表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
赤ずきん姫とオオカミ騎士~姫に触れられるのは、ただひとりのオオカミだけ~  作者: 月野雫


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
53/61

第53話 姫の涙と決意

旧薬庫の扉は、


ロザリンが叩いても叩いても開かなかった。


「ロウ!!


返事して……ロウ!!」


声が枯れても叫び続けた。


(……ロウ……


どうか……生きていて……)


その時だった。


──カンッ。


金属が床に落ちるような音が、


扉の向こうから微かに響いた。


ロザリンの心臓が跳ねた。


「ロウ……!?


ロウなの……!?」


返事はない。


でも──


確かに“何か”が動いている。


ロザリンは涙を拭い、


扉の隙間に手をかけた。


「……開いて……お願い……開いて……!」


その瞬間。


「姫様!!」


後ろから兵士たちが駆け寄ってきた。


「姫様、危険です!


この扉は宰相閣下の命で──」


「開けなさい!!」


ロザリンの声は震えていたが、


その瞳は強かった。


兵士たちは一瞬ためらったが、


姫の気迫に押され、


鍵を外し始めた。


──ガチャッ。


扉がゆっくりと開く。


冷たい空気が流れ出し、


血の匂いが混じった。


ロザリンは息を呑んだ。


「ロウ……!」


薄暗い旧薬庫の奥。


ロウは床に倒れていた。


脇腹から血が流れ、


剣は手から離れ、


呼吸は浅い。


ロザリンは駆け寄った。


「ロウ!!


ロウ!!」


ロウの瞼がわずかに震えた。


「……ひ……め……さま……?」


その声は、


今にも消えそうに弱かった。


ロザリンはロウの手を握った。


「ロウ……!


どうして……こんな……


こんなに血が……!」


ロウは苦しそうに息をしながら、


微笑もうとした。


「……大丈夫……です……


姫様が……無事なら……」


ロザリンの胸が締めつけられた。


(……ロウ……


あなたは……


いつも……私のことばかり……)


涙が溢れた。


「大丈夫じゃない!!


こんなに……傷だらけで……


どうして……笑うの……!」


ロウはかすかに首を振った。


「……姫様が……


泣かないで……ください……」


その言葉が、


ロザリンの心を決定的に揺らした。


ロザリンはロウの手を強く握りしめた。


「ロウ……


あなたを……守る……


絶対に……守る……」


ロウの目が揺れた。


「……姫様……?」


ロザリンは涙を流しながら言った。


「宰相が……あなたを狙ってる。


お父様の言葉も……奪った。


もう……黙っていられない……」


ロウは息を呑んだ。


(……姫様……


こんなに……強い目を……)


ロザリンは続けた。


「ロウ……


あなたを失いたくないの。


絶対に……」


その言葉は、


恋の告白に限りなく近かった。


ロウの胸が熱くなる。


(……姫様……


俺も……


あなたを……)


しかし、


ロウは言葉を飲み込んだ。


今は言えない。


言ってはいけない。


ロザリンは兵士たちに叫んだ。


「ロウを運んで!!


急いで!!


医師を呼んで!!」


兵士たちはすぐに動き、


ロウを担ぎ上げた。


ロザリンはその横を離れず歩いた。


(……ロウ……


絶対に助ける……


宰相なんかに……奪わせない……)


その瞳には、


涙と──


強い決意が宿っていた。


その頃。


廊下の奥で、


ヴァルガ宰相は静かに立っていた。


ロザリンがロウを抱きしめるように寄り添い、


必死に救おうとしている姿を見て、


宰相は目を細めた。


(……姫様……


そこまでロウを……)


宰相は静かに呟いた。


「……ならば──


次は“姫様”を動けなくするしかない」


ロウを救った姫の決意は、


同時に宰相の“次の一手”を呼び寄せていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ