130 脱穀の日がやってきましたわね!
夏も真っ盛りのある日、脱穀の日はやってきた。
村の人たちが、こぞって麦を棒で叩き、小さな麦の実を大きな袋に入れていくのだ。
「今日は、牛がいるからなぁ」
と広場でバルドと話していたのは、バルドと同じ歳の頃だろうか、それとも少し歳上か、ずっと畑で牛耕の練習をしていたメオルクだ。
「牛にも手伝ってもらえるから、きっと2日で終わるぞ」
言いながら、メオルクはポンポンと隣にいた牛を叩く。
「ンモ〜〜〜〜〜〜」
すっかり牛飼いのようになってしまっていた。
アセリアも、ハルムがあまり力仕事に参加させてはくれないが、今日のこの日は少しお祭り気分になっていた。
実際、脱穀が終われば豆まきをして、本格的に収穫祭の準備の取り掛かる。
アセリアも、台本をほとんど完成させ、収穫祭が楽しみになる一方だ。
ハルムは頑張りますわね。
ハルムが脱穀に参加しているのを見て思う。
橋造りにも頻繁に顔を出し、忙しい時期は畑仕事にまで精を出す。
もともと、執事をやっていたときも色々やっているとは思ったけれど、ここまで働きづめになるとは思っていなかった。
……ほんと、何処にいても頼りになりますわね。
ルーシエン公爵家にいたときには、執事がどんな仕事かなんて考えたことはなかった。
ハルムは特に、アセリアの専属だったため、毎朝予定の調整にやってきた。
どんな顔だったかも……覚えてませんわね。
ただ、思い出せるのは、持ってくる予定に何の綻びもない、ということだ。
それがどういうことであるのか、何をした結果だったのか、考えたこともなかった。
「お嬢様」
あ、他にも記憶と同じものがありましたわね。
この、アセリアを呼ぶ声。
いつも同じトーン。いつも同じ言葉。
「なんですの?」
「そろそろあちらへ行きませんか」
アセリアはそれを聞き、木の棒を振った。
「まだ大丈夫ですわ」
「違いますよ。私が橋の方に用事があるので、一緒にどうかと思ったんです」
そこでアセリアはハッとした。
「それは……わたくしを誘ってますの?」
「そういうことになりますね」
少し、ドキリとする。
ハルムに誘われるなど……、ハルムが誰かを誘うなど、初めて見ることだった。
「あら、そうですの。そういうことでしたら、構いませんわよ」
動悸がバレないように、少しだけ偉そうな顔を作る。
嬉しいだなんて、言えない自分がいる。
「じゃあ、行きましょう。私は棟梁と話があるので、お嬢様は川で休んでいてください」
そう言って、ハルムはアセリアに向かって、手を差し出した。
昔と同じ、エスコートの手。
指先でその手に触れる。
……同じじゃないものも、ありますわね。
指先から熱が伝わってしまいそうで。
アセリアは、指先に力を入れ、ハルムの隣を歩き出した。
両片想いの空気です!!




