135 劇の練習をいたしましょう!(2)
翌日、アセリアは丁寧に書き写した台本を持って子供たちに会いに行った。
今まで、人前で詩の朗読などをすることはあれど、これほど純粋な観客は初めてで緊張してしまう。
ドキドキしながら広場に行くと、そこには誰も居なかった。
あら?まだ早かったですかしら。
キョロキョロしていると、レアクさんに声をかけられた。
「子供たちから伝言があるの」
「伝言、ですの?」
「ええ。丘の上の木のところで待っている、と」
広場からは見えない場所にある、居心地のよい木陰へ想いを馳せる。
どうしてここではありませんの?
疑問を抱きつつ、アセリアは畑が見える村はずれまで歩いて行った。
木陰では、子供たちの姿が見えた。
木の陰からはみ出している人影が一つ、二つ、三つ……。どうやら隠れているつもりのようだ。
あらあら。なんですの?
ちょっと笑いながら近付いて行くと、フィンが顔を出して「しーっ」と指を自分の口に当てた。
こんな場所に呼び出された理由は、すぐに判明した。
「広場なんかで練習したら、収穫祭で何するか、みんなにバレちゃうだろ」
ということだ。
「確かにそうですわね」
アセリアも真剣な顔になる。
アセリアが倒れた木に腰掛けると、子供たちが木陰から飛び出して、わっとアセリアの周りに集まった。
「劇は出来そうなのかよ」
「これアセリアちゃんが書いたの!?すごい!」
口々に褒めてくれる。
けれど、小さな子たちの何人かは、ムッとした顔を崩せずにいるようだった。
なんですの?台本に何か問題が……?
そこで口を開いたのは、いつもおとなしいセインだった。
「文字が読める子は少ないんだ」
「そうですのね」
なるほど、この教師のいない村で、読み書きを覚えるのはかなり大変なことなのだろう。
結果、文字が読めるのは9人中3人だった。フィン、ミルデ、セインの年上三人組だ。
「じゃあ、これは声に出して読んでみたほうがいいですわね」
アセリアがそう言うと、子供たちがアセリアの周りに座り込み、話を聞く態度になる。
普段からもこの子たちは、こうして話を聞くことがあるのだろう。
ソフテが右から覗き込み、ワクワクした顔を向けた。
昨日読んでおいてよかったと思う。
「では、いきますわね」
「うん!」
話し終えると、子供たちが「ふぅ」と息を吐いた。
それほど長い物語ではないけれど、やはり自分たちで演じるとあれば、真剣にもなるものだろう。
ミルデが、不安そうな顔でじっと台本を見つめていた。
「こんなに長いの覚えられるかな」
ミルデは乙女の役。ラストでは、ユニコーンに向かって詩を読む。
するとユニコーンが詩を返して、ハッピーエンドということになる。
子供でも覚えやすように、簡単にしておきましたけれど、やはりそう簡単ではありませんわね。
「わかりましたわ!わたくし、あなた方の練習にも付き合いますわよ!」
青い空の下。
子供たちが一斉に手を挙げた。
「おー!」
さて、あとは練習かな!




