129 心の何処かで願ってしまう
昼食は、手の空いた人間が時々作ってくれていた。
「スープができましたよ〜」
今日も、村の方からの声で、畑にいる人々が立ち上がる。
金色の波の中に点在する人間の身体はなんだか興味深いと思っていたが、いよいよ刈り入れも終わるという、麦が干されている中に点在する人々も、働く人間を象徴しているようで味があった。
先ほどバルドと共に木陰へと向かったアセリアの姿は見えない。ついでに、そのバルドの姿も。
二人で木陰にいる姿を想像する。
いよいよ、俺の申し出を受けたことが、なんだか幻のようにも思えた。
イラつきが募る。
いい加減、探しに行ってもいいんじゃないか?
というか、そろそろ探しにいくべきだろう。
あんな男と二人きりだなんて、危険に決まっていた。
そんな風に思いながら、村へと歩いていく。
村や広場の周囲を見渡すが、アセリアの姿もバルドの姿も見当たらない。
仕方なく川で手足をすすぐ。
アセリアだって畑仕事に従事しているのだから、スープがあると聞けば出てくるだろう。
スープは受け取らず、座り込んで広場に集まる人の顔を見る。
何処に行ったんだ?
そうこうしているうちに、木陰からひょっこりとアセリアが出てきた。
一人、か?
それは、そうか。
バルドとは、何もなかったはずだ。
何もない男と、ずっと二人でいるはずもない。……何もない男と。
アセリアは何か布に巻いたものを持っているようだった。
何かを探すように見回している。
俺を、探してたりしないだろうか。
いや。
もう一方の村外れに、バルドの姿が見えた。
サンドイッチを運んでいるようだ。
アイツを探してるんじゃないだろうな……?
アイツの方を見ないで欲しい。
万が一嬉しそうな顔をするところなんて、見たくはないから。
じっと見ていると、アセリアの視線がこちらを向いた。
ハルムと目が合う。
アセリアの瞳がキラリと光り、いそいそとこちらへ向かって歩いてきた。
「…………」
もしかして……本当に俺なのか…………。
少し信じられない思いで見ていると、ストン、とアセリアがハルムの隣に座り込んだ。
「パンを受け取っておきましたわ」
そんな風に、ハルムと食事をすることが当たり前のように、アセリアは嬉しそうに布を開いてみせる。
ああそうか、あの布包みはパンの包みだったのか、なんて頭のどこかで冷静に考える。
丸パンには、ラズベリーのジャムが挟んであるようだった。
「……ありがとうございます」
アセリアは、そんなハルムの顔をじっと見る。
じっと見た上で、
「いいえ。少し早く休ませていただいてるんですもの。これくらいはいたしますわ」
なんて、通常通りの返事を返してきた。
渡してきた丸パンを、アセリアがしっかりと渡してくる。
ハルムがちゃんとパンを掴んだところを確認してから、ゆっくりとパンから手を離す。
最近、こういうことが増えた……気がする。
ふとそんなことを思いながら、ハルムは丸パンを食べた。
アセリアちゃんはもうパン渡すだけでも慎重ですね。




