、相手がアセリアなら、特に嫌な気もしないが。


 仕方なく、布団を取り上げ、腹にかけてやる。


「風邪はひかないでくださいね」

 なんて、執事モードで小さく声を掛けると、また、

「ううん……」

 とアセリアの返事のようなものが返ってきた。


 小さなランプの炎の中に、上を向いて眠っているアセリアの顔が見えた。

 すっきりした顎の上に、ちょこんとした魅惑的な唇がある。


 ドキリとした。


 さっきはあまりにも近かった。

 じっとこちらを見つめられると、その視線に意味などなくても目が離せなくなってしまう。

 吸い込まれそうな瞳だから。


 そしてその唇に、口付けしたくなってしまう。


 アセリアに自分を刻んでやりたくなってしまう。


 あまりにも無防備に、そばにいるものだから。


 ハルムは、アセリアに近付いた。

 眠っているアセリアの真上から、その顔を眺める。

 すやすやと、女神が休息を取っているみたいだ。


 さっきはもっと近かった。


 そう思い、自分の顔をアセリアの顔へ寄せる。


 もっと、近かった。

 口付けしようと思えば、できてしまう距離だった。


 下へ垂れた髪が、アセリアの頬に触れそうになる。


 けれど、もっと……、もっととあの距離を再現したくなる。


 アセリアは、何を考えていたのだろうか。


 改めて見てもこんな距離じゃ、キスをせがんでいるように見えるのも仕方ないじゃないか。


 ハルムは更に近付いた。

 ハルムの吐息が、アセリアの唇に届く距離。


 ……こんなに、近い。


 少し悪いことを考えてから、ハルムはパッと頭を起こす。


 自嘲するように少し苦笑する。


 流石に、ここで触れたら台無しだ。

 今はアセリアの世話が出来るこんな場所にいる。

 ここでアセリアに触れれば、確実に一緒には住めなくなってしまうだろう。


 そんなことをしたいんじゃないから。


 ハルムは、自分の布団の上に、大きくドスン、と座り込む。

 そして静かに、夜の空気を吸い込んだ。

ハルム回!もうどうにもできなさそうですね!

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