第21話 宰相ヴァルガの企み
王城の地下深く──
かつてフローラ王妃が“実験体”として扱われた部屋がある。
その扉の前に、宰相ヴァルガが立っていた。
「……久しいな、フローラ王妃」
冷たい声が、石壁に反響する。
ヴァルガは扉を開け、薄暗い部屋に足を踏み入れた。
そこには、王妃の花の力を抽出するために使われた
魔術器具の残骸が残っている。
血の跡は消されているが、
魔力の残滓はまだ空気に漂っていた。
「花の力……王家の象徴にして、王国を支配する鍵」
ヴァルガは器具の一つに触れ、
その表面に残る魔力を確かめる。
「フローラ王妃は、惜しい素材だった。
だが、次は──もっと純度が高い」
ヴァルガの脳裏に浮かぶのは、
ロザリンの姿。
王妃の娘であり、
花の力を継ぎ始めた唯一の存在。
「ロザリン姫……
あなたの力を手に入れれば、
王国は私のものだ」
その声は、狂気と確信に満ちていた。
そこへ側近が駆け込んでくる。
「宰相閣下、姫様の魔力が最近不安定との報告が……」
ヴァルガの目が細く光る。
「不安定……?
それは“開花”の兆候だ。
花の力が目覚め始めている証拠」
側近は震えながら続ける。
「姫様はロウ殿と行動を共にしており、
魔力の揺れは彼が抑えているようで……」
ヴァルガの表情が一瞬だけ歪んだ。
「ロウ……
あいつが邪魔をしているのか」
ヴァルガはゆっくりと歩き出す。
「ロザリン姫の力を奪うには、
まず“心の支え”を奪う必要がある。
ロウを排除し、姫を孤立させれば……
花の力は容易に引き剥がせる」
側近が息を呑む。
「まさか……再び、抽出を?」
ヴァルガは冷たく笑った。
「当然だ。
王妃で失敗したからこそ、
姫で成功させる必要がある」
その頃──
ロザリンは中庭で花に触れていた。
指先から淡い光が溢れ、花弁が揺れる。
「……また、力が……」
ロウがそっと近づく。
「姫様。
その力は、あなたを傷つけるものではありません。
どうか、恐れないで」
ロザリンはロウの言葉に安心し、微笑んだ。
しかしその背後で──
ヴァルガの影が、静かに迫り始めていた。




