第2話 孤独に触れる
ロウは視線を落とした。
その肩が、ほんのわずかに震えている。
ロザリンはその震えを見逃さなかった。
胸の奥がきゅっと締めつけられる。
(この人は……どれほど長い間、一人だったのだろう)
ロザリンは一歩だけ近づく。
それでも距離は十分に保ったまま。
ロウが逃げないように、怯えないように。
「無理に話さなくていいのよ」
その声は、森の冷たい空気を温めるようだった。
ロウは唇を噛み、言葉を探すように息を吸う。
けれど何も言えない。
言葉を持たない孤独が、彼の喉を塞いでいた。
ロザリンはその沈黙を責めなかった。
ただ、静かに彼を見つめる。
そして──
ロウの揺れる瞳を見た瞬間、
ロザリンの胸にひとつの言葉が浮かんだ。
それは、慰めでも、同情でもない。
ただ、目の前の人を見てしまったからこそ出る言葉。
「……あなたは、誰かに愛されるべき人よ」
ロウは息を呑んだ。
その言葉は、彼の心の奥に触れるように落ちていく。
誰もそんなふうに言ってくれたことはなかった。
誰も、自分を“人”として見てくれなかった。
ロウはゆっくりと顔を上げる。
その瞳には、戸惑いと、微かな希望が混ざっていた。
ロザリンは微笑む。
その微笑みは、ロウの世界に初めて灯った光のようだった。
月が二人を照らす。
風が静かに歌う。
ロウはゆっくりと近づき、自分の赤いマントを外すと、
そっとロザリンの肩にかけた。
それは、言葉より深い誓い。
心を預けるという約束。
森はその瞬間、
二人を包むように静かに息をひそめた。




