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お嬢様は追放されました!  作者: 大天使ミコエル


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130/152

130 脱穀の日がやってきましたわね!

 夏も真っ盛りのある日、脱穀の日はやってきた。

 村の人たちが、こぞって麦を棒で叩き、小さな麦の実を大きな袋に入れていくのだ。


「今日は、牛がいるからなぁ」

 と広場でバルドと話していたのは、バルドと同じ歳の頃だろうか、それとも少し歳上か、ずっと畑で牛耕の練習をしていたメオルクだ。

「牛にも手伝ってもらえるから、きっと2日で終わるぞ」


 言いながら、メオルクはポンポンと隣にいた牛を叩く。

「ンモ〜〜〜〜〜〜」

 すっかり牛飼いのようになってしまっていた。


 アセリアも、ハルムがあまり力仕事に参加させてはくれないが、今日のこの日は少しお祭り気分になっていた。

 実際、脱穀が終われば豆まきをして、本格的に収穫祭の準備の取り掛かる。

 アセリアも、台本をほとんど完成させ、収穫祭が楽しみになる一方だ。


 ハルムは頑張りますわね。


 ハルムが脱穀に参加しているのを見て思う。

 橋造りにも頻繁に顔を出し、忙しい時期は畑仕事にまで精を出す。

 もともと、執事をやっていたときも色々やっているとは思ったけれど、ここまで働きづめになるとは思っていなかった。


 ……ほんと、何処にいても頼りになりますわね。


 ルーシエン公爵家にいたときには、執事がどんな仕事かなんて考えたことはなかった。

 ハルムは特に、アセリアの専属だったため、毎朝予定の調整にやってきた。

 どんな顔だったかも……覚えてませんわね。


 ただ、思い出せるのは、持ってくる予定に何の綻びもない、ということだ。

 それがどういうことであるのか、何をした結果だったのか、考えたこともなかった。


「お嬢様」


 あ、他にも記憶と同じものがありましたわね。

 この、アセリアを呼ぶ声。

 いつも同じトーン。いつも同じ言葉。


「なんですの?」


「そろそろあちらへ行きませんか」


 アセリアはそれを聞き、木の棒を振った。

「まだ大丈夫ですわ」


「違いますよ。私が橋の方に用事があるので、一緒にどうかと思ったんです」


 そこでアセリアはハッとした。


「それは……わたくしを誘ってますの?」


「そういうことになりますね」


 少し、ドキリとする。

 ハルムに誘われるなど……、ハルムが誰かを誘うなど、初めて見ることだった。


「あら、そうですの。そういうことでしたら、構いませんわよ」


 動悸がバレないように、少しだけ偉そうな顔を作る。

 嬉しいだなんて、言えない自分がいる。


「じゃあ、行きましょう。私は棟梁と話があるので、お嬢様は川で休んでいてください」


 そう言って、ハルムはアセリアに向かって、手を差し出した。

 昔と同じ、エスコートの手。


 指先でその手に触れる。


 ……同じじゃないものも、ありますわね。


 指先から熱が伝わってしまいそうで。

 アセリアは、指先に力を入れ、ハルムの隣を歩き出した。

両片想いの空気です!!

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