第56話 ロウの微かな反応
ロウが倒れてから三日。
ロザリンは医務室からほとんど出なかった。
兵士たちは扉の外に立ち、
姫の行動を監視している。
ロザリンはロウの手を握りながら、
静かに息を吸った。
ロウの呼吸は安定している。
でも、まだ目を開けない。
「……ロウ……
聞こえる……?」
返事はない。
それでもロザリンは話し続けた。
「あなたがいないと……
私は……何も手につかない…
でも……
あなたを守るって決めたから……
負けない……」
その時だった。
ロウの指が、
ほんのわずかに動いた。
ロザリンは息を呑んだ。
「……ロウ……?
今……動いた……?」
ロウの瞼が、
かすかに震えた。
(……ロウ……
私の声……届いてる……?)
ロザリンの胸が熱くなる。
その瞬間、扉が開いた。
侍女が深く頭を下げる。
「姫様……
本日より“王家の務め”のため、
日中は執務室へお戻りいただくよう
宰相閣下より命が……」
ロザリンは振り返った。
「嫌よ」
侍女は震えた。
「で、ですが……
これは王家の──」
「私はロウの側を離れない」
侍女は困惑し、
兵士たちが一歩前に出た。
「姫様……
宰相閣下の命令です。
どうか……」
ロザリンはロウの手を握りしめた。
「宰相の命令より……
ロウの命の方が大事よ」
兵士たちは言葉を失った。
ロザリンは震える手でロウの頬に触れた。
「……ロウ……
どうしたら……
あなたを守れるの……?」
その時。
ロウの指が、
もう一度動いた。
ロザリンは涙をこぼした。
「ロウ……
聞こえるの……?
私の声……届いてる……?」
ロウの眉が、
ほんのわずかに寄った。
苦しそうに、
でも確かに反応している。
ロザリンはロウの手を両手で包み込んだ。
「ロウ……
あなたが……
私を呼んでる……?」
ロウの唇が、
かすかに動いた。
「……ひ……め……」
ロザリンの胸が締めつけられた。
(……ロウ……
あなた……
私を……)
涙が止まらなかった。
ロザリンはロウの手を握りしめ、
静かに呟いた。
「ロウ……
あなたが……
私を必要としてくれるなら……
私は……
どんなことがあっても……
あなたを守る」
その瞳は、一人の女性としてではなく、
“戦う姫”のものだった。




