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冒険者クラブのヘタレ的純愛  作者: ボルスキ
第四章 因習島編

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タイムコンプレックス


 クローディアとフィルは身を寄せ合い、そっと手を握り合った。サクラの花弁がはらりとクローディアの頭の上に舞い落ちて、フィルはそれを手で撫でるように払い落とした。クローディアが再びフィルの胸に頭を寄せると、彼は彼女の頭を優しく撫で始めた。言葉もなく、穏やかな時間が流れていく。サクラと土の臭いに混じって、錆びた鉄の臭いが漂う。


「私、フィル君以外には助けられないから」


 ぽつりと、クローディアがそう呟いた。


「……それが揺らぐことがあったの?」

「ないよ。なんにもない」


 少し怪しい影の落ちたフィルの声に、クローディアはうっとりと聞き入るように目を閉じて答えた。


「私の心の支えはフィル君だけ。フィル君が居ないとなんにもできないの。フィル君が居てくれるから、私は修道院での虐めも耐え抜ける。死と隣り合わせの苦しい環境で、私が今もこうして生きているのは、フィル君のお陰だよ。

 フィル君は、一人(・・)じゃ立てない私の脚(・・・・・・・・・)なの」


 クローディアはそう言って、フィルの胸に頭を擦り付けた。

 なんとなく気まずくなった俺が隣を見ると、ダレンはなんだか曇った表情をしていた。


「ダレン?」

「ああいや、なんでもないよ……」


 どう見てもなんでもなくない様子だ。フラグ満載の逢瀬に嫌な予感でもしているのだろうか。

 なにせクローディアの行き着く未来は(多分)啓鐘者(アウェイカー)だ。彼らの幸せな関係は恐らく壊れるのだろう。だが、それはどのような壊れ方をするのだろうか。

 俺の心を柔らかな憂鬱が撫でる。


 ……ローレアの森から過去に飛んだとき、俺とレイは過去のダレンと話すことができた。彼に認識され、干渉することができた。

 それまでの俺は、過去というものはそうそう変えられない、強固なものだと思っていた。「過去は変えられない」という教訓はよく謳われているし、世界の仕組みがそれを許す筈がないと思っていた。

 にもかかわらず、俺達が過去に触れることが出来たのは、どういうことだろう。俺はずっと考えていた。変な話だが俺はてっきり、俺達の居る過去が先にあって、その帳尻合わせで未来の俺達が過去に飛んだものだと思い込んでいた。だがもし、本当に俺達が過去に行って、過去を変えていたとしたら。


 本当はこの過去も、俺達が幽霊のような身体でさえなければ、変えられたものだったのかもしれない。


(……もう一回角笛を吹いてみるか?)


 ふと俺の心にそんな考えがよぎったが、やめておくことにした。前に時間遡行した先で角笛を吹いたときは何も起こらなかったが、そういう問題ではない。この角笛はそう易々と吹いてはならないものなのだ。


「……それじゃあね」

「うん」


 不意にクローディアとフィルが立ち上がった。逢瀬の時間を終わらせるのだろう。二人は向かい合って、見つめ合う。


「村長に見つからないように、気をつけて帰ってね」

「うん、もちろん。ありがとう、クローディア」


 そう言い合って、二人は別々の方向へと別れた。二人が行くのは、どちらも鬱蒼と生えた木々の隙間の獣道だ。どちらに進むか迷った末、俺はクローディアが進んだ方の道を選んだ。


「秘密の逢瀬に使う道ともあってかなりの獣道だな。先に行ってやるよ」

「……ありがとう」


 ダレンはどこかはっきりしない調子で頷いた。

 俺は茂りまくった木々の間をすり抜け、獣道に踏み入った。草や木に触れられないとはいえ、見通しの悪い道の中で互いを見失っては困る。俺は後ろにダレンがついてきているかを、何度も振り返って確かめながら進んでいった。しばらくして、森が開けると……


「あ、クローディアちゃん!」


 その向こうに、何故かレイラが居た。

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