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お嬢様は追放されました!  作者: 大天使ミコエル


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128/151

128 嘘じゃないって言ってくれ

 嘘じゃないよな。


 なんども心の中で繰り返す。

 昨夜、確かにアセリアは、俺と踊ると言った。


 言った、よな?


 ……いや、あまり大きなことだと思いたくない。

 大きなことではないはずだ。

 相手は元公爵令嬢、どんな奴とだって、ダンスは踊ってきた。

 相手が国家転覆を図る人間だろうと。王太子の婚約者の愛人に収まろうとする人間だろうと。

 むしろ、そういう奴と、ダンスを踊ってきた。


 それ以上の意味なんて、ないだろ?きっと。


 ザクッ。ザクッ。


 青い空の下で、刈り入れ作業を続ける。

 刈り入れが終われば、次は脱穀の作業が待っている。

 無言で作業を続けた。


 それでも。と思う。


 それでも、アセリアの隣を勝ち取った感覚は、消えるものではない。


 期待はしてはいけないと、わかっているのに。


「ふぅ」

 曲げていた腰を伸ばすために、背筋を伸ばす。

 アセリアの状況を確認するため、そちらの方を見れば、「ふぅ」と聞こえそうな顔でアセリアが立ち上がったところだった。

 そろそろ休ませたほうがいいだろうか。


 そんなことを思っていると、

「アセリアちゃん!」

 と、遠くからバルドがアセリアに駆け寄って行くのが見えた。


 アイツ。

 馴れ馴れしいよな。


 アセリアは、そっけなくするんじゃないかと、そんな期待をする。

 俺のダンスの申し入れを受けたんだから、なんて、やっぱり俺も調子に乗っていたんだろう。


 けれど、アセリアは、少しだけ、照れたように笑ったんだ。


 ……なんだ、あれ。


 俺には見せたことがない、また少し近づいたような表情。

 気を遣わない態度。

 俺の前では出さないような笑い声。


 そしてアセリアは、一度こちらの様子を伺ってから、またバルドの方へ向き直った。

 手で追い払うような真似をするけれど、表情は今までと違って嫌そうではなかった。


 これじゃ……助けられないだろ。


 アセリアがひょこひょことこちらへやってくる。

「ハルム」

 名を呼ばれ、少しホッとしたのも束の間のこと。


 あろうことかアセリアは、少し頬を火照らせ、


「そろそろ休憩してもよいですかしら」


 なんて言ったのだ。


 誰と。何処で。


「それなら私が、木陰までお連れします」

 手を出したけれど、アセリアは少し躊躇し、困ったように笑った。


「大丈夫ですわ。お友達がついていてくれますもの」


 耳を疑う。

 ソイツがいるから、心配なんだよ。


 けれど、ハルムはその後ろ姿を引き止めることはできなかった。

 主人の決めたことに逆らうなど。


 二人は、木陰の裏へと移動していく。

 ……なんか、近くないか?


 ザクッ。ザクッ。


 麦を刈る。


 俺が。


 俺が、ダンスのパートナーなんだよな。


 そうだろ?

もうちょっと甘くなってほしかった。

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