134 劇の練習をいたしましょう!(1)
これでいいですかしら。
アセリアは、ランプの下で、テーブルの上に広げた紙の束を眺めていた。
それは、アセリアが書き上げた劇の脚本だ。
ざらついた紙に達筆で登場人物と台詞が書き連ねてある。
「ふーむ」
と息を吐く。
「お困りですか」
と隣に立つのはハルムだった。
一仕事を終えたのか、ハルムが隣にあった椅子に座る。
「こんなの初めてですわ。かわいいの精霊や猫の精霊の創作会話を書くなんて」
そう言うと、ハルムがおかしそうにニッコリと笑った。
「そうですね。お嬢様が受けてきた授業では、あまり創作はやりませんでしたからね」
「ですわ。詩の創作はなんだかやりましたけれど、あれもお茶会の会話で困らない程度の嗜みでしたもの」
「けど、書けてるじゃないですか」
「まあ、物語に沿って書いてるだけですもの。けど、これでみんなに見せていいものか悩みますわ」
「じゃあ、まず音読してみましょうか」
なんてハルムが言う。
ハルムの方を見ると、じっと台本を覗き込んでおり、冗談ではなく言っているみたいだった。
「じゃあ最初から行きましょうか」
「え、ええ」
「ではお嬢様。お嬢様は精霊たちをやってくださいね。私はユニコーンをやりますから」
ハルムは至って真面目だ。
ここで真剣にやらなくては。演劇を作るとは、こういうことなのかもしれない。
「わかりましたわ」
最初の台詞はソフテが演じるかわいいの精霊。ですから、かわいく演じなくてはいけませんわね。
かわいい……かわいい……ソフテのようにかわいい……と。
「こほん、『ここは精霊が住む森』」
「ふはっ」
「なっ……!」
確かに、アセリアの耳にハルムの笑い声が聞こえた。というか、まだ肩を震わせて笑ってしまっている。
「なんですの!?」
「い、いえ……っ、演技がお上手ですね。お嬢様」
「失礼ですわよ。ではあなたはどうですの」
「そうですね。では、最初の台詞を」
そしてハルムは一つ咳払いをすると、息を軽く吸った。
「花が綺麗だ。お前が咲かせてくれたのか」
「…………」
そうですわね。別に上手くはありませんけれど、悪くもありませんですわね。
そんな風に、練習は続いた。
「長すぎることもなく、これなら子供たちも覚えやすいでしょう」
ハルムのその言葉に、アセリアはツンと鼻を上に向けた。
「あなたのお墨付きとあれば、確かですわね」
数カ所の修正を加え、台本は完成された。
「子供たちに見せるのが楽しみですわ」
「じゃあ、すぐに練習開始ですね」
隣を見るとハルムが、あまりにも嬉しそうな笑顔なものだから、アセリアもつい嬉しくなる。
「そうですわね」
なんて、ニッコリと笑顔を返した。
ちょっとイチャつきながらも脚本完成です!




