第172話 王国改革
王都の空は、夜明けとともにゆっくりと澄み渡っていた。
黒い靄が消えたあとの空気は、まるで長い眠りから覚めたように静かで、街の人々はその変化を肌で確かに感じていた。
家々の窓から身を乗り出して空を仰ぐ者。市場の片付けの手を止め、光の方向へ顔を向ける者。兵士たちでさえ、胸を撫で下ろすように息を吐いていた。
その誰もが、同じ名を口にしていた。
ロウ殿が守ってくれた。
姫様とロウ殿が黒い靄を消してくださった。守護騎士様だ。”本当に……ありがとう”
王都の空気は、ロウとロザリンの感謝で満ちていた。
その温度は、夜明けの光とともに街の隅々へ染み渡っていくようだった。
王城の大広間は、朝の光が高い窓から静かに差し込んでいた。黒い靄が消えた王都の空気は澄みきっていて、その変化を誰もが肌で感じていた。
ロザリンとロウが戻ると、すぐに重鎮たちを集めた。
会議所には緊張と安堵が入り混じった空気が漂っていた。
ロザリンは前へ進み、深く一礼した。その動きは、王都の光を背負ったように静かで凛としていた。
「……今回の件、王都を覆っていた黒い靄は、花の力と月の力で消しました」
重鎮たちの視線がロザリンへ集まる。
その眼差しは、報告の続きを待つように揺れていた。
「原因は……
ヴァルガが禁術を使った際に生まれた“闇の花”から
広がった靄です。黒い花はすべて枯れました。もう王都に影響はありません」
重鎮たちの間に、短いざわめきが走る。
そのざわめきは、長く続いた不安がほどけていく音にも似ていた。
ロザリンは続けた。その声は、王都の空気をそのまま運んできたように澄んでいた。
「そして王都では、ロウが王都を守って救ってくれた“守護騎士様”として感謝されています。月の力は昔から危険だと言われてきましたが……ロウが証明してくれました。月の力は危険なものではありません。王都を守る力です」
重鎮たちの視線がロウへ向く。
その視線は、これまでの警戒や偏見とは違い、静かに揺れ、ゆっくりとほどけていくようだった。
ロウは少しだけ目を伏せ、胸の奥のざわつきを押し込むようにして口を開いた。




