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赤ずきん姫とオオカミ騎士~姫に触れられるのは、ただひとりのオオカミだけ~  作者: 月乃雫


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第64話 二人の共闘が始まる

医務室の窓から差し込む光が傾き、


床に長い影を落としていた。




ロウは枕に背を預けたまま、


ゆっくりと呼吸を整えていた。




ロザリンは椅子に座り、


ロウの様子を静かに見守っていた。




「……少し、顔色戻ってきたわね。」




ロウはゆっくりと頷いた。




「はい……。


まだ……力は入りませんが……


意識は……はっきりしています。」




ロザリンは小さく息を吸った。




「……ロウ。


ひとつ、相談したいことがあるの。」




ロウは姿勢を正そうとし、


その動きの前に一度息を整えた。




「……なんでしょうか。」




ロザリンは少しだけ視線を落とした。




「……宰相が、何か動いてる。


私の周りの空気が……変わってきてる。」




ロウは静かに目を細めた。




「誰も直接は何も言わないけど……


距離ができてるの。


“命令”の匂いがするわ。」




ロウはゆっくりと息を吸い、


慎重に言葉を紡いだ。




「……姫様。


政略結婚の件……


宰相は……姫様を“従わせる”ために……


周囲を固め始めているのだと思います。」




ロザリンは唇を噛んだ。




「……やっぱり、そうよね。」




ロウは枕に背を預けたまま、


視線だけをロザリンに向けた。




「……姫様。


もし……その結婚を避けたいのであれば……


“最初の一手”が必要です。」




ロザリンは息を呑んだ。




「……最初の一手?」




ロウはゆっくりと頷いた。




「はい……。


宰相が姫様を孤立させようとしているなら……


姫様は……“味方を作る”必要があります。」




ロザリンは眉を寄せた。




「味方……?」




「……はい。


姫様の意思を……


正しく理解してくれる人。


宰相の圧に……流されない人。」




ロザリンはしばらく黙り、


医務室の静けさの中で考えた。




(……味方……


そんな人、いる……?)




ロウはその沈黙を破るように、


ゆっくりと続けた。




「……姫様。


まずは……“ひとり”で構いません。


信頼できる者を……探しましょう。」




ロザリンはロウを見つめた。




「……ロウ。


あなたは……?」




ロウはわずかに微笑んだ。


弱さではなく、静かな意志の光。




「……もちろん……


私は……姫様の味方です。


ただ……今は……動けません。」




ロザリンはその言葉に胸が熱くなるのを感じた。




「……うん。


分かってる。


だから……あなたが動けるようになるまで……


私が動く。」




ロウはゆっくりと息を吸い、


その言葉を噛みしめるように目を閉じた。




「……姫様。


どうか……お気をつけて。


宰相は……姫様の“孤立”を……


完成させようとしています。」




ロザリンは立ち上がった。




足元に落ちる影が、


夕陽に伸びて揺れた。




「……負けないよ。


絶対に。」




ロウはその背中を見つめ、


静かに頷いた。




「……姫様。


必ず……おそばに戻ります。


その時まで……どうか……」




ロザリンは振り返り、


微笑んだ。




「……待ってるから。」




医務室の扉が静かに閉まる。




その瞬間、


ロウは胸の奥で小さく息を吸った。




(……姫様を……ひとりにしない……


必ず……戻る……)




夕陽が沈む医務室で、


二人の“共闘”は静かに始まった。

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