第76話 もう少し……前へ
翌朝の医務室は、
昨日よりも少しだけ明るかった。
ロウはベッドからゆっくりと体を起こし、
足を床に下ろした。
(……昨日、立てた。 壁から手を離して……
ほんの数秒だけど…… 立てた。)
胸の奥が静かに熱くなる。
(……今日は…… もう少し……前へ。)
ロウは壁に手をつき、 ゆっくりと立ち上がった。
足は震えている。
けれど、昨日よりも“震えの質”が違う。
(……怖さじゃない。 これは……前に進むための震えだ。)
担当医が入ってきて、
ロウの姿を見て目を見開いた。
「……朝からもう立っているのか。
昨日より……ずいぶん安定しているな。」
ロウは壁に手を置いたまま、
ゆっくりと息を整えた。
「……手を離してみます。」
医師は頷いた。
ロウは壁から手を離した。
昨日よりも、 ふらつきが少ない。
膝は震えている。
けれど、倒れそうにはならない。
(……立ててる…… 昨日より……ずっと。)
医師が静かに言った。
「ロウ…… そのまま、少しだけ前を見てみろ。」
ロウは視線を上げた。
(……歩きたい。 姫様の前で……
胸を張って立ちたい。)
胸の奥が熱くなる。
ロウはゆっくりと足を前へ出した。
一歩。
足が床を踏む感覚が、
昨日とはまったく違う。
(……踏めた…… ちゃんと……自分の足で。)
医師が息を呑む。
「ロウ…… 今のは……完全に自力だ。」
ロウは震える息を吐いた。
(……次…… もう一歩……)
ロウはもう一度、足を前へ出した。
二歩目。
ふらつく。 でも倒れない。
三歩目。
足が前へ進む。 身体がついてくる。
(……歩いてる…… 本当に……歩いてる……)
胸の奥が熱くなり、 視界が少し滲んだ。
(……姫様…… あなたのために……
私は……ここまで来た。)
医務室の扉が静かに開いた。
ロザリンが入ってきた。
ロウはちょうど三歩目を踏み出したところだった。
ロザリンは息を呑んだ。
「……ロウ…… 今……自分で歩いて……?」
ロウは振り返った。
ふらつきながらも、 自分の足で立っていた。
「……はい。 少しだけ……
歩けるようになりました。」
ロザリンは胸の奥が震えた。
(……ロウ…… 本当に…… 歩けるように……)
ロザリンはロウの横に立ち、
その足取りを見つめた。
「……もう一度…… 見せてくれる……?」
ロウは頷き、 ゆっくりと歩き出した。
ロザリンは口元を押さえた。
胸の奥が熱くなる。
(……ロウ…… あなた…… どうして…… こんなに……)
ロウは歩き終えると、 少し照れたように笑った。
「……姫様の…… おそばに戻るためです。」
ロザリンの胸がきゅっと締めつけられた。
(……そんなふうに言わないで……
胸が……苦しくなる……)
けれど、 ロザリンは言葉に出さなかった。
「……すごいよ、ロウ。 本当に……すごい。」
ロウは静かに頭を下げた。
「……ありがとうございます。」
ロザリンが去ったあと、
ロウはベッドに腰を下ろし、 静かに息を吐いた。
(……姫様の前で…… 胸を張って立てるように。
もっと……歩けるように。)
足は震えている。 痛みもある。
けれど── 昨日までとは違う。
(……私は…… 姫様の隣に立ちたい。)
医務室の静けさの中で、 ロウの決意だけが
強く、静かに燃えていた。翌朝の医務室は、
昨日よりも少しだけ明るかった。
ロウはベッドからゆっくりと体を起こし、
足を床に下ろした。
(……昨日、立てた。 壁から手を離して……
ほんの数秒だけど…… 立てた。)
胸の奥が静かに熱くなる。
(……今日は…… もう少し……前へ。)
ロウは壁に手をつき、 ゆっくりと立ち上がった。
足は震えている。
けれど、昨日よりも“震えの質”が違う。
(……怖さじゃない。 これは……前に進むための震えだ。)
担当医が入ってきて、
ロウの姿を見て目を見開いた。
「……朝からもう立っているのか。
昨日より……ずいぶん安定しているな。」
ロウは壁に手を置いたまま、
ゆっくりと息を整えた。
「……手を離してみます。」
医師は頷いた。
ロウは壁から手を離した。
昨日よりも、 ふらつきが少ない。
膝は震えている。
けれど、倒れそうにはならない。
(……立ててる…… 昨日より……ずっと。)
医師が静かに言った。
「ロウ…… そのまま、少しだけ前を見てみろ。」
ロウは視線を上げた。
(……歩きたい。 姫様の前で……
胸を張って立ちたい。)
胸の奥が熱くなる。
ロウはゆっくりと足を前へ出した。
一歩。
足が床を踏む感覚が、
昨日とはまったく違う。
(……踏めた…… ちゃんと……自分の足で。)
医師が息を呑む。
「ロウ…… 今のは……完全に自力だ。」
ロウは震える息を吐いた。
(……次…… もう一歩……)
ロウはもう一度、足を前へ出した。
二歩目。
ふらつく。 でも倒れない。
三歩目。
足が前へ進む。 身体がついてくる。
(……歩いてる…… 本当に……歩いてる……)
胸の奥が熱くなり、 視界が少し滲んだ。
(……姫様…… あなたのために……
私は……ここまで来た。)
医務室の扉が静かに開いた。
ロザリンが入ってきた。
ロウはちょうど三歩目を踏み出したところだった。
ロザリンは息を呑んだ。
「……ロウ…… 今……自分で歩いて……?」
ロウは振り返った。
ふらつきながらも、 自分の足で立っていた。
「……はい。 少しだけ……
歩けるようになりました。」
ロザリンは胸の奥が震えた。
(……ロウ…… 本当に…… 歩けるように……)
ロザリンはロウの横に立ち、
その足取りを見つめた。
「……もう一度…… 見せてくれる……?」
ロウは頷き、 ゆっくりと歩き出した。
ロザリンは口元を押さえた。
胸の奥が熱くなる。
(……ロウ…… あなた…… どうして…… こんなに……)
ロウは歩き終えると、 少し照れたように笑った。
「……姫様の…… おそばに戻るためです。」
ロザリンの胸がきゅっと締めつけられた。
(……そんなふうに言わないで……
胸が……苦しくなる……)
けれど、 ロザリンは言葉に出さなかった。
「……すごいよ、ロウ。 本当に……すごい。」
ロウは静かに頭を下げた。
「……ありがとうございます。」
ロザリンが去ったあと、
ロウはベッドに腰を下ろし、 静かに息を吐いた。
(……姫様の前で…… 胸を張って立てるように。
もっと……歩けるように。)
足は震えている。 痛みもある。
けれど── 昨日までとは違う。
(……私は…… 姫様の隣に立ちたい。)
医務室の静けさの中で、 ロウの決意だけが
強く、静かに燃えていた。




