132 魔物除けを作りますわよ!(2)
アセリアが一人、子供についていくと、そこは村の広場だった。
中心で何か話しているのは薬師のレアクだ。
"ばあちゃん"というのはどうやら、薬師のことのようだった。
確かに子供たちはいつだって……、ううん、大人たちだって、この村の者は皆、レアクさんを頼りにしているのだ。
「アセリアさん」
レアクさんはアセリアの顔を見ると、うれしそうな顔を見せた。
「この状況はなんなんですの?魔物対策って……」
質問しようとしたアセリアの前に、丸い団子が現れた。
「これを作るんだよ!」
見ると、団子を持っているのはソフテだ。
「これを……?」
それは、どうやらハーブを練り込んだ団子だった。グレーの泥のようなものの中に、ハーブらしき草の欠片が見える。
だから中心にいるのがレアクさんなのだ。
いい香りではあるけれど、近くに鼻を寄せるとむせ返りそうだ。
これは、香りで落ち着かせるために作ったわけではないのがわかる。
確かにハーブは薬にもなるものですもの。
夏の魔物に対しても効果があるに違いないですわね。
いよいよ魔物というものが、怪しげな魔の物であるというのに真実味が出てきた。
アセリアの頭に、真っ暗な屋敷が思い浮かぶ。
森の奥から、何が出てくるのだろう。
広場では、手が空いていたらしい女性や子供たちが、一心不乱にハーブ団子を作っている。
相当な魔物と見えますわ……。
アセリアも、黙ってハーブ団子を作り出した。
このグレーの土に、ハーブを練り込みますのね。
コロコロと、手のひらの上に乗るサイズの小さな団子をたくさん作る。
かわいいソフテが食べられてしまったら大変ですもの。
アセリアも、熱心にハーブ団子を丸めていった。
ハーブ団子は山のようになった。
これでもかなりの匂いだけれど、レアクさんは、
「畑の周りでこれに火をつけますから、カゴに入れてくださいな」
なんて声を上げている。
なるほど、これはお香なんですのね。
煙や何かで力をなくしてしまう魔物なのだろう。
カゴに大量にハーブ団子を摘んだところで、ハルムがやってきた。
隣に、まるで執事のように背筋をまっすぐ、腕を後ろに覗き込んでくる。
「こんにちは、お嬢様」
「ごきげんよう」
……ちょっと近いんじゃありませんの?
なんて思うのだけれど、そんなことを言えるはずもなく。
「……これをお香として焚くことで、魔物が逃げるらしいですわ」
「そうですか」
ハルムの返事はそっけない。
夏の魔物が来るとか来ないとかいう一大事に、なんでこう平然としてられるのですかしら。
「ところでお嬢様」
「なんですの?」
「"夏の魔物"について話を伺ってきたのですが、お聞きになりますか」
ふいっとハルムを見上げる。
アセリアはむーっとした顔をしてみせた。
「なんなんですの?夏の魔物とは」




