第19話 あなたがそばにいると…
ロザリンは、ロウと並んで歩く自分に気づいた。
以前なら、ロウは一歩後ろを歩いていた。
それが今は、自然と肩が並んでいる。
その距離の変化に、
ロザリンは胸の奥が温かくなるのを感じた。
城の人々は依然としてロウを恐れていた。
廊下を歩けば、侍女たちは道の端に避け、
兵士たちは視線を逸らす。
その空気は冷たく、重い。
けれど、ロザリンの心は不思議と静かだった。
(ロウは……私を守るために、あんなに苦しんだのに)
ロザリンは横目でロウを見る。
ロウはいつも通りの無表情で、揺れがない。
だが、ロザリンには分かる。
彼が“自分のせいで姫が噂に巻き込まれている”と気にしていることを。
「ロウ」
ロザリンが呼ぶと、ロウはすぐに振り向いた。
「はい、姫様」
「……昨日のこと、まだ気にしているでしょう?」
ロウは一瞬だけ目を伏せた。
そのわずかな沈黙が、彼の本音を物語っていた。
「姫様に……ご迷惑をおかけしました」
ロザリンは首を振る。
「迷惑なんて思ってないわ。
むしろ……あなたが苦しんでいるのに、
気づけなかった私のほうが……」
ロウの瞳が揺れた。
ロザリンは続ける。
「あなたは、私を守るために力を抑えてくれた。
それを……誇りに思っているの」
ロウは息を呑んだ。
その言葉は、彼の胸の奥深くに届いた。
「姫様……」
ロザリンは歩みを止め、ロウの前に立つ。
その距離は、手を伸ばせば触れられるほど近い。
「ロウ。
あなたは……私にとって特別な存在よ」
ロウの心臓が静かに跳ねた。
その音はロザリンには聞こえない。
けれど、ロウの表情がほんのわずかに緩んだ。
「……光栄です。
姫様にそう言っていただけるのは」
ロザリンは微笑む。
「あなたがそばにいてくれると……安心するの」
ロウはその言葉を胸に刻むように、ゆっくりと頷いた。
「僕も……姫様のそばにいると、心が静まります」
その言葉は、誓いのように静かで強かった。
二人の間に流れる空気が、確かに変わっていた。
恐れや誤解ではなく、
互いを理解し、支え合う温かさがそこにあった。
城の人々がどう思おうと関係ない。
ロザリンとロウの距離は、
確かに、静かに、深く──近づいていた。




